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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
親が所有している土地等について、遠方に住んでおり管理できないことや、地方であり資産価値がほとんどないこと等を理由として、相続したくないと考えている方もいるでしょう。 また、相続放棄して相続人がいなくなった場合に、相続財産に含まれている土地はどうなるのかと気になる方もいるでしょう。 そこで、本記事では、土地だけの相続放棄の可否や、相続放棄をすると土地はどうなるのか、相続放棄するときの手続きの流れ、土地を相続放棄するときの注意点、相続放棄以外に土地を手放す方法、相続土地国庫帰属制度の利用等について解説します。
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不要な土地を、相続放棄によって受け取らないようにすることは可能です。ただし、土地だけを相続放棄することはできません。 これは、相続放棄が、被相続人の相続財産に関する一切の権利義務を放棄する手続きだからです。そのため、財産を選んで相続することはできません。 一例として、次のようなケースについて考えます。
【相続財産が土地と100万円の貯金である場合】
なお、不要な土地は相続したくないものの、思い入れのある実家等は相続したいという場合には、「限定承認」を行うことによって希望を叶えられる可能性があります。 限定承認について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続放棄せずに土地を相続してしまうと、主に次のようなリスクがあります。
相続放棄によって不要な土地を相続しなければ、固定資産税を支払う必要は基本的になくなります。余計な税金を払いたくない場合には、不要な土地を相続しないことが重要となります。 相続放棄せずに、不要な土地を放置しておくと、雑草が繁殖して害虫が発生したり、ゴミの不法投棄を招いたりするリスクがあります。周辺住民とのトラブルを抱えたくなければ、相続しないことが望ましいでしょう。 建物が劣化して倒壊すれば、損害賠償請求を受けるリスクがあります。管理が難しい建物のある土地は、相続するべきではないでしょう。
相続放棄すると、相続財産の土地等は他の相続人などが相続することになります。 法定相続人になり得る全員が相続放棄すると、相続財産清算人が選任されて債権者や特別縁故者等に分配され、それでも残った場合には国庫に帰属します。 ただし、相続放棄したときに現に占有していた相続財産については保存義務が課されることに注意しましょう。 保存義務や相続財産清算人について、次項より解説します。
相続放棄をしても、その時点で土地を占有していた者には、土地の保存義務が残ります。 保存義務とは、自己の財産と同一の注意をもって相続財産の管理を継続する義務です。2023年4月の法改正により、保存義務を負うのは相続放棄のときに現に占有している相続財産に限定されました。 遠方にあって入ったこともないような土地については、保存義務は課されません。保存義務がある場合には、他の相続人等に土地を引き渡すまで、管理を継続する必要があります。 土地を相続する者が決まっても、引き渡すまでは保存義務が残ることに注意しましょう。 相続放棄後の保存義務について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
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相続人全員が相続放棄をした場合等、相続人がいなくなったときには、利害関係人等の申立てにより家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。 相続財産清算人は、2023年4月1日施行の改正民法により「相続財産管理人」から名称が変更されました。相続財産の管理や被相続人の債権者への弁済、特別縁故者への相続財産の引き渡し等を行うために選任されます。 選任された相続財産清算人は、相続財産の内容を明らかにするために、相続財産目録を作成して、財産を保存するために必要な事務を行います。最終的に、残った財産は国庫に帰属します。 相続財産清算人について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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土地を相続放棄するときの手続きの流れは、主に以下のようなものです。
相続放棄の手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続放棄に必要な書類として、主に以下のようなものが挙げられます。
相続放棄にかかる費用として、主に以下のようなものが挙げられます。
土地の相続放棄をするときには、以下のような点に注意しておくべきです。
これらの注意点について、次項より解説します。
相続放棄は、自己のために相続が開始されたことを知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申し立てなければなりません。期限を過ぎてしまうと、相続放棄できなくなってしまいます。 他の相続人に伝える等の手段では、相続放棄できないことにも注意しましょう。
相続放棄をする場合には、相続人となることができる資格を持つ人の全員に対して、前もって「相続放棄をすること」を伝える配慮が必要です。なぜなら、先順位の相続人が相続放棄すると、次順位の相続人が相続することになってしまうからです。 次順位以降の相続人も相続放棄できるように、連絡を忘れないようにしましょう。 なお、相続権が高齢な祖父母等に移ってしまうと、相続放棄の手続きを自分ですることが難しいために、迷惑がかかってしまうおそれがあります。 このような事態を防ぐために、限定承認することも検討しましょう。
相続放棄できない理由がある場合等では、家庭裁判所に相続放棄が認められないことがあります。 相続放棄が認められない主な理由は以下のとおりです。
●相続財産を処分してしまった 相続財産を自分のために使ったり、不動産や自動車等の名義を変更したりすると、単純承認が成立するおそれがあります。単純承認が成立すると、相続放棄はできなくなります。 ●期限までに相続放棄しなかった 自己のために相続が開始されたことを知ってから3ヶ月以内に相続放棄しないと、基本的には単純承認が成立してしまいます。 ●必要書類が不足している 相続放棄の申立てには多くの書類が必要であり、1つでも不足していると手続きができません。 ●遺産分割協議書に署名・捺印をした 遺産分割協議に参加し、協議書に署名や捺印を行うと、相続人であることを認めたとみなされてしまいます。そのため、遺産分割協議書に署名・押印した場合は相続放棄が認められません。
兄弟姉妹のうち、1人だけが相続放棄してしまうと、他の兄弟姉妹の取り分が増えることになってしまいます。 土地の相続放棄は、兄弟姉妹が複数いても、自分だけで行うことができます。しかし、取り分が増えた兄弟姉妹は、不要な土地の取り分も増えることになってしまいます。 兄弟姉妹が2人だけの場合、自分だけが相続放棄すると、もう一人にすべての相続財産の負担がかかる可能性があります。相続放棄することが望ましい場合には、兄弟姉妹にも事前に相談しましょう。 兄弟姉妹の相続放棄について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続放棄をしていても、毎年1月1日時点で「固定資産税課税台帳」に名前が載っていると、固定資産税の納税通知が届いてしまうことがあります。 これは、「台帳課税主義」という仕組みによるもので、実際に相続していなくても、台帳に登録されている人が納税義務者とみなされるためです。 そのため、相続放棄をしていても、台帳に名前が残っていると、税金の支払いを求められる可能性があります。放置してしまうと、財産の差し押さえなどのリスクもあるので注意が必要です。 こうしたトラブルを防ぐには、相続放棄をしたことを証明する書類(相続放棄申述受理通知書)を役所に提出しましょう。もしすでに納税通知が届いてしまった場合は、固定資産税を課税した市町村(東京23区の場合は東京都)に対して、不服申立てを行うことができます。 相続放棄後の固定資産税の支払いについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続放棄は行わずに、不要な土地を手放す方法として、主に以下のようなものが考えられます。
これらの方法について、次項より解説します。
相続土地国庫帰属制度とは、相続した不要な土地を、国に引き取ってもらえる制度です。 引き取ってもらうためには、法務大臣の審査を受けて承認される必要があります。審査手数料は1万4000円かかり、承認されなくても返却されません。 承認されたら、10年分の土地管理費相当額を負担金として支払わなければなりませんが、管理の負担や固定資産税の負担等からは解放されることになります。 たとえ数十年前に相続した土地であっても、承認される可能性があるため、持て余している土地については審査を受ける価値があるでしょう。 ただし、少なくとも以下のような土地は、引き取ってもらうことができないため注意しましょう。
山奥などにあって利便性が極めて低い等の問題点がある土地は、なかなか買い手がつきません。しかし、土地の売値を下げて、格安で売り出せば売却できる可能性があります。 売却できれば固定資産税を支払う必要はなくなるので、相続放棄しなくても良いケースもあるでしょう。 売却の方法は、主に以下の2通りです。
【不動産会社に仲介してもらい、個人に売却する】 ●メリット ・高く売れる可能性がある ●デメリット ・売却までに時間がかかることが多い ・仲介手数料がかかる
【不動産会社に直接買い取ってもらう】 ●メリット ・短期間で売却できる ・仲介手数料がかからない ・建物がある土地でも解体不要であることが多い ●デメリット ・売却価格が安くなることが多い ・不動産会社の意見を押し通されやすい
自治体に寄付することで、いらない土地を手放せる場合があります。 ただし、自治体への土地の寄付は、断られることが多いです。 なぜなら、土地を寄付するという申し出は、その土地が売れないために行われる場合が多く、寄付されても用途に困るからです。 自治体から寄付を断られたら、隣地の所有者等の個人へ贈与することを検討しましょう。ただし、贈与された人は、土地の価格によっては「贈与税」を支払わなければならないので、事前に説明しましょう。 また、法人への寄付も検討しましょう。法人に寄付する場合には、寄付した人が「譲渡所得税」を支払うことになるケースがあります。これは、寄付の見返りがまったくなくても、土地を売却して現金化してから寄付したのと同じだけ課税されるため注意しましょう。 学校や公益法人等への寄付であれば譲渡所得税が非課税となるため、寄付できる法人を探してみると良いでしょう。
土地を相続放棄したいときに、弁護士に相談するメリットとして主に以下のようなものが挙げられます。
●相続放棄が妥当かについてアドバイスをしてもらえる 土地の相続が負担になってしまうケースであっても、相続放棄よりも適切な方法が考えられる場合があります。弁護士に相談すれば、様々な方法について検討し、損をしない選択が可能となります。 ●相続放棄の手続きをサポートしてもらえる 相続放棄を申し立てて却下されてしまうと、二度と申し立てられなくなるおそれがあります。弁護士に相談すれば、事前に書類等の不備がないかを確認してもらうことができます。 ●被相続人の債権者等とトラブルになったときに、引き続き相談できる 相続放棄は自分一人で手続き可能なこともありますが、それに対して不満を抱いた人からクレームがくるおそれがあります。弁護士に相談していれば、そのようなトラブルについても追加して相談しやすくなります。
相続放棄をしたいのであれば、土地の名義変更をしてはいけません。なぜなら、相続財産の名義変更は「法定単純承認」に該当してしまうからです。 「法定単純承認」とは、民法に定められている制度であり、一定の行為を行った場合に、無条件に亡くなった人の財産を相続する「単純承認」を行ったものとみなす制度です。 単純承認したとみなされる場合として、相続財産の売却や借金などの取り立て、遺産分割協議を行ったケース等が挙げられます。 この点、相続財産である土地の名義変更を行うことは法定単純承認に該当するため、名義変更を行うと相続放棄はできなくなってしまいます。
このような請求を受けるのは、以下の2つのケースが考えられますが、どちらの場合にも解体費用の負担をする必要はありません。 まず、自治体が「空き家条例(空き家の所有者に必要な措置を勧告できる旨を規定する条例)」に基づき、家屋の解体を求めるケースです。 登記記録だけでは、相続放棄をした事実はわかりませんが、相続放棄をしている場合には解体義務を負わないため、解体費用を負担する必要はありません。 次に、相続放棄をせずに相続した他の相続人が、解体費用の分担を求めてくるケースです。 相続放棄をした場合には、はじめから相続人ではなかったものとして扱われますし、相続財産に関するあらゆる権利や義務がなくなります。 そのため、このケースでも家屋の解体義務を負わないため、解体費用を負担する必要はありません。 相続放棄した家がどうなるかについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
土地と建物は異なる不動産なので、それぞれの名義が異なる場合があります。例えば、土地は父親名義で建物は長男名義である場合や、土地は長男名義で建物は父親名義である場合等が考えられます。 これらのような状況で父親が亡くなって相続放棄すると、土地や建物が競売されて他人の所有物になるおそれがあります。すると、主に以下のようなリスクが生じます。
【土地が他人の所有物になった場合】
●建物の取り壊しを求められるリスク
●借地料の支払いを求められるリスク
【建物が他人の所有物になった場合】
●立退料を受け取ること等を目的とした買い手が現れるリスク
●悪質な買い手により、土地が荒らされる等の被害を受けるリスク
共有不動産の持分であっても、相続放棄によって相続することはなくなります。このとき、相続放棄した人が共有者であれば、相続人の不存在が確定すると持分が移転されます。 ただし、相続人の不存在を確定させるためには、相続財産清算人の選任が必要となります。 相続財産清算人の選任が他の人から申し立てられない場合には、自分で選任を申し立てなければならず、そのときに選任費用に加えて予納金の納付を求められることがあります。 予納金は数十万円となることもあるので、相続放棄をする前に、相続した場合の損害等と比較して検討しましょう。
相続放棄したい土地が農地等であっても、相続放棄すれば相続できなくなることに変わりありません。ただし、農地には相続税の納税猶予が設けられているため、相続しても税負担が軽い可能性があります。 また、農地が生産緑地として指定されている場合には、市町村に買い取りの申出ができるという特別な規定もあります。 農地を相続したくないという理由であれば、本当に相続放棄するべきなのかについては、慎重に検討する必要があります。 農地の相続放棄について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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土地の相続放棄は、保存義務の問題や建物の所有権の問題も絡むため、複雑になることがあります。また、安易に相続放棄を選択すると、結果的に損をしてしまうおそれもあります。 相続財産の調査を詳細に行い、相続放棄のメリットやリスクをしっかりと把握するために、弁護士に相談するべきでしょう。 弁護士に依頼すれば、相続財産の調査や相続放棄の手続き等をまとめて任せることができます。 相続放棄は撤回できないことに加えて、一度申立てが却下されると、再び相続放棄の申立てをすることはできなくなってしまいます。そのため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に行うべきです。 ご自身で対応して問題が生じてしまう前に、まずは一度、弁護士へご相談ください。