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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
誰かが亡くなり、遺言書が残されていない場合、相続人全員で「誰が、どの財産を、どれくらいの割合で相続するのか」を話し合う必要があります。これが遺産分割協議です。 この協議は相続手続きの中でも重要なステップですが、感情や利害が絡みやすく、トラブルに発展することも少なくありません。さらに、協議の進め方や書面化に不備があると、せっかくの合意が無効になるリスクもあります。 この記事では、遺産分割協議の流れや注意点、話し合いがまとまらない場合の対処法について解説します。
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遺産分割協議とは、相続人全員で誰が、どの財産を、どのくらいの割合で相続するのかを話し合う手続きです。 この協議は、相続人全員が参加し、全員の合意が得られなければ成立しません。 合意した内容は、トラブルを防ぐために「遺産分割協議書」として書面に残すのが一般的です。 遺産分割協議が必要なケースと不要なケースに、次のものが挙げられます。
【遺産分割協議が必要なケース】
【遺産分割協議が不要なケース】
遺産分割協議について、短時間で見られる動画にまとめていますので、こちらをご覧ください。
1分半でわかる!はじめての遺産分割協議
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遺産分割協議をしないまま放置すると、次のようなリスクがあります。
遺産分割協議に法律上の期限はありませんが、相続手続きには次のような期限があります。
これらの期限を過ぎると不利益を受けるため、遺産分割協議は早めに進めましょう。 遺産分割協議の期限について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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遺産分割協議は、次のような流れで行います。
遺産分割協議を始める前に、まず確認すべきなのは遺言書の有無です。 遺言書がある場合、基本的にはその内容に従って遺産を分けます。 一方で、遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合、相続人全員が遺言内容と異なる分割を希望するような場合には、相続人全員で協議を行う必要があります。 遺言書を探すときは自宅や銀行の貸金庫、公証役場、法務局などを確認しましょう。 公証役場や法務局で保管されている遺言書は家庭裁判所での検認は不要ですが、自宅で見つかった遺言書は、勝手に開封せず、検認を受ける必要があります。 遺言書について詳しく知りたい方は、こちらのリンクをご一読ください。
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遺産分割協議は、相続人全員が合意しなければ成立しません。しかし、思わぬところに相続人がいるケースがあります。 例えば、次のようなケースが考えられます。
そのため、遺産分割協議を行う前に相続人調査を行い、誰が法定相続人なのかを正確に調べる必要があります。 相続人調査は、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本をすべて集めて行います。まずは被相続人の最後の戸籍謄本を、本籍地の市区町村役場で取得します。そこから遡り、最終的には出生時の戸籍謄本を取得します。集めた戸籍から、兄弟姉妹、子、養子などの存在を明らかにします。 なお、相続人調査の流れなど、さらに詳しい内容は以下のページで解説しています。こちらもぜひご一読ください。
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相続人調査が完了して相続人が確定したら、次は相続財産(遺産)を調べ、分配する遺産がどれくらいあるのかを確認します。 相続財産の調査では、現金・預貯金・不動産・株式などのプラスの財産はもちろんのこと、借金・ローン・滞納している税金などのマイナスの財産も調べる必要があります。なぜなら、マイナスの財産も相続の対象に含まれるからです。 相続財産の調査を終えたら、その後の話し合いや相続手続きをスムーズに進められるよう、財産を一覧にした財産目録を作成し、書面にまとめておきましょう。 資産も負債も見落とさないように、以下の表に記載したものを、様々な場所で慎重に探す必要があります。
| 財産 | 確認するもの (探す場所) | |
|---|---|---|
| 資産 | 不動産 |
|
| 現金・預金・株など |
|
|
| 動産 | 金庫・戸棚・引き出し(被相続人の自宅・トランクルーム) | |
| そのほか | 貸金庫(金融機関) | |
| 負債 | 借金・ローン |
|
| 滞納している税金 | 郵送物 | |
| そのほか | 金庫・戸棚・引き出し(被相続人の自宅) | |
以下のページでは、さらに詳しい相続財産の調査方法を解説しています。こちらもぜひご参照ください。
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相続人調査と相続財産の調査が完了したら、いよいよ相続人全員で遺産の分割方法に関する話し合い(遺産分割協議)を行います。 遠方に住んでいる相続人がいる等、相続人全員が集まることが難しい場合には、次に挙げる方法を用いることも可能です。
相続人全員の合意を得るということが重要ですので、誰か1人でも反対すると遺産分割協議は成立しません。 遺産の分割方法についてすべての相続人が納得し、話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。 遺産分割協議書とは、遺産の分割について相続人間で合意した内容をまとめた書面です。「誰が」「どの財産を」相続するのかを細かく記載して、相続人全員が署名・捺印するので、遺産分割協議による合意内容を証明する証拠となります。 必ず作成しなければならないわけではありませんが、後になって合意内容と食い違う主張をする相続人が出てくるなどのトラブルを防ぐために必要です。 なお、以下の手続きを行う場合は、遺産分割協議書を提出しなければならないため作成しておくべきでしょう。
遺産分割協議書の作成方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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遺産分割協議書を作成したら、その内容に従って相続財産の名義変更を行います。 不動産は法務局で相続登記を申請し、預貯金は金融機関で名義変更や解約、株式は証券会社、自動車は運輸支局で手続きをします。名義変更をしないまま放置すると、売却や解約などができず、次の相続時に手続きが複雑になるなどの不利益が生じます。 手続きには遺産分割協議書のほか、戸籍謄本や印鑑証明書などが必要になるため、事前に確認して準備しましょう。すべての名義変更が完了した時点で、遺産分割協議は正式に終了します。
遺産分割協議は一度成立すると基本的に確定しますが、以下の要件を満たせばやり直しが認められます。
ただし、再協議で不動産の相続人が変わると名義変更が必要になり、登録免許税や不動産取得税が再度発生するほか、贈与税や所得税が課される場合があります。さらに、第三者に譲渡された財産は取り戻せないこともあるため、やり直しは慎重に検討しましょう。
遺産分割協議は、相続人全員で意見をまとめる大切な手続きですが、進め方を誤ると後々トラブルになる可能性があります。ここでは、協議をスムーズに進めるために知っておきたい注意点を解説します。
遺言書がある場合、基本的にその内容に従って遺産を分けるため、遺産分割協議は不要です。 しかし、遺言書に分割割合のみが記載されており、分け方については記載がない場合など、遺言内容から分配方法が定まらない場合は遺産分割協議が必要です。 また、遺言書に不備がなくても、相続人全員が合意すれば、遺産分割協議により遺言書と異なる方法で遺産を分けることも可能です。 ただし、相続人が幼いなどの理由から、遺言書に「遺産分割の禁止」が定められていると、禁止期間が過ぎるまでは協議ができません。さらに、協議をするときに、受遺者や遺言執行者の同意が必要となるケースもあるため、事前に確認しておくことが重要です。
相続人に認知症の方がいる場合、そのままでは遺産分割協議を進めることはできません。 意思能力のない人が同意しても、その協議は無効になるためです。 このような場合は、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任し、代理人として協議に参加してもらう必要があります。 成年後見制度には、裁判所に選任してもらう「法定後見」と、元気なうちに将来に備えて契約する「任意後見」があります。選任された後見人は、本人に代わって財産管理や契約を行い、遺産分割協議にも参加します。 成年後見人について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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未成年者は遺産分割協議に参加できないので、本来であれば法定代理人である親権者が協議に参加します。親が代理人になれない場合には、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てることができます。 特別代理人の選任方法や、誰が特別代理人になれるのかなどについては、以下の記事でご確認ください。
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相続人に行方不明者がいると、全員の同意が得られないため遺産分割協議はできません。 まずは戸籍の附票で現住所を確認します。それでも所在が分からない場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てます。管理人が選任されると、行方不明者に代わって財産管理や協議に参加できます。 また、7年以上生死不明なら、「失踪宣告」の申立てにより法律上死亡とみなされ、代襲相続人を含めた協議が可能になります。これらの手続きは専門性が高いため、早めに専門家へ相談することが重要です。 相続人の行方が分からない場合の対応方法については、こちらの記事をご覧ください。
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遺産分割協議では、相続人の意見が対立して話し合いがまとまらないことがあります。 その場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てるのが一般的です。 調停では、調停委員が相続人それぞれの意見や希望を聞き、助言や提案を行います。ただし、あくまで話し合いの場であるため、納得できなければ合意する必要はありません。 もし調停が不成立となった場合は、自動的に「遺産分割審判」に進みます。 審判では裁判官が法律と証拠に基づいて分割方法を決定します。不服があれば2週間以内に即時抗告することが可能です。調停や審判は、ほとんどの人にとって慣れない手続きであるため、事前に弁護士に相談することをおすすめします。 遺産分割調停や審判の流れについて詳しく知りたい方は、以下の各ページをご覧ください。
被相続人の介護が長年に渡って続いたケースや、多額の生前贈与を受けた相続人がいるケース等、トラブルが予想されるケースでは早めに弁護士に相談するのが望ましいでしょう。 早い時点で弁護士に相談するメリットとして、以下のことが挙げられます。
遺産分割協議のご相談をお考えの方は、こちらのページをご覧ください。
遺産分割協議は弁護士にお任せ下さい遺産分割協議を弁護士に依頼した際にかかる費用は、次のとおりです。
事務所によっては、遺産分割協議が成立した場合にのみ費用が発生する完全成功報酬制のところもあります。 多くの事務所が初回相談無料となっているため、複数の事務所で見積もりを取り、費用体系を比較することをおすすめします。
海外在住の相続人がいる場合でも、電話やメール、Zoomなどを使えば、帰国せずに遺産分割協議を進めることができます。ただし、遺産分割協議書には全員の署名と押印が必要です。 日本在住の相続人は実印と印鑑証明書を用意しますが、海外在住者は印鑑証明書の代わりに、日本大使館や領事館で「サイン証明書」を取得します。これは、領事の立ち会いのもとで協議書に署名・拇印し、証明書を発行してもらう手続きです。また、不動産を相続する場合は、住民票の代わりに「在留証明書」も必要になります。これらの書類の準備や国際郵送には時間がかかるため、早めの対応が重要です。 印鑑登録証明書が取得できない場合などの手続きの流れや注意点については、以下の記事でご確認ください。
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遺産分割協議で借金の負担割合を話し合うことは可能ですが、あくまで相続人同士の内部的な取り決めに過ぎず、債権者には効力がありません。たとえ協議書に「長男が全額返済する」と記載しても、債権者は各相続人に法定相続分に応じて請求できます。一部の相続人だけが返済義務を負うには、債権者の承諾が必要です。 また、協議で「相続しない」と伝えても正式な相続放棄にはならず、「相続分の放棄」として扱われます。この場合、財産は受け取らなくても借金の返済義務は残ります。借金を避けるには、家庭裁判所で相続放棄を申述し、相続人の地位を放棄する必要があります。相続放棄には「相続を知ってから3ヶ月以内」という期限があるため、早めに対応しましょう。
遺産分割協議で決めた分割方法が、遺言書の内容に反するのであれば、成立した遺産分割協議は基本的に無効となります。この場合には、遺言書で指定されたとおりに遺産分割を行います。 しかし、相続人全員が合意し、遺言書ではなく遺産分割協議で決めた分割方法を優先させることになったときは、成立した遺産分割協議で決めた方法で遺産分割をすることができます。 なお、遺言書に「相続人の廃除」や「子の認知」等の身分関係について記載されていた場合、遺言執行者が指定されている場合、相続人以外の第三者が受遺者とされている場合には、成立した遺産分割協議が無効になる余地があるので注意が必要です。
相続問題をこじらせずに解決するためには、遺産分割協議を始める段階で、法律の専門家である弁護士のアドバイスを受けることが大切です。 例えば、被相続人のためを思った行動であっても、法律的な観点や、他の相続人の価値観においては認められにくいことも少なくありません。これが原因となって相続人間の感情がこじれ、後々の親族付き合いにも深刻な影響を与えてしまうケースがあります。 トラブルへの発展を防ぎながら、ご依頼者様の希望に最も近い形で遺産分割をすすめられるよう努めますので、ぜひ私たちにご相談ください。