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遺産分割4つの方法 | それぞれのメリット・デメリット

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

遺産分割すると一口に言っても、遺産をどのように分配するか、その方法には様々な種類があります。遺産の状況や相続人同士の関係性といった個別の事情によって、どの遺産分割の方法をとった方が良いかは異なるでしょう。 本記事では、主な遺産分割の方法として4つの種類を挙げて、説明していきます。

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遺産分割とは

まずは、そもそも遺産分割とは何かを確認してみましょう。 相続人が複数いる場合に、どの相続人がどの遺産を引き継ぐかを決め、相続人間で遺産を分配していくことを、遺産分割といいます。 遺産分割を行う手続としては、遺言・遺産分割協議・遺産分割調停・遺産分割審判といったものがあります。 遺言書がある場合には、遺言で指定されたとおりに遺産分割を行うことになるでしょう。 しかし、遺言書があっても、相続人全員の合意により遺言とは異なる遺産分割を行う場合や、遺言書に不備がある場合、遺言書がない場合等には、遺産をどのように分配していくかについて、相続人間で話し合う「遺産分割協議」を行います。 協議が成立すれば、協議で決められたとおりに遺産分割を行いますが、協議が不成立となった場合には、裁判所の調停委員会を介入させて相続人間で話し合う「遺産分割調停」を行います。さらに、調停も不成立となった場合には、裁判所が決定を下す「遺産分割審判」を行います。 このような手続を経て、遺産分割を行っていくことになります。

遺言書がある場合の遺産分割

遺言は、最大限に尊重されるべきものであるとされているため、遺言書がある場合、基本的には遺言で指定されたとおりに遺産分割を行うことになるでしょう。 遺言者は、遺言によって、遺産分割の方法を指定することができ、法定相続分(民法で定められている、法定相続人が相続する遺産の割合)とは異なる相続分を指定することもできます。 ただし、一定の法定相続人には、遺留分という最低限の相続分が保障されており、遺言によっても遺留分を侵害することはできません。遺言で遺留分が侵害されている法定相続人は、遺留分侵害額請求を行うことができます。遺留分侵害額請求が行われて初めて、遺留分を侵害している部分の遺言については無効となります。遺言書がある場合には、遺留分の侵害の有無にご注意ください。

遺言書がない場合の遺産分割

遺言書がない場合には、遺産分割協議を行い、相続人間で話し合って遺産をどのように分配していくかを決め、遺産分割を行います。 協議が不成立の場合には遺産分割調停、調停も不成立の場合には遺産分割審判という手続を経て遺産分割を行っていくことは、先に説明したとおりです。 なお、遺言書がある場合であっても、相続人全員の合意により遺言とは異なる遺産分割を行う場合や、遺言書に不備がある場合等にも、同様の手続の流れで遺産分割を行っていくことになります。 遺産分割協議についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。

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遺産分割の方法は4つある

遺産分割の方法には様々な種類がありますが、本記事では、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割の4つを主な遺産分割の方法として挙げます。次項より、それぞれの方法について確認してみましょう。

現物分割

現物分割

現物分割とは、「土地は相続人Aに、建物は相続人Bに、預金は相続人Cに分配する」といったように、一つ一つの遺産を現物のまま分配していくという方法です。 メリットとして、「遺産をそのまま残すことができる」「分割の内容がわかりやすい」「遺産の評価等が不要で手続が簡単である」といった事項があります。 一方、デメリットとしては、「遺産ごとの価値に差異があると、平等に分配することが難しく、公平性に欠ける」といった事項があります。 したがって、下記のようなケースでは、現物分割が有効であるといえます。

  • ・均等に分配しやすい遺産(例:現預金)が多いケース
  • ・遺産ごとの価値の差が小さいケース
  • ・不動産等が複数ある(分割できる遺産が多数で、各遺産の組み合わせにより金額の調整が容易な)ケース
  • ・その他当事者間での調整や合意の取りつけが容易なケース

代償分割

代償分割

代償分割とは、分割しにくい不動産等の遺産を、ある相続人が現物のまま引き継ぐことで、法定相続分以上の遺産を得る代わりに、他の相続人に対して代償金を支払うという方法です。 メリットとして、「遺産をそのまま残すことができる」「平等に分配することができる」といった事項があります。 一方、デメリットとしては、「現物のまま引き継ぎたいという相続人への負担が重くなる」「現物のまま引き継ぐ相続人の資力によっては代償金が支払われないおそれがある」「不動産の評価方法について相続人間で揉めるおそれがある」といった事項があります。 したがって、下記のようなケースでは、代償分割が有効であるといえます。

  • ・現物分割を行うと相続人間で不公平が生じるケース
  • ・不動産を利用し続ける相続人がいるケース (例:被相続人の大家業を引き継ぎ、引き続き家賃収入を得る相続人がいる場合)
  • ・その他被相続人の事業を承継する相続人(=後継者)がいるケース
  • ・遺産に不動産が少ないケース
  • ・代償金の調達が容易なケース

換価分割

換価分割

換価分割とは、現預金以外の不動産や株式等の遺産を売却して現金化し、分配していくという方法です。 メリットとして、「平等に分配することができる」「不動産を売却することで維持管理を行う必要がなくなる」といった事項があります。 一方、デメリットとしては、「遺産をそのまま残すことができない」「売却するため、処分費用や譲渡所得税等がかかる」「売却するまでに時間や手間がかかる」といった事項があります。 したがって、下記のようなケースでは、換価分割が有効であるといえます。

  • ・不動産を利用し続ける相続人がいない等、遺産を現物のまま引き継ぎたいと望む相続人がいないケース
  • ・代償金の支払いができないため代償分割が難しいケース
  • ・遺産の大部分が不動産であり、各不動産間での価値の差が大きく、調整が困難なケース

共有分割

共有分割

共有分割とは、分割しにくい不動産等の遺産を、複数の相続人で、各相続人の相続分に応じて共同で所有するという方法です。 メリットとして、「遺産をそのまま残すことができる」「平等に分配することができる」といった事項があります。 一方、デメリットとしては、「売却や取り壊しといった処分をしたい場合に共有者全員の合意が必要になり、自由度が低い」「共有者のなかで亡くなった者がいる(=新たな相続が発生する)度に共有者が増えて、権利関係が複雑になる」といった事項があります。 共有分割は、相続人間の話し合いがまとまらず、これまで説明してきた他の方法で遺産分割を行うことができない場合に、とりあえずの遺産分割の方法として用いられることが多いといえます。しかし、後に共有者間で争いが生じるおそれがあるため、共有分割はなるべく避けた方が良いでしょう。もし、共有分割を行った場合には、できる限り早期に共有状態を解消することをおすすめします。

遺産分割のまとめ

これまで説明してきたとおり、遺産分割の方法には主に4つの種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。そのため、遺産の状況や相続人同士の関係性といった個別の事情によって、どの遺産分割の方法を行うかを判断していくことになります。また、場合によっては複数の方法を組み合わせて遺産分割を行う方が良いケースもあります。 どの遺産分割の方法で、どのように遺産を分配していくのかを相続人間でスムーズに決めることができれば良いのですが、遺産が多くとも少なくとも、遺産分割において争いが生じてしまうことは多いでしょう。 遺産分割について争いが生じ、長引いてしまうと、後の親族関係が悪化してしまったり、精神的にも身体的にも負担がかかってしまったりと、多くの問題が起こることが考えられます。

遺産分割の方法で迷ったら、弁護士への相談がおすすめ

遺産分割について争いが生じることを防ぐため、また、争いが生じてしまっても長引くことを防ぐためには、弁護士に相談・依頼するという方法があります。 弁護士に相談することで、個別の事情に応じた適切な遺産分割の方法について、アドバイスを受けることができます。また、弁護士に依頼することで、遺産分割協議に代理人として参加してもらうこともできます。法律知識に基づいた第三者の意見であるため、他の相続人に納得してもらいやすくなり、話し合いがスムーズにまとまる可能性が高くなります。もし遺産分割調停や遺産分割審判に至ってしまっても、弁護士に代理人として参加してもらうことができるため、精神的・身体的な負担の軽減にもつながるでしょう。 弁護士法人ALGでは、相続問題について豊富な経験を有する弁護士を配した「相続チーム」が設けられています。遺産分割の方法で迷われた際には、後に相続人間で争いが生じてしまわないよう、できる限り早期に、まずは弁護士に相談すること、なかでも相続問題に強い弁護士を選ぶことをおすすめします。