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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
遺産分割協議書は、相続人全員が遺産の分け方に合意したことを証明する重要な書類です。 さまざまな相続手続きで必要とされ、相続する財産の種類によって提出先が異なります。 たとえば、不動産の相続登記では法務局、預貯金の名義変更は銀行、株式の相続は証券会社、相続税の申告は税務署が提出先となります。 それぞれの機関で求められる手続きや期限が異なるため、事前の確認が不可欠です。 この記事では、遺産分割協議書の提出先や注意点、提出が不要なケースなどについて解説します。
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遺産分割協議書の主な提出先として、以下の5つがあげられます。
遺産分割協議書とは、相続人全員で相続財産の分け方について話し合い、合意した内容を文書にまとめた法的効力のある書類であり、作成することで手続きが円滑になり、トラブル防止にも役立ちます。 それぞれの手続きについて詳しく見ていきましょう。
不動産の相続登記を行うためには、法務局に設置されている登記所に遺産分割協議書を提出します。 相続登記とは、被相続人が所有者(名義人)になっている家屋や土地等の不動産について、所有権を相続人に移転する手続きのことです。 毎年1月1日に登記名義人に対して固定資産税が課税されるため、なるべく年内に手続きを行うようにしましょう。 また、2024年4月1日から、法改正により相続登記が義務化されます。そのため、法改正の前に相続によって取得した不動産については法改正から3年以内、法改正後の相続については相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。 正当な理由がないまま期限を過ぎると、最大10万円の罰則が科されることがあります。 相続登記の手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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銀行が口座名義人の死亡を知ると、その口座は凍結され、原則として自由にお金を引き出せなくなります。凍結を解除するには、口座の名義変更か解約を行う必要があります。 多くの銀行では、相続人全員が銀行所定の用紙に署名し、実印で押印すれば手続き可能です。 ただし、遺産分割協議書があれば、相続する方のみの署名・押印で済み、手続きが簡略化されます。複数の銀行に口座がある場合は、遺産分割協議書を作成し提出するのがおすすめです。 なお、預貯金の払い戻しを受ける権利は、5年または10年の時効で消滅するおそれがあります。 現状では多くの銀行が時効を援用していないものの、将来運用が変わる可能性もあるため、5年以内に相続手続きを済ませるべきでしょう。 銀行口座の相続手続きについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
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株式や投資信託の相続手続きをする際、遺産分割協議書を作成していれば、証券会社に提出を求められます。 ただし、必須ではなく、相続人全員が証券会社所定の書類に署名・実印を押すことで、協議書がなくても手続きを進めることが可能です。 株式については、上場株式か非上場会社かによって、相続手続の場所が異なります。 上場株式は証券会社、非上場株式は発行会社で手続きを行います。投資信託は証券会社や銀行が窓口です。 相続人が株式口座を持っていない場合は、口座を開設したうえで、名義変更を行うことになります。 名義変更に期限はありませんが、売却や配当金の受けとりには名義変更が必要です。価格の変動や配当金の受取期限(多くは3〜5年)を考慮し、早めに手続きするべきです。
相続税とは、被相続人から財産を受け継いだときに課される税金です。 相続税の申告が必要なときは、相続の発生を知った日の翌日から10ヶ月以内に、税務署に申告書類と遺産分割協議書を提出しなければなりません。申告の対象となるのは、相続財産の総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合です。 もし10ヶ月以内に遺産分割協議書を作成できない場合は、法定相続分で財産を分けたと仮定して「未分割申告」が可能です。 未分割申告では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などは適用されません。ただし、申告期限から3年以内に遺産分割協議を成立させ、その翌日から4ヶ月以内に更正の請求をすれば、特例の適用を受けられます。 また、遺産分割後に申告時よりも税額が少なくなる場合も、同様の手続きで還付を受けることができます。 とはいえ、負担や手間を考えると、期限内の遺産分割と申告が望ましいでしょう。 相続税の基礎控除額の計算方法等について詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。
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自動車を相続する場合には、運輸局で手続きを行うときに遺産分割協議書の提出が必要となる場合があります。 遺産分割協議書の提出を求められるのは、100万円を超える普通自動車等を相続するときであり、100万円以下の普通自動車であれば遺産分割協議成立申込書を提出すれば手続きができます。 遺産分割協議成立申込書には、相続人の実印を押印すれば問題ありません。査定額は、ディーラーや買い取り業者等から発行される査定証によって証明します。 また、軽自動車を相続するときにも遺産分割協議書は必要ありません。手続きは軽自動車検査協会で行います。 自動車の相続手続きの期限として、所有者が変わったときには15日以内に手続きをしなければならないとされています。名義変更の手続きをしないままでは売却も廃車もできず、事故に遭った場合には任意保険が使えないおそれもあるため、なるべく早く手続きを行うようにしましょう。
| 種類 | 査定額 | 遺産分割協議書の要否 | 手続きの場所 |
|---|---|---|---|
| 普通自動車 | 100万円超 | 必要 | 運輸支局 |
| 100万円未満 | 不要(遺産分割協議成立申立書を使用) | ||
| 軽自動車 | – | 不要 | 軽自動車協会 |
自動車に関する相続手続きについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を併せてご覧ください。
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遺産分割協議書は相続手続きにおいて重要な書類ですが、すべての場面で提出が求められるわけではありません。 たとえば、以下のようなケースでは、遺産分割協議書を作成・提出する必要はありません。
すべての相続財産について、相続人や相続割合が明確に記された遺言書があり、その内容に従って遺産を分ける場合は、遺産分割協議書の作成・提出は不要です。遺言書を金融機関などに提出すれば、相続手続きを進めることができます。 ただし、自筆証書遺言を利用する場合は、家庭裁判所で検認を受け、検認済証明書を取得する必要があります。 一方、公正証書遺言や、法務局での遺言書保管制度を利用した遺言書であれば、検認は不要です。 なお、遺言書に不備があり法的に無効と判断された場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、改めて遺産分割協議書を作成する必要があるためご注意ください。
相続人が1人だけの場合は、遺産を分け合う必要がないため、遺産分割協議書の作成・提出は不要です。 相続放棄や相続欠格、廃除などにより相続人が1人になった場合も同様です。 この場合、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等と、相続人の戸籍謄本を金融機関などに提出すれば、相続手続きを進めることができます。 ただし、本当に相続人が1人かどうかは慎重に確認する必要があります。たとえば、被相続人より先に他の相続人が亡くなっていた場合、その子供が代襲相続人となる可能性があります。戸籍を丁寧に確認し、法定相続人を正確に把握することが重要です。
法定相続分どおりに遺産を分割するのであれば、遺産分割協議書を提出しなくても、金融機関などで相続手続きに応じてもらえます。 法定相続分とは、民法で定められた相続人ごとの遺産の取り分のことです。たとえば、配偶者と子供が相続人であれば、配偶者が2分の1、子供が残りの2分の1を均等に分ける形になります。 ただし、法定相続分どおりに分割する場合でも、遺産分割協議書を作成しておいた方が良いでしょう。 協議書があることで、相続人全員の合意が文書で確認でき、相続手続きがスムーズに進むだけでなく、将来的なトラブルの予防にもつながるためです。
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ここでは、遺産分割協議書を提出する際に注意すべきポイントについてご紹介します。
遺産分割協議書は基本的に原本の提出が求められ、コピーでは受理されないケースがほとんどです。 そのため、複数の機関で相続手続きを行うときなど、協議書の使い回しが必要なときは、原本還付を申請する必要があります。 銀行などでは、原本の返却を申し出れば、その場でコピーを取って原本を返してくれることが一般的です。 法務局や税務署などでは、原本とコピーを提出し、コピーに「原本と相違ありません」と記載し、署名・実印を押すことで、原本を返還してもらえます。 他方で、運輸支局では基本的に原本の返却は行われないため、提出前にコピーを取っておく必要があります。提出先によって原本還付の手続きが異なるため、事前に確認しておくと安心です。
遺産分割協議書のような書類は、役所で発行される書類とは違い、手元にある原本を提出すると無くなってしまいます。そのため、提出するときに、併せて返却してもらうための手続きを行います。 返却された書類は、他の機関に提出できます。 ただし、返却方法は提出先によって異なり、その場でコピーを取って返却してくれる機関や、後日郵送によって返却してくれる機関等があります。 返却方法については、提出先に確認しておくようにしましょう。また、様々な手続きを早めに行い、期限直近に手続きをしないよう注意しましょう。
遺産分割協議書は相続人全員分を作成することが望ましいです。 それぞれの相続人が個別に相続手続きを行う際に、原本の提出が必要になるためです。 また、後になって遺産分割の合意に反する行動をとる相続人が現れた場合でも、原本があれば、合意内容を証明する有力な証拠となります。さらに、短期間で複数の相続手続きを進める必要がある場合には、多めに原本を作成しておくことで、原本還付の手続きを省略できる可能性もあります。
遺産分割協議書は、相続税の申告期限である相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、申告書類とあわせて税務署へ提出する必要があります。 遺産分割協議が終わらなかったからという理由で、期限までに相続税申告をしないと、配偶者控除や小規模宅地等の特例といった税制優遇が受けられません。さらに、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性もあるため注意が必要です。 申告期限までに遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分で申告し、後日更正請求によって税額の調整を行うことも可能です。できる限り申告期限内に相続税の申告を行うようにしましょう。
遺産分割協議書は、多くの相続手続きで用いるだけでなく、遺産分割に合意したことを証明する書類にもなるため、なるべく作成するのが望ましいでしょう。 しかし、遺産分割協議がまとまらず相続税の申告期限に間に合わない場合は、法定相続分で申告しなければならず、一時的に多額の納税資金が必要になる可能性があります。 こうしたリスクを避けるためにも、遺産分割協議が難航している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士であれば相続法に精通した専門家として、遺産分割協議書の早期作成だけでなく、各提出先での相続手続きについて的確なサポートを提供することができます。遺産分割についてお悩みの場合は、ぜひご相談ください。