メニュー
監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員
「公正証書遺言」をご存じでしょうか。 遺言書の種類のひとつで、公証役場で、証人立会いのもと、公証人に作成してもらう遺言書のことをいいます。書式を誤ることなく、法的に有効な遺言書を紛失せず確実に残せる方法です。 しかし、自分で遺言書を書くよりも費用がかかりますし、証人が2人必要である等、注意するべき点もあります。 このページでは、「公正証書遺言」について、その概要やメリット・デメリット、作成の流れ等、詳しく解説していきます。遺言書を残すことをお考えの方は、ぜひご参考になさってください。
来所法律相談30分無料・24時間予約受付・年中無休・通話無料
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
公正証書遺言とは、公証役場で、証人立会いのもと、公証人に口頭で内容を伝えて作成してもらい、その後は公証役場で保管される遺言書のことです。 公証人は元裁判官や元検察官といった人であるため、遺言書が書式不備により無効となる心配がありません。さらに、公正証書遺言は、原本が公証役場で保管されるため、偽造・改ざん・変造されるおそれはありませんし、紛失してしまう心配も要りません。 ただし、公正証書遺言が他の方式の遺言書より優先されるわけではないので、他の方式で後から遺言書を作成すれば、基本的にそちらの内容が優先されます。 遺言書の3種類の方式は、それぞれ次のようなものです。
3種類の遺言書について、それぞれ以下のページで詳しく比較しています。併せてご参照ください。
遺言書の種類や効力、書き方などについて詳しく解説公正証書遺言は、以下のような流れで作成します。
証人について、必要書類や費用などについては以降の項目で解説します。
公正証書遺言を作成する際には、2人以上の証人の立会いが必要です。証人は、遺言書が遺言者の意思により、適正な手続きで不正なく作成されたことを証明します。 証人には秘密保持義務があるものの、遺言の内容を知り、裁判になったときには証言しなければなりません。そのため、遺言に利害関係がなく、信頼できる人を選ぶ必要があります。 一般的には、弁護士等の専門家に依頼する人が多くなっています。また、費用はかかりますが、公証役場から紹介してもらうことも可能です。 なお、証人になるには条件があり、遺言にかかわる人(遺言者の財産を受け取ることになる人など)は対象となりません。もしも証人にしてしまうと、公正証書遺言が無効になるおそれがあるので注意しましょう。 具体的には、以下のような人は「欠格事由」があるとされ、証人にはなれません。
公正証書遺言の作成にあたり、以下のような書類を準備する必要があります。 公証役場により必要な書類が異なるため、事前に確認しておきましょう。
必要書類 | |
---|---|
遺言者本人の確認書類 | ・遺言者本人の印鑑登録証明書(または運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等の写真付証明書) ・遺言者本人の実印 |
相続人・受遺者の確認書類 | ・遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本 ・受遺者の住民票(法人の場合は法人の登記簿謄本) |
遺産に不動産が含まれる場合 | ・不動産の登記簿謄本 ・固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書 |
遺産に預貯金や有価証券等が含まれる場合 | 預貯金通帳や有価証券等のコピー |
証人の確認書類 | ・住民票など(氏名・住所・生年月日が確認できるもの) ・職業がわかる資料 |
遺言執行者の確認資料(遺言執行者を指定する場合) | ・住民票など(氏名・住所・生年月日が確認できるもの) ・職業がわかる資料 |
公正証書遺言の作成にあたり、かかる費用は以下のとおりです。
このうち、交付手数料以外について、以下で解説します。
財産の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円まで | 5000円 |
200万円まで | 7000円 |
500万円まで | 1万1000円 |
1000万円まで | 1万7000円 |
3000万円まで | 2万3000円 |
5000万円まで | 2万9000円 |
1億円まで | 4万3000円 |
1億円を超え3億円以下 | 超過額5000万円ごとに1万3000円を加算 |
3億円を超え10億円以下 | 超過額5000万円ごとに1万1000円を加算 |
10億円を超える場合 | 超過額5000万円ごとに8000円を加算 |
公正証書手数料は、手数料令という政令で定められています。 また、財産全体の価額ではなく、相続人・受遺者ごとにかかる料金だということに注意が必要です。さらに、財産の合計価額が1億円以下の場合、1万1000円の「遺言加算」という費用がかかります。
例えば、相続人Aに1000万円、相続人Bに3000万円の財産を遺すという遺言内容の場合、 1万7000円(1000万円までの手数料)+2万3000円(3000万円までの手数料)+1万1000円(遺言加算) となり、合計5万1000円の手数料がかかります。
証人の報酬は、場合によって以下の程度です。
なお、公証人に出張してもらうと、証人に日当を払うだけでなく、公正証書作成の手数料が1.5倍になり、交通費の実費を負担する必要があります。
公正証書遺言には、以下のようなメリットがあります。
上記のメリットについて、以下でそれぞれ解説します。
検認とは、開封前の遺言書を家庭裁判所に持参し、検認時点での遺言書の状態・署名・加除訂正などを明確にし、偽造・変造を防ぐための手続きです。 公証役場で作成・保管された公正証書遺言は、遺言書の効力について信用性が高いとされているため、検認をする必要がありません。 他方、自筆証書遺言(法務局で保管されていたものを除く)や秘密証書遺言は、開封するときに検認の手続きをしなければなりません。もしも検認をしないままで開封してしまうと、5万円以下の過料に処せられるおそれがあるので注意しましょう。 遺言書の検認手続きについては、以下のページで詳細を解説しています。こちらも併せてご参照ください。
遺言書の検認公正証書遺言は、遺言者が発言した内容を公証人が文書に落とし込み、そのまま公証役場で公正証書として保管されます。 原本は公証役場にあるため、遺言者の存命中も亡くなった後も、第三者によって偽造・変造されたり、紛失したりするおそれがありません。
公正証書遺言の場合には、遺言内容を書くのは公証人であるため、病気や高齢等の理由で自筆できない方でも残すことができます。 また、事情により公証役場に行けない方であっても、公証人に出張を依頼することもできます。 なお、公証人に出張を依頼した場合の費用については、こちらの項目をご確認ください。
公正証書遺言には、以下のようなデメリットがあります。
上記のデメリットについて、それぞれ以下で解説します。
公正証書遺言は、作成前に必要書類や資料を不足なく用意したり、事前に公証人と打ち合わせをしたり、日程調整をしたり等、時間と手間がかかります。 また、遺産の価額、相続人の人数によって手数料が変わるため、財産と相続人が多い場合は費用がかかってしまいます。公証人に出張してもらった場合、費用は1.5倍となり、日当と交通費もかかります。 詳しくは、こちらの項目で解説しているのでご覧ください。
公正証書遺言を作成する際は、正しい手続きを経て作成されたことを証明するため、2人以上の証人の立会いが必要となります。 なお、証人になれる条件が定められています。 基本的には自分で手配しなければなりませんが、見つからないときは公証役場から紹介も受けられます。ただし、その場合は証人に対する費用がかかります。
例として、以下のようなケースでは、遺言書を公正証書遺言とすることをおすすめします。 特に法定相続分と違った配分で財産を残したい場合や、特定の人物に確実に多く財産を残したい場合などには、後々、遺言書の有効性をめぐってトラブルになることが予想されます。公正証書遺言ならば、有効性が保証されているため、トラブルを防げる可能性が高くなります。
公正証書遺言は自筆する必要がないので、作成の困難さは低くなるものの、状況によっては気軽に作れないことも考えられます。 例えば、次のようなケースでは、作成に困難が伴います。
これらのケースにおける対応について、以下で解説します。
作成において、言語障害や聴覚障害などにより、遺言内容の「口授」、「口述」、公証人による筆記した遺言内容の「読み聞かせ」に対応できない方でも、以下の方法により公正証書遺言を作成することが可能です。
遺言者が高齢や病気などの理由で署名ができない場合、公証人がその旨を遺言書に付記することで、署名に代えることが可能であると定められています。
遺言者が高齢や病気などで公証役場まで行くことができない場合、公証人が自宅や病院、老人ホームなどに出張してくれますので、出張先で口述、筆記を行い、公正証書遺言を作成することが可能です。
相続税にも強い弁護士が豊富な経験と実績であなたをフルサポート致します
作成された公正証書遺言の原本は公証役場で保管され、正本と謄本は遺言者に交付されるため自身で保管することになります。 原本の保管は原則として20年となっていますが、遺言者の存命中に20年が経つことも考えられるため、少なくとも遺言者が亡くなるまでは継続して保管されることになっています。法律上のルールが明確に定められているわけではありませんが、遺言者が120歳になるまでの期間保管される運用になっているようです。
作成後の公正証書遺言は、遺言者の存命中は、遺言者本人と、委任状を持った代理人のみが閲覧することができます。 相続人、受遺者、遺言執行者など、遺言に利害関係がある人が公正証書遺言を検索・閲覧できるのは、遺言者が亡くなった後のみです。 ただし、相続人等の利害関係者でも、遺言者から遺言の存在や内容を知らされており、同時に代理人として委任された場合は閲覧が可能です。 なお、「遺言検索システム」は全国どの公証役場からでも利用可能ですが、遺言内容を閲覧するには、基本的に原本が保管されている公証役場に出向く必要があります。ただし、原本がある公証役場が遠い場合には、作成年と公証番号が判明していれば、郵送にて謄本の請求・受領が可能です。
遺言者が死亡した事実について、公証人に伝えられるシステムがあるわけではないので、相続人に対して遺言書があることを自動的に知らせてくれるわけではありません。
弁護士に依頼すれば、遺言書の書式だけでなく、その内容についても相談することができます。 亡くなった後、遺族間でのトラブルを防ぐにはどのような分配にすればいいのか、あるいは特定の相続人に多く財産を残したいがどうすればいいのか等、遺言について幅広い相談に対応してもらえるので、自身の希望に沿った、かつ遺族間のトラブルを防ぐ遺言書を残すことができます。 公正証書遺言は、公証人が作成することにより形式不備で無効になるおそれはありませんが、「書式」に関する要件が法的に有効であることが保証されるだけです。 遺産の分配方法や遺留分への配慮等については、弁護士のアドバイスに基づいて考えていただくと良いでしょう。
弁護士に依頼することで、必要書類の準備に関するサポートを受けられるため、安心して手続きを進めることができます。 公正証書遺言を作成するためには、多くの書類を準備しなければなりません。しかし、必要書類をすべて集めるには手間や時間がかかります。 そこで、弁護士に任せることによって、必要書類を集める手間を省くことが可能です。
依頼した弁護士は、「遺言執行者」として選任することもできます。 遺言執行者とは、その遺言内容を実現するために、遺言執行に必要な一切の権利・義務を持つ人をいいます。 通常、遺言書で指定がなかった場合は家庭裁判所に選任してもらうことになりますが、遺言内容について相談していた弁護士を遺言執行者に指定することで、遺言書の内容がきちんと守られるよう任せられるといった点で、安心感を高めることができます。 遺言執行者については、以下のページで詳しく解説しています。こちらもぜひ併せてご参照ください。
遺言書執行者の役割や選任について弁護士と任意後見契約を結んでおけば、豊富な法律知識や確かな職業意識によって、依頼者の意思と利益を最大限に尊重し、後見人としての職務をしっかりと果たします。 任意後見人とは、認知症などにより判断能力が低下してしまった際に、財産管理や、生活・治療・介護に関する法律行為をする人です。多くのケースでは、本人の判断能力がしっかりしているうちに後見人を選び、将来、任意後見人になってもらうという契約を結びます。 任意後見人は、未成年者や破産者等の例外を除けば、親族や友人でも選任することができます。しかし、近しい人を後見人としたばかりに、財産の使い込みをされたり、相続の際にトラブルになったりすることは珍しくありません。 弁護士であれば、そのような心配は不要です。
公正証書遺言に関してよくある質問について、以下で解説します。
公正証書遺言は、その書式、方式で法的に無効となることはありませんが、内容によって相続で揉めてしまうケースは十分あり得ます。 特に多いのが、遺言の内容が遺留分に配慮していなかったケースです。 遺留分とは、相続人(兄弟姉妹とその代襲者を除く)に保障されている、最低限の遺産の取得分です。例えば「愛人に財産のすべてを譲る」というような遺言は相続人の遺留分を侵害していることになりますので、配偶者や子供は「遺留分侵害額請求」を行い、遺留分を取り戻すことが可能です。 ほかにも、相続人が財産の取り分をめぐって争い、訴訟になることも珍しくありません。 自身の希望を可能なかぎり叶えつつ、相続争いが起こらないような遺言書を残すには、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
公正証書遺言の作成を、専門家に依頼せず、自分で行うことは可能です。 ただし、公証人が保証してくれるのはあくまで法的に有効な「書式」や「方式」であるため、その内容でトラブルが起きないかどうかまでは考えてくれません。 例としては、相続人の遺留分を侵害している遺言内容であったため遺族が揉めてしまったり、また、遺言者自身が忘れていたために遺言書に記載されていなかった財産が発見され、トラブルになったりすることなどもあり得ます。 作成する際も、必要書類をもれなく集めたり、信用のおける証人を用意しなければならなかったりと、手間や時間がかかります。 公正証書遺言の作成にあたっては、専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
公正証書遺言は、いつでも、何度でも、撤回や修正をすることが可能です。 公遺言は「遺言者の最期の意思表示」であるため、作成後に遺言者の意思が変わった場合、書き換える必要があるでしょう。 ただし、撤回や修正には、作成の際と同様に証人2人が必要になり、必要書類も提出しなければならないなど決まった方式がありますので、事前に公証役場に問い合わせましょう。
公正証書遺言は、検認等の手続きをせず、すぐに開封してしまっても問題ありません。なぜなら、公正証書遺言は公証役場で作成されたため、内容や有効性が判明しているからです。 また、公正証書遺言の正本は公証役場に保管されており、他者による改ざんのおそれがありません。そのため、公正証書遺言を開封することについて、法的な問題はないと言えます。
公正証書遺言を作成した後でも、遺言者が記載した預貯金を使ったり、そのほかの財産を処分したりすることは自由です。 例えば、遺言書に記載した不動産を売ったとします。この場合、遺言者が直接遺言を訂正したわけではありませんが、法律上、遺言書のうち、その不動産に関する部分のみ撤回したものと扱われ、不動産を売って得た利益が代わりの遺産となるわけではありません。 なお、不動産以外の財産についての部分は有効なままであるため、遺言書を書き直す必要はありません。ただし、不動産部分の撤回により遺留分を侵害してしまう場合、不動産に代わって別の財産を相続させるなどの場合は、書き直しが必要になります。
公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されていますので、たとえ正本や謄本を紛失してしまっても、【1枚250円】で再発行してもらうことができます。 なお、原本が公証役場で保管されているかぎり、再発行したことによって遺言の効力が失われることはありませんので、ご安心ください。
公正証書遺言は、書式を誤ることがないため有効性が担保されており、紛失の心配もないため、確実に残せる遺言書といえます。 しかし、手続きは煩雑であり、また、公証人は遺言の内容にまでアドバイスをくれるわけではないため、遺留分等が原因となって遺族が揉めるおそれがあります。 弁護士であれば、遺言書の内容を考える段階から、ご依頼者様の希望が最大限叶い、かつトラブルにならないようアドバイスいたします。 また、面倒な必要書類の収集の代行や、遺言書作成時の証人も務めることができます。 「このような遺言を残したいが有効かわからない」、「相続で揉めてほしくない」というお悩みから、「どんな遺言を残したらいいかわからない」というご不安まで、どんな小さなことでも、私たちにご相談ください。