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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
相続税には基礎控除額があり、相続財産の総額がこれを超えると、相続税が課されます。しかし、基礎控除額を超えて課税対象になっても、相続税を支払う義務が必ず発生するわけではありません。 相続税には「税額控除」があり、これを適用すれば、税額が下がり、場合によっては相続税を支払わずに済む可能性があります。 この記事では、相続税の税額控除の一覧や、それぞれの控除の内容、税額控除以外の控除・特例などについて解説します。
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相続税の税額控除とは、被相続人と相続人の関係などに応じて設けられている、相続税から一定の金額を控除できる制度です。 相続税の税額控除には、表にまとめた6種類があります。これらを控除して算出された金額が、各相続人の相続税額となります。
| 税額から控除できるもの | 内容 |
|---|---|
| ①贈与税額控除 | 亡くなる前の最大で7年間の贈与について、贈与税を支払った場合には、その贈与税を相続税から差し引ける |
| ②配偶者控除 | 被相続人の配偶者は、1億6000万円までの相続、または法定相続分までの相続について、相続税がかからなくなる |
| ③未成年者控除 | 18歳未満の未成年者は、18歳になるまでの年数に応じて、毎年10万円分を相続税から差し引ける |
| ④障害者控除 | 85歳未満の障害者は、85歳になるまでの年数に応じて、毎年10万円または20万円を相続税から差し引ける |
| ⑤相次相続控除 | 被相続人が過去10年以内に相続税を支払っていた場合、前の相続からの期間などに応じて相続税を差し引ける |
| ⑥外国税額控除 | 外国にある相続財産を相続した者は、外国で支払った相続税の金額等に応じて相続税を差し引ける |
複数の税額控除の要件を満たす場合には、併用することは可能です。これらの税額控除は、①から⑥の順序で適用することが決められています。 相続税の計算方法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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贈与税額控除とは、一定の期間内に納めた贈与税を、相続税から控除できる制度です。生前贈与のときに贈与税を支払っていた場合、相続税を支払ってしまうと、同じお金に2回も税金をかけられることになってしまうため、控除が設けられています。 控除の対象になるのは、被相続人が亡くなる前の最大7年間に生前贈与を受けて、贈与税を支払った者です。 控除に上限額はありません。 控除額を計算するときには、基本的に過去7年以内に支払った贈与税額をそのまま用います。 ただし、相続時精算課税制度を利用していた場合には、例外的に7年より前の生前贈与についても、贈与税額控除の対象となることがあります。
配偶者控除とは、被相続人の法律上の配偶者が控除を受けられる制度です。被相続人の遺産の形成に大きく貢献したことや、配偶者の生活を保障する必要があること等から設けられました。 ただし、対象は法律上の配偶者だけなので、内縁関係の配偶者等には認められません。 控除額の上限は、以下のうち、金額が大きい方の相続財産にかかる相続税額です。
①1億6000万円 ②配偶者の法定相続分の遺産に相当する金額
なお、配偶者の法定相続分は、法定相続人の構成によって表のように定められています。
| 法定相続人 | 配偶者の法定相続分 |
|---|---|
| 配偶者と子 | 1/2 |
| 配偶者と親(両親や祖父母等) | 2/3 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 3/4 |
| 配偶者のみ | 全額 |
未成年者控除とは、未成年者である相続人が控除を受けられる制度です。未成年者が成人するまでに費用がかかるため、この制度が設けられています。 控除の対象となるのは、18歳未満の相続人です。養子縁組しておらず代襲相続もしない孫など、相続人ではない者が遺贈を受けても控除は適用できません。 控除額は、未成年者が成人するまでの1年につき10万円となります。 なお、1年未満の期間がある場合には、1年としてカウントします。そのため、17歳6ヶ月の相続人等についても、1年分の未成年者控除が適用可能です。 孫が法定相続人になると、未成年者控除が適用される可能性が高まります。孫が法定相続人になるケースについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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障害者控除とは、障害者である相続人が受けられる控除です。障害者は生活費や医療費等が通常よりも多くかかることや、生活を保障する必要があることから、この制度が設けられています。 控除の対象となるのは、85歳未満の障害者です。 控除額の計算方法は、障害の程度により、以下の①②のいずれかが適用されます。
相次相続控除とは、相続が10年以内に2回以上続いた場合における控除です。短い期間で相続が繰り返されると、相続税の負担が重くなりすぎてしまうために、この制度が設けられています。 対象となるのは、被相続人が過去10年以内に相続税を支払っていた相続財産の相続人です。相続放棄した者が遺贈を受けた場合等では、相次相続控除の適用は受けられません。 相次相続控除の金額は、以下の式によって計算します。
A×C/(B-A)×D/C×(10-E)/10
上記の式において、A~Eに以下の金額・数字を当てはめます。
外国税額控除とは、国外と海外での相続税の二重課税を防止するための控除のことです。国外に相続財産がある場合、その国で相続税等がかかることがあるため、同じお金から2回の税金を取ること(二重課税)を防ぐために設けられています。 控除の対象となるのは、外国にある相続財産を取得して、外国で相続税等の税金を納めた者です。 外国税額控除の金額は、以下の①②のうち、金額が小さい方の金額となります。
相続税には、税額控除以外にも、以下のような控除や特例が設けられているため、負担の軽減を図ることができます。
これらの控除や特例について、次項より解説します。
相続税の基礎控除とは、全ての相続に適用される、相続財産から一定の金額を差し引ける制度です。遺族の生活を保障すること等を目的に設けられており、法定相続人の数が増えるほど基礎控除額が増えるため、支払う相続税が減少します。 基礎控除を差し引いた遺産の金額が0円以下であれば相続税がかかりません。相続税が基礎控除によってかからなくなるときには、相続税の申告は必要なくなります。 代襲相続によって法定相続人が増える場合には、基礎控除額もそれに応じて加算されます。一方で、相続放棄によって相続人の数が減ったとしても、基礎控除額には影響しません。 これは、個人の意思によって税金の額が変わってしまうことは望ましくないからです。 法定相続人の数に応じた基礎控除額を、表にまとめたのでご確認ください。
| 法定相続人の数 | 計算式 | 基礎控除額 |
|---|---|---|
| 1人 | 3000万円+600万円×1 | 3600万円 |
| 2人 | 3000万円+600万円×2 | 4200万円 |
| 3人 | 3000万円+600万円×3 | 4800万円 |
| 4人 | 3000万円+600万円×4 | 5400万円 |
相続税の債務控除とは、相続財産に含まれる借金等の債務や葬式費用を、相続財産の金額から差し引くための控除のことです。借金等や葬式費用は相続人が負担することになるため、その負担を軽くするために設けられています。 ただし、被相続人が負っていた債務を全て差し引くことはできません。また、被相続人が亡くなったことに伴って発生した費用であっても、全てを葬式費用として差し引けるわけではありません。
【債務控除できるもの】
【債務控除できないもの】
生命保険金と死亡退職金には、遺族の生活を保障するために非課税枠が設けられています。 そもそも、生命保険金と死亡退職金は遺産ではありませんが、「みなし相続財産」として遺産に加えられ、相続税の対象となるケースがあります。しかし、全額に課税すると税負担が重くなるため、非課税枠の金額を差し引くのです。 具体的には、以下の金額を差し引きます。
500万円×法定相続人の数
この非課税枠は、生命保険金と死亡退職金の両方がある場合には、それぞれに併用することができます。
小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅や事業用の建物がある土地について、相続税を課税するときの評価額を最大で80%減額できる制度です。 自宅等の土地にそのまま相続税をかけてしまうと、税負担によって売却に追い込まれてしまうおそれがあるので、遺族の生活を保障すること等を目的として、この制度は設けられています。 特例を適用してもらえるのは、配偶者や同居していた親族等に限定されます。 特例を適用した結果として、相続財産の評価額が基礎控除の範囲内に収まったとしても、相続税の申告は行う必要があります。申告しないと、特例は適用してもらえないことに注意しましょう。 減額される限度となる宅地等の面積と、減額割合を表にまとめたのでご確認ください。
| 区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
なお、限度面積を上回る広さの土地についても、限度面積までの部分については減額することが可能です。 小規模宅地等の特例について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続税の税額控除については、弁護士にご相談ください。 例えば、基礎控除や未成年控除等によって相続税がかからなくなるケースでは相続税の申告が不要ですが、配偶者控除等によって相続税がかからなくなるケースでは申告が必要です。しかし、この区別は正確な知識がなければ混乱してしまうでしょう。 また、全ての遺産を配偶者に相続させれば、配偶者控除によって相続税がかからないケースは少なくありません。しかし、配偶者から子などに相続させるときに、相続税が高額になってしまうリスクが生じます。このように、税額控除は思わぬ影響を生じさせることがあります。 弁護士であれば、相続税の申告の要否を判断できるだけでなく、最適な相続方法を導き出すこともできます。相続について疑問のある方は、ぜひご相談ください。