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国税庁がマンション相続の過度な節税の防止に乗り出すことについてYouTubeで配信しています。
令和5年6月22日に開催されたマンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議において、マンションに係る相続税評価額が市場価格理論値の60%未満となっているものについて、市場価格理論値の60%になるよう評価額を補正する案が示されました。
動画では、マンションの相続税評価方法や現状の市場価格との間の乖離率等について解説しています。
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
相続が発生したときに、相続税を抑える方法として、不動産を活用することが挙げられます。不動産の相続には様々な優遇措置があり、うまく活用すれば相続税を抑えることが可能です。 現金や預貯金をそのまま相続するよりも有利ですので、検討する価値があります。 ただし、不動産の購入や相続後の売却には費用や手間がかかるだけでなく、価格の下落等に注意しなければなりません。 ここでは、不動産が相続税対策になる理由や考えられる対策、不動産による相続税対策のリスク等について解説します。
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相続財産は、現金や預貯金等として相続する場合よりも、不動産で相続した方が相続税の負担が小さくなることが多いです。これは、不動産が取引される時価(実勢価格)よりも、相続税がかかる基準となる価格(相続税評価額)の方が低額であるケースが多いからです。 不動産が時価よりも低額に評価されることが多い理由として、主に以下のようなものが挙げられます。
相続税を計算するときには、土地と建物に分けて評価を行います。それぞれの評価方法は以下のとおりです。
土地は、路線価方式か倍率方式によって評価されます。 路線価が指定されていれば路線価方式で、指定されていなければ倍率方式で計算します。
路線価方式の計算式:路線価×各種補正率×土地の面積
※各種補正率は、土地の形状等によって評価額を補正するための数値です。
倍率方式の計算式:固定資産税評価額×評価倍率
※評価倍率は、国税庁によって公表されています。
建物は、固定資産税評価額によって評価されます。固定資産税評価額は、市町村等の自治体によって3年ごとに改定されます。 これらの評価方法による価格は、実際の購入価格よりも低額になることが多いため、差額を活用して相続税を抑える方法が考えられます。
現金や預貯金ではなく、不動産として財産を所有することにより節税できる方法として以下のものが挙げられます。
上記の方法について、それぞれ解説します。
不動産を相続すると、相続税を支払うときの評価額が購入時よりも下がるケースが多いため、不動産の購入を検討する価値があります。 一般的に、土地の評価額は売買価格よりも20%程度、建物の評価額は売買価格よりも30%程度は減額される可能性があります。 ただし、不動産の価格は暴落することもあるため、結果的に損失が発生するリスクもあることに注意しましょう。 マンションを購入した場合、評価額は購入額に比べて大幅に低額になります。区分所有マンションの一部屋を所有している場合、マンションの敷地も持分に応じて所有していることになりますが、一戸建てを所有する場合と比べて所有する土地の面積が小さくなることから、評価額が大きく減額されやすいです。 かつては、タワーマンションの高層階を購入する方法が節税に利用されていました。しかし、近年では評価方法が改められたため、有効ではなくなっています。
借入金で不動産を購入したとしても、相続税対策になるとは限りません。 たしかに、借金は相続財産から差し引かれるので、相続税が安くなると誤解しやすいです。しかし、借金で購入した不動産の分だけ財産も増えてしまうので、借金した分だけ相続税が安くなるわけではありませんが、不動産の評価額は購入額よりも低くなるので、その差額だけ相続税の節税効果はあります。他方で、借金を増やして不動産を購入するのはリスクが高いと考えられます。 なぜなら、借金をすれば利子の支払いが生じて損をするからです。さらに、不動産は価値が落ちるリスクがあるため、最悪の場合には借金を返済できなくなってしまいます。無理をしてまで節税をしようとは考えないようにしましょう。
マンションを購入して賃貸物件にしたり、手持ちの土地に賃貸アパートを建てたりすると、相続税を節税できる可能性が高いです。これは、賃貸に出している不動産の評価額が、そうでない不動産と比べて減額されるからです。 さらに、相続人が賃料収入を得ることができれば、相続税を抑えること以上のメリットが得られます。 ただし、空室が多くあると相続税を抑える効果が低下します。 さらに、賃貸経営の失敗による損失を被ってしまうリスク等も考えられるので、将来的なことを十分に検討してから判断しましょう。
賃貸不動産を被相続人の所有物から法人の所有物にすることで、相続財産からの除外が可能です。 この方法では、家賃収入を役員報酬等として相続させたい者に受け取らせることによって、所得を分配することができます。 被相続人が亡くなるまで家賃を受け取ると、相続財産も増え、相続税の負担も大きくなってしまいますが、役員報酬等として相続人等に分配すれば、相続税はもちろん、贈与税も取られずに生前贈与を行ったのと同様の効果を発生させることが可能です。 ただし、学生等の役員として不適切な者については、この方法は使えません。また、法人税を取られる等のデメリットもあるので、賃貸不動産の所有の法人化は家賃収入が多額になるケース等だけ考えましょう。
相続税対策になると考えて不動産投資を行う場合、投資にはリスクが存在することを考えなければなりません。 不動産投資のリスクとして、主に以下のものが挙げられます。
小規模宅地等の特例とは、相続人が住居等を失わないようにするために、家屋等が建っている敷地の相続税を減額するための制度です。 この特例により、被相続人等が居住用として利用していた建物の敷地面積が330㎡以下であれば、課税価格を減額できます。 具体的には、敷地の評価額の80%相当額を減額した金額を、相続税の課税価格とすることができます。適用対象は戸建てだけでなく、マンションについても適用できます。たとえマンション全体の敷地が1万㎡であっても、100戸があれば平均して敷地は100㎡になるので、面積の要件に収まる可能性が高いです。 二世帯住宅であっても制度の適用対象になり得ますが、同じ建物に被相続人と相続する親族が同居していること、居住部分につき、区分所有登記をしていないこと等の要件が増えるため注意しましょう。
相続時精算課税制度とは、60歳以上の親または祖父母から、18歳以上の子または孫への贈与について、贈与を行う1人につき2500万円までは、贈与税の課税価格から、その贈与を受けた金額を控除することができる制度です。 この制度によって贈与された財産は、相続が発生すると、相続税の課税対象になります。このとき、贈与した財産の評価は贈与の時点で行われるため、贈与後に再開発によって不動産価格が上昇した場合等においては得をすることになります。 なお、相続時精算課税制度の適用を受けるためには、申告期限内(最初に贈与を受けた年の翌年の2月日から3月15日まで)に「相続時精算課税選択届出書」を贈与税の申告書に添付して提出しなければなりません。
相続した不動産を、相続税の申告期限から3年(相続開始から3年10ヶ月)が経過するまでに売却すると、相続税の一部を不動産の取得費用に加算できます。これによって、不動産の売却益に課される譲渡所得税を抑えることが可能です。 利用する予定のない不動産を相続した場合には、なるべく早く売却することが望ましいでしょう。
不動産を活用して相続税対策を行うことにはリスクもあります。主なリスクとして、以下のものが挙げられます。
これらのリスクを避けるために、遺言書を残すことや、なるべく資産価値が下がりにくそうな不動産を選んで購入すること、一定の現金や預貯金を残しておくこと等を心がけましょう。
相続財産が高額になり、相続税も高額になってしまう方については、不動産の活用を検討する価値があります。 しかし、安易な不動産の購入は、価値の低下等による相続財産の目減りにつながりかねません。また、不動産の賃貸経営等、購入した不動産の活用がうまくいかないと想定外に損をする可能性があります。 相続が生じた後で、不動産を巡って遺族間の争いに発展するリスクもあることから、慎重に検討して準備する必要があります。 私たちにご相談いただければ、不動産を利用した相続税対策について、リスクも含めて十分に検討いたします。長期的な視点で、残されるご家族の生活を豊かにする協力をさせていただきます。