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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
相続税は、「一部のお金持ちが亡くなったときにかけられる税金」というイメージをお持ちの方も少なくないでしょう。しかし、相続税がかからない相続財産の金額が2015年に引き下げられており、以前よりも相続税がかかる割合が上がり、全体の8%程度になっています。
そのため、何らかの対策を行わなければ、予想していなかった相続税の負担によって苦しむ事態に陥りかねません。
ここでは、相続税の概要や計算方法、税負担が軽くなる対策やそれを用いるときの注意点等について解説します。
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相続税とは、亡くなった方(被相続人)が残した財産を相続した者が支払う税金です。あらゆる財産の相続人が支払うわけではなく、相続税がかけられない金額(基礎控除額など)を上回る相続財産を相続した者が支払います。
相続税は、基本的に被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告しなければなりません。この期限に遅れると、延滞税など、余分な税金を支払うことになってしまうリスクがあるため注意しましょう。
相続税の金額は、次のような流れで計算します。
相続税の計算方法について知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
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法定相続分に応ずる取得金額に対する控除額と相続税の税率は、次の表のように定められています。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | - |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円以上 | 55% | 7200万円 |
この控除額と税率は、基礎控除額を差し引いた金額を法定相続分によって分割したときに用います。各相続人の法定相続分から控除額を差し引き、税率を乗じることによって個々の相続税の金額を算出し、全員の金額を合算して全体の相続税の金額を導き出します。
実際に相続する財産を協議等によって決めたら、その金額の割合に応じて税額を分配します。
基礎控除とは、相続財産のうち、相続税がかけられない金額のことです。
基礎控除の金額は、「3000万円+600万円×法定相続人数」という式によって求めることができます。
相続財産がいくらまでであれば相続税が無税になるかは、法定相続人数が分かれば計算できます。法定相続人数は、子供がいれば、基本的には「配偶者と子供の人数の合計」によって求められます。
基礎控除を差し引くと0円以下になる相続財産については、相続税がかかりません。以前は「5000万円+1000万円×法定相続人数」という式によって計算されていましたが、改正によって現在の式になっています。
相続財産には、相続税がかかるものだけでなく、かからないものもあります。
相続税がかからない財産について、以下で解説します。
相続税がかかる財産として、被相続人の次のような財産が挙げられます。
これらのうち、不動産のように価格が変動するものについては、相続時の時価によって金額を評価します。
なお、相続財産には遠方の土地や仮想通貨のように、見落としやすく発見が難しい財産も含まれます。相続財産の調査方法等について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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また、土地の価格は相続税路線価など(道路に面した土地の評価額)によって算定されます。一般的に、路線価は実際に土地が売買される価格よりも低額に評価される傾向があります。
みなし相続財産とは、被相続人の死亡により受け取れる財産です。
みなし相続財産は相続財産そのものではありませんが、実質的には相続財産に近い性質の財産であるため、課税における不公平を避けるために相続税がかけられます。
具体的には次のような財産です。
みなし相続財産について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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相続開始の前の3年以内に行われた贈与については、贈与額を相続財産に含めます。これは、死期の近づいた者が、自身の財産を子供などに生前贈与して相続税を逃れることを防ぐためです。
ただし、相続財産に加えられるのは、相続した者や遺言によって財産を贈られた者などの一定の者に対する生前贈与だけです。
例えば、以下のような贈与の例について考えます。
・相続開始の3年6ヶ月前に50万円
・相続開始の2年8ヶ月前に30万円
・相続開始の1年4ヶ月前に90万円
・相続開始の11ヶ月前に80万円
上記の例では、相続開始の3年6ヶ月前の贈与は相続財産になりませんが、原則、その後の贈与は全て相続財産になります。
なお、婚姻期間が20年以上の配偶者が居住するための不動産や、それを購入するための金銭を贈与した場合には、「特定贈与財産」とされて、相続開始の前の3年以内であったとしてもみなし相続財産にはなりません。
相続税がかからない非課税財産として、次のものが挙げられます。
相続財産にローンが含まれる場合等には、相続財産の金額から差し引くことができます。
このように、マイナスの財産を差し引くことを「債務控除」といいます。
控除できるマイナスの財産は、次のようなものです。
ただし、次のような債務は控除できません。
相続税を計算するときに重要となる「法定相続人」の範囲について、以下で解説します。
法定相続人について、配偶者がいれば必ず相続人になりますが、他の立場の者については相続順位が定められており、より順位の高い者がいると、順位の低い者は相続人になりません。
子供や兄弟姉妹が生きていれば相続人になったケースにおいて、被相続人よりも先に子供や兄弟姉妹が亡くなっていると、その子(孫や甥・姪)が相続人になります。これを「代襲相続」といいます。
生きていれば相続するはずであった親が亡くなっていた場合には、祖父母が代わりに相続しますが、これは「代襲相続」ではありません。
上記の内容をまとめると、下の表のようになります。
相続順位 | 相続人 | 相続人が亡くなっている場合 |
---|---|---|
必ず相続人になる | 配偶者 | - |
第1順位 | 子 (直系卑属) | 孫 |
第2順位 | 父母 (直系尊属) | 祖父母 |
第3順位 | 兄弟姉妹 (傍系血族) | 甥姪 |
法定相続人や相続順位、代襲相続について詳しく知りたい方は、下記の各記事をご覧ください。
遺言書によって法定相続人でない者に財産を贈ることを「遺贈」といいます。遺贈を受けた者についても、相続税がかかります。
遺贈を受けた者が支払う相続税は、受け取った遺産の金額が遺産全体に占める割合により、遺産全体にかかる相続税のうち、遺贈された金額に相当する相続税を支払います。ただし、遺贈を受けた者は「運よく」相続財産を受け取った者だと考えられるため、相続税の金額が2割加算される場合があります。
遺贈について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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法定相続分とは、民法によって定められた、財産を相続する割合のことです。
定められている主な相続のパターンを、次の表にまとめました。
相続人 | 相続する割合 |
---|---|
配偶者のみ | 配偶者が全て相続する |
配偶者と子 | 配偶者1/2、子(全員で)1/2 |
子のみ | 子(全員で)全て |
配偶者と親 | 配偶者2/3、親(全員で)1/3 |
親のみ | 親(全員で)全て |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹(全員で)1/4 |
兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹(全員で)全て |
法定相続分について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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また、相続財産に分けにくい財産(家や自動車等)がある場合等については、こちらの記事で解説しているため併せてご覧ください。
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相続税の税額控除とは、相続人の事情や立場などに応じて、相続税額を差し引く控除です。相続税をかける財産の金額ではなく、税額そのものから差し引くことに注意しましょう。
税額控除の種類として、下の表のものが挙げられます。
配偶者に対する相続税額の軽減 | 被相続人の配偶者が相続した金額について、法定相続分または1億6000万円以下の金額に相当する金額を差し引くことができる控除です。 |
---|---|
未成年者控除 | 相続人が相続開始時に未成年者であった場合、成人年齢に達するまでの年数により、1年につき10万円を控除できます。2022年4月1日以降の相続については、成人年齢は18歳とされています。 |
贈与税額控除 | 被相続人が死亡する前の3年以内に行われた相続人への贈与について、支払った贈与税額を相続税額から差し引くことができる控除です。 |
障害者控除 | 相続人が障害者であった場合、障害の程度によって、85歳になるまでの1年につき10万円または20万円を控除できます。 |
相次相続控除 | 相続が発生し相続税を支払った後で、10年以内に相続人が死亡したことによって次の相続が行われた場合には、相続税の負担を軽減できる控除です。 |
外国税額控除 | 日本国外にある財産を相続したことにより、外国で相続税に相当する税を課された者が、日本で負担する相続税について受けられる控除です。 |
相続税の税額控除について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
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相続税をできるだけ安くしたいのであれば、次のような方法が考えられます。
ただし、これらの方法をむやみに使ったとしても、相続税が安くならなかったり、余計な費用がかかったりするおそれがあります。
それぞれの方法について、以下で解説します。
生前贈与とは、生きているときに財産を子供等の親族に贈与することです。
生前贈与により相続財産を減らしておくことで、相続の発生により支払う相続税を減額できます。
ただし、生前贈与には贈与税がかかるおそれがあります。そこで、贈与税がかからない範囲内で贈与を受けることが有効です。年間110万円以下の贈与については、基本的に贈与税を支払う必要がないため、その範囲内で贈与を毎年受ければ、相続税と贈与税を合算したときの税負担が軽くなる可能性があります。
生命保険の非課税枠とは、受け取った生命保険金のうち、相続税の課税対象にならない金額のことです。
非課税枠の金額は「500万円×法定相続人数」によって計算できます。あくまでも「法定相続人数」によって計算するため、実際に相続財産を受け取った人数には影響されません。
なお、本来であれば、生命保険金は受取人固有の財産であり、相続財産ではありません。しかし、税法上は相続財産と同様に扱われます。このような財産を「みなし相続財産」といいます。
養子縁組をすることにより、法定相続人が増えるため相続税が安くなる可能性があります。
ただし、養子を増やせば増やすほど相続税が安くなるわけではありません。脱税を防ぐために、法定相続人に加えられる養子の数には次のような上限が設けられています。
・被相続人に実子がいる 1人まで
・被相続人に実子がいない 2人まで
墓地や仏具といった、亡くなった方を弔うためのものは「祭祀財産」と呼ばれており、基本的には相続税がかかりません。
そのため、仏壇のように高額になりやすい物を生きているうちに購入すれば、相続税が安くなる可能性があります。
ただし、この方法を用いるときには注意しなければならないこともあります。
祭祀財産を購入したときにローンを組み、そのローンが残ったままで亡くなると、相続財産からローンを差し引けません。そのため、一括購入することが有効です。
また、純金製の仏具や美術的な価値の高い仏像等、投資の対象になる物には相続税がかかるため注意しましょう。
不動産を購入しておけば、相続税が安くなる可能性があります。
これは、実際に購入した金額よりも、相続税を計算するときの不動産の評価額は低額になるのが一般的だからです。
さらに、購入した不動産を賃貸物件にすることで、不動産の評価額を抑えられるだけでなく、家賃収入を得られる可能性があります。
ただし、賃貸がうまくいかず空室になるリスクがあり、不動産の売買手数料や登録免許税などの費用がかかるというデメリットもあります。また、相続した不動産の売却を検討したときに、価格が大きく下がってしまうリスクや、買い手がいないリスクもあるため慎重に検討しましょう。
不動産を利用した相続税対策について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事を併せてご覧ください。
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相続税を計算するときには、相続財産や相続人の数等を正確に把握しなければなりません。
しかし、相続財産に加えるべきものと加えなくて良いものがあるだけでなく、様々な控除が設けられており複雑です。また、発見しづらい財産や見落としやすい財産があるため、相続財産を個人が調べるのは大変です。家庭の事情によっては、相続人を把握することに困難を伴うケースもあるでしょう。
弁護士であれば、相続財産に加えるべき財産について判断できるだけでなく、さまざまな控除についても把握しています。また、財産や相続人を調査するときに気をつけるべきこともアドバイスが可能です。
適切な納税を行うために、ぜひ弁護士にご相談ください。