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不動産のみの遺産分割協議書の書き方

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

不動産の相続登記を行うためには、遺産分割協議書が必要となるケースが多いです。ここで、相続登記を行うためだけに作成する遺産分割協議書については、不動産のことだけを記載すれば問題ありません。 遺産分割協議書は自分でも作成できるので、なるべく記載内容を減らしたいときには、不動産のみの内容にすることも検討しましょう。 この記事では、不動産のみの遺産分割協議書を作成するときの書き方や内容、必要書類等について解説します。

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相続登記には遺産分割協議書が必要

相続登記を行うときに、遺言書がなく、また、法定相続分による相続でもない場合には、遺産分割協議書を添付しなければなりません。 遺産分割協議書とは、相続人全員が参加して行う遺産分割協議において、不動産を含むすべての相続財産の相続方法や相続割合等に関する合意内容を記載した書面です。 遺産分割協議が不要であれば遺産分割協議書は作成されません。遺産分割協議が不要なのは次のようなケースです。

  • 相続人が1人だけのケース
  • 法定相続分によって相続するケース
  • 遺言書の内容に従って相続するケース
  • 相続財産が現金等だけであるケース

相続登記は2024年4月より義務化されます。昔の相続についても、相続登記を行う義務があるため注意しましょう。 遺産分割協議書について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

不動産のみの記載でもいい

相続登記が目的の遺産分割協議書に全ての相続財産を記載する必要はありません。不動産だけ記載した遺産分割協議書でも有効です。 全財産を記載した協議書を作成し、併せて不動産のみを抜粋した協議書も作成し相続登記には抜粋した協議書を用いるのも可能です。

遺産分割協議書のひな形・書き方例

遺産分割協議書には、決まった書式はありません。自分で作成することも可能ですが、無効になるリスク等を抑えるために、なるべく専門家に作成を依頼することが望ましいでしょう。 相続財産に含まれる不動産の種類や分割方法によって、遺産分割協議書の書き方は異なります。そのため、以下に掲載する書き方の例を参考にしてください。

遺産分割協議書

被相続人の氏名 ●●(●●年●●月●●日死亡)
本籍地     ●●
最後の住所   ●●
生年月日    ●●年●●月●●日

上記被相続人●●の共同相続人である●●及び●●は、被相続人の遺産について協議を行った結果、以下のとおり遺産分割することに合意した。

1.相続人●●は、次の土地を取得する。
所在   ●●市●●町●●丁目
地番   ●●番●●
地目   宅地
地積   ●●・●●平方メートル(㎡)

2.相続人●●は、次の建物を取得する。
所在   ●●○○町○○丁目 ○○番地○○
家屋番号 ●●番●●
種類   居宅
構造   木造スレート葺2階建
床面積  1階 ●●・●●平方メートル(㎡)
     2階 ●●・●●平方メートル(㎡)

3.相続人●●は、次のマンションの専有部分及び敷地権を取得する。
一棟の建物の表示
所在     ●●市●●町●●丁目●●番地●●
建物の名称  ●●ヒルズマンション

専有部分の建物の表示
家屋番号   ●●丁目●●番●●の204
建物の名称  204
種類     居宅
構造     鉄筋コンクリート造10階建
床面積    2階部分 ●●・●●平方メートル(㎡)

敷地権の表示
所在及び地番 ●●市●●町●●丁目●●番●●
地目     宅地
地積    ●●・●●平方メートル(㎡)
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 ●●万分の●●

4.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人●●がこれを取得する。

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を2通作成し、それぞれ署名捺印のうえ、各自1通を保有するものとする。

●●年●●月●●日
住所     ●●●●
相続人    ●●●●  (実印)

住所     ●●●●
相続人    ●●●●  (実印)

不動産のみの遺産分割協議書へ書く内容

不動産のみを記載した遺産分割協議書に記載するべき内容について、次項より解説します。

被相続人の情報

遺産分割協議書には、被相続人を特定するための情報として、次のような内容を記載します。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • 亡くなった日

登記記録における被相続人の住所と、被相続人の最後の住所が異なる場合には、被相続人の住民票等によって同一人物であることを証明します。このとき、遺産分割協議書に、登記記録における被相続人の住所も記載することが望ましいでしょう。 遺産分割協議書を作成する前に、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本、住民票の除票等を取得しておき、それらに記載されている文言を正確に書き移すようにしましょう。 なお、遺産分割協議書には前文を記載して、そこに「相続人全員による遺産分割協議が成立した」旨を明記しましょう。

不動産の情報

遺産分割協議書には、不動産の情報として、遺産分割協議で決まった相続方法を記載します。 誰がどの不動産を相続するかを明記して、複数名で相続して共有する不動産については各相続人の持ち分も記します。 相続財産である不動産については、必ず特定できるように記載しましょう。地番や家屋番号、面積等について、不動産ごとに記載する必要があります。 マンションについては、相続する部屋(専有部分)を特定して、敷地権についても記載しましょう。 不動産の情報を正確に記載するために、遺産分割協議書を作成する前に、登記事項証明書を取得することをおすすめします。登記事項証明書は最寄りの法務局で取得できるので、遠方の不動産のものについても取得することができます。

土地や建物

遺産分割協議書には、土地や建物の情報として、主に以下のような事項を記載します。

【土地】

  • 所在
  • 地番
  • 地目(宅地、田、畑、山林等)
  • 地積(土地の面積)

【建物】

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類(居宅、店舗、事務所、倉庫等)
  • 構造(木造かわらぶき平家建、鉄筋コンクリート造陸屋根三階建等)
  • 床面積(建物の壁や柱等に囲まれた部分の面積)

遺産分割協議書にこれらを記載する際は、登記事項証明書の記載事項を正確に書き写すようにしましょう。 文字を誤る等すると、不動産の同一性が問題になるおそれがあります。

マンション

遺産分割協議書には、建物全体と相続する部屋(専有部分)、敷地権について記載します。 それぞれの情報として、主に以下のような事項を記載します。

【建物全体】

  • 所在
  • 建物の名称

【部屋(専有部分)】

  • 家屋番号
  • 建物の名称
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

【敷地権】

  • 土地の符号
  • 所在及び地番
  • 地目
  • 地積
  • 敷地権の種類
  • 敷地権の割合

遺産分割協議書には、これらの事項について、登記事項証明書の記載を正確に書き写すように注意しましょう。

不動産の共有持分を相続するケース

被相続人が他者と共有していた不動産を相続すると、共有持分を有することになります。土地や建物、マンションの共有持分を相続する場合には、遺産分割協議に次の事項を記載します。

【土地】

  • 所在
  • 地番
  • 地目(宅地、田、畑、山林等)
  • 地積(土地の面積)
  • 相続人の持分
  • 共有者および共有者の持分

【建物】

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類(居宅、店舗、事務所、倉庫等)
  • 構造(木造かわらぶき平家建、鉄筋コンクリート造陸屋根三階建等)
  • 床面積(建物の壁や柱等に囲まれた部分の面積)
  • 相続人の持分
  • 共有者および共有者の持分

【マンション】

《建物全体》

  • 所在
  • 建物の名称

《部屋(専有部分)》

  • 屋番号
  • 建物の名称
  • 種類
  • 構造
  • 床面積
  • 相続人の持分
  • 共有者および共有者の持分

《敷地権》

  • 土地の符号
  • 所在及び地番
  • 地目
  • 地積
  • 敷地権の種類
  • 敷地権の割合
  • 相続人の持分
  • 共有者および共有者の持分

不動産を共有分割して相続するケース

共有分割とは、不動産等の相続財産を、相続人が共有取得によって相続する方法です。売却等のときに共有した相続人間で意見の相違が発生し、トラブルになりがちであるため、最後の手段として用いられるケースが多いです。 共有分割をするときに、遺産分割協議書には、誰がどれだけの割合で相続するのかを明記して、共有持分が分かるようにします。他の記載事項は、一軒家やマンションを相続するときと同様です。 遺産分割を行う方法は、主に4種類あります。それぞれについて詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。

新たに見つかった相続財産の分割方法

不動産のみについて記載した遺産分割協議書であっても、トラブル防止のために、相続財産として新たに不動産が発見された場合の分割方法について記載しておきましょう。 新たに発見された不動産の分割方法は、主に以下の3つの方法から選ぶことができます。

  • ①改めて分割の協議をする
  • ②特定の相続人が取得する
  • ③各相続人の取得の割合を定めておく

全相続人の署名・捺印

遺産分割協議書の末文には、遺産分割協議が成立した旨、相続人全員分の遺産分割協議書を作成した旨、および成立した年月日を記載して、相続人全員が署名して実印で押印します。 遺産分割協議書には印鑑証明書を添付するため、押印するのが実印でなければ相続登記の申請等に使えなくなってしまいます。実印でない印鑑を用いないように注意しましょう。

不動産のみの遺産分割協議書の作成に必要な書類と注意点

遺産分割協議書を作成するときに必要な書類を表にまとめたのでご覧ください。

書類名 対象となる人 備考
戸籍謄本または除籍謄本 被相続人 出生から死亡までのすべて
住民票の除票 被相続人
戸籍の附票 被相続人 登記簿上の住所と死亡時の住所が異なるとき
戸籍謄本 相続人 全員のもの
印鑑証明書 相続人 全員のもの
登記事項証明書 相続財産である不動産のすべてのもの

遺産分割協議書作成時の注意点

遺産分割協議書を作成するときに、住所の表記等が1文字でも間違っていると、登記申請を行うときに受け付けてもらえなくなってしまいます。 このとき、遺産分割協議書を作り直す必要がありますが、相続人全員が署名して実印で押印する必要がある等、大変な手間がかかってしまいます。そのため、間違いのないように記入しなければなりません。

相続登記の手続きについて

遺産分割協議書を作成したら、相続登記の申請をします。相続登記に必要な書類は次のとおりです。

  • 登記申請書
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本または除籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 相続関係説明図(戸籍謄本の原本還付を請求する場合)

相続登記とはどのようなものかについては、以下の記事でわかりやすく解説しているのでご覧ください。

不動産の遺産分割では、分割方法で揉めやすくなります。お困りのことがありましたら弁護士にご相談ください

相続財産に高額な不動産があるケースや、不動産以外の相続財産がほとんど存在しないケース等では、公平な分配が難しくなって相続人が揉めやすくなります。 そもそも、不動産は評価方法によって金額が変動することのある財産であり、見解の違いによってトラブルになりやすいものです。 そこで、相続財産のうち不動産が高い割合を占める場合等には、弁護士にご相談ください。弁護士であれば、妥当な不動産の評価方法や、相続した不動産の売却等についても考慮した相続方法などについてアドバイスできます。 相談後に依頼していただければ、遺産分割協議に代理で出席するなど、他の相続人を説得するための活動も可能です。トラブルに発展するリスクがある場合には、なるべく早くご相談ください。