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相続における金銭出資型の寄与分って?ただお金を出せば良いわけではない?!

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金銭出資型の寄与分とはどんなもの?

どのような行為によって、被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をしたのか、寄与した内容は個別の状況に応じて様々に考えられます。そのため、寄与した内容について、ある程度の類型化がなされており、そのうちの一つに「金銭出資型」という類型があります。 金銭出資型とは、被相続人が行っている事業や被相続人の生活のために、財産上の給付を行った、つまりお金を出した場合をいいます。そして、この場合に認められる寄与分を、「金銭出資型の寄与分」といいます。

<3>金銭出資型の具体例

ど金銭出資型の具体例としては、下記のようなケースが挙げられます。

  • ・被相続人が事業を始める際に資金を援助した場合
  • ・被相続人が家や土地といった不動産を買う際に資金を援助した場合
  • ・被相続人の借金返済を肩代わりした場合

なお、金銭出資型の寄与分は、被相続人個人に対して金銭の提供をした場合に認められるものであり、被相続人が経営する会社に対して出資した場合、個人と会社は別人格であるため、原則として寄与分は認められません。

他の類型と金銭出資型で違う点

他の類型のなかには、寄与分が認められるために、「継続性」や「専従性」が必要となる寄与行為があります。「継続性」とは、相当期間(実務上、1年以上とされることが多いです)にわたって寄与行為を継続していること、「専従性」とは、片手間で寄与行為を行っていたわけではなく、本来自分が従事すべきことと同様に寄与行為に携わっていることを意味します。 金銭出資型は、被相続人が行っている事業や被相続人の生活のために、財産上の給付を行った場合をいいます。これは1回の給付に対しても認められるため、金銭出資型では、「継続性」や「専従性」は必要ありません。

金銭出資型の評価方法

金銭出資型の寄与分の評価方法は、基本的には、下記のような計算式を用いて算出されます。

具体例 計算式
不動産を贈与した場合 相続開始時の不動産価額×裁量的割合
不動産を無償で貸した場合 相続開始時の賃料相当額×使用期間×裁量的割合
金銭を贈与した場合 贈与金額×貨幣価値変動率(現在の貨幣(現金)価値に換算する)×裁量的割合
不動産購入のために資金援助した場合 相続開始時の不動産価額×(出資金額÷取得当時の不動産価額)
なお、当該計算式はあくまで参考的なものであり、実際には事例ごとに寄与分の評価をしています。

金銭出資型の寄与分が認められるには?

類型を問わず、そもそも寄与分が認められるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。寄与分の主な要件としては、下記のような項目が挙げられます。

  • ・相続人であること
  • ・特別の寄与であること(金銭出資型の場合は、財産給付の内容が、相続人が被相続人に対して有する扶養義務等、通常期待される範囲を超えるものであること)
  • ・被相続人の財産の維持・増加があること
  • ・寄与と被相続人の財産の維持・増加に、因果関係があること

寄与分の要件についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。

寄与分ってなに?

金銭出資型の寄与分が認められた判例

和歌山家庭裁判所 昭和59年1月25日判決 遺産分割申立、寄与分を定める処分申立事件

この事案では、被相続人の妻と、別れた先妻との子2人が相続人となっていました。また、被相続人の積極財産(プラスの財産)のうち、宅地・居宅については、購入時に被相続人と被相続人の妻で相談し、被相続人名義としつつ、資金の90.6%相当は被相続人の妻の収入をもって提供していました。 裁判所は、この被相続人の妻の出資について、被相続人の積極財産に対し82.3%の寄与分を認めました。この寄与分の割合は、まず、「資金提供した宅地・居宅の寄与分の金額について、1440万円(相続開始時の宅地・居宅の評価額)×90.6%(出資割合)=1305万円」とし、「積極財産(宅地・居宅を含む)の合計金額1586万円に対し、被相続人の妻の寄与分の金額1305万円は、82.3%(1305万円÷1586万円)の割合になる」という評価方法によって算出されています。 夫婦で出資して購入した不動産について、妻の出資に対する金銭出資型の寄与分が認められた判例になります。

出資した分がすべて寄与分として認められる?

金銭出資型の寄与分が認められたとしても、出資した分がすべて寄与分として認められるわけではありません。基本的には、出資した分に、個別の事案に応じて裁判所が定める裁量的割合をかけた金額が、寄与分として認められることが多いです。 例として、被相続人の生活のために100万円を贈与したケースを考えてみましょう。お金を贈与した場合の金銭出資型の寄与分の計算方法は、「贈与金額×貨幣価値変動率×裁量的割合」です。このような計算を必要とするのは、過去に贈与した100万円は物価の変動等に伴い価値も変動すること、生活費として渡した100万円の現金が被相続人の遺産の形成にどの程度寄与するかは一概に決められないことから、贈与した金額相当を寄与分とするのではなく、個別具体的な事情を勘案して、寄与した金額を調整する必要があるためです。

金銭出資型の寄与分が認められない場合とは

そもそも先に説明した寄与分の主な要件を満たしていない場合には、金銭出資型の寄与分は認められません。例えば、資金援助したとしても、その金額が少額である場合には、“特別の寄与”であるとは認められず、金銭出資型の寄与分として認められないおそれがあります。

金銭出資型の寄与分が認められなかった判例

東京家庭裁判所 平成21年1月30日判決 遺産分割申立事件、寄与分を定める処分申立事件

この事案では、昭和47年から平成3年までは被相続人の妻が、平成4年からは被相続人の子6人のうちの1人(「相続人X」とします)が、被相続人に代わって実質的に会社を経営していたことを理由に、被相続人の役員報酬(給与)は被相続人に対する贈与であるとし、被相続人の妻と相続人Xに(金銭出資型の)寄与分があることを主張しました。 裁判所は、この主張に対し、被相続人の役員報酬は、会社から支給されるものであって、妻と相続人Xの各自が被相続人に対して財産給付をしたものではないと判断し、寄与分を認めませんでした。 相続人が被相続人に代わって実質的に会社を経営していた場合でも、被相続人の役員報酬は、会社から給付されるものであり、相続人から給付されたものではないため、被相続人の役員報酬に対しては金銭出資型の寄与分が認められなかった判例になります。

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こんな場合は金銭出資型の寄与分は認められる?

金銭出資型の寄与分が認められるかどうかは、具体的にどのような寄与行為をしたのか、個別の状況によって異なります。そのため、「自身の状況で果たして金銭出資型の寄与分が認められるのだろうか?」「認められたとしてもどこまでが範囲とされるのだろうか?」と悩まれる方は多いのではないでしょうか。次項より、いくつかのケースを挙げ、各々における金銭出資型の寄与分について、説明していきます。

兄弟で分け合って出資をしていた場合

兄弟で分け合って出資をしていた場合、被相続人が行っている事業や被相続人の生活のために、財産上の給付を行ったものであり、寄与分の主な要件を満たしていれば、金銭出資型の寄与分が認められるでしょう。 この場合、自身が出資した割合に応じた金額が、寄与分として認められることになります。例えば、被相続人が不動産(家や土地等)を買う際に、兄弟で分け合って資金援助をした場合、寄与分は、「相続開始時の不動産価額×(出資金額÷取得当時の不動産価額)」で計算した金額になります。 また、兄弟で分け合って出資をしていたとしても、どちらかの寄与分を優先することはありません。出資した割合に応じた金額が各々の寄与分として認められ、合計金額は遺産総額を超えない範囲内になります。

過去に何回か金銭出資をしていた場合

過去に何回か金銭出資をしており、金銭出資型の寄与分が認められた場合、出資した分を合計した金額が、寄与分として認められます。 なお、定期的に生活費を送るという仕送りをしていたような場合、該当する類型は、「金銭出資型」ではなく「扶養型」になります。扶養型とは、被相続人との関係性から通常期待されるような扶養義務の範囲を超えて、被相続人を扶養した場合をいいます。扶養義務の範囲を超えており、寄与分の主な要件を満たしていれば、扶養型の寄与分が認められることになります。例えば、複数の子(相続人)がいるなか、そのうちの1人のみが親(被相続人)に対し、ある程度を超えた金額の仕送りをしていたという状況であれば、扶養型の寄与分が認められるでしょう。

被相続人が行う資産運用の資金を出した場合

相続人が被相続人に対して運用資金を贈与し、被相続人が資産運用をしている場合、当該資産運用によって被相続人が資産を形成している場合には、当該運用資金の贈与は寄与分と認められる余地があると考えられます。例えば、親(被相続人)が株式を購入する際に、子(相続人)が購入資金を援助した場合、当該資金援助により親の資産は増加しており、親の資産形成に寄与していると考えられます。

金銭出資以外にも寄与した行為がある場合

金銭出資型のみならず、その他の類型に該当する寄与行為をしていた場合、複数の寄与について各々寄与分を主張することができます。例えば、親(被相続人)が不動産を買う際に、子(相続人)が資金の援助を行い、さらに親の療養看護も行っていた場合、金銭出資型と療養看護型の両方の寄与分を主張することができます。

「後で返す」と言われ返済のないまま被相続人が死亡した場合

「後で返す」と言われ、生前に相続人が被相続人に対しお金を貸していたものの、返済のないまま被相続人が死亡してしまった場合、金銭出資型の寄与分としては請求できません。金銭出資型の寄与分は、被相続人が行っている事業や被相続人の生活のために、財産上の給付を行ったという寄与行為に対して認められるものです。したがって、お金を貸していたのではなく、贈与していた場合は寄与分として請求できますが、お金を貸していた場合には、他の相続人に対して「貸金返還請求」を行うことで返済にあてることになります。 貸金返還請求とは、貸金という債務を含めた遺産を相続した相続人に対し、各相続人の法定相続分を限度に貸金の返済を請求するというものです。例えば、相続人のうちの1人が被相続人に対して500万円貸していた場合、法定相続分が2分の1である他の相続人に対しては、250万円を請求することができます。なお、贈与ではなく貸金であったと認められるためには、借用書や預金通帳等で、金銭が移転していることと、返還約束があったことを立証しなければなりません。

寄与分として認められるかどうかの判断は難しい

金銭出資型の寄与分が認められるかどうか、認められたとしてもどこまでの範囲が寄与分として認められるかどうかは、個別の状況によって異なることがお分かりいただけたかと思います。また、上記で説明してきたケースはあくまで一例であり、この他にも様々なケースや状況が考えられるため、金銭出資型の寄与分について個別具体的に判断していくことは難しいといえます。 ご自身の寄与行為で、そもそも金銭出資型の寄与分を主張できるかどうか、金銭出資型の寄与分をどのように主張していくべきか、判断に悩まれた方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

主張した寄与分ができる限り認められるために

寄与分を認めてもらうためには、寄与分があることを自身で主張していかなければなりません。自身で主張しなければ、寄与分を無視して遺産分割協議(遺産の分割方法について相続人間で話し合うこと)が進められてしまうためです。そして、寄与分を主張する際には、相続人全員に納得してもらえるように、寄与行為について適切に立証し、説明していくことが重要です。 寄与分の主張方法について、詳しい内容は下記の記事をご覧ください。

自身の寄与分を主張したい

金銭出資型の寄与分を主張するためのポイント

では、金銭出資型の寄与分を認めてもらうためには、どのような点に注意して主張していけば良いのでしょうか。 金銭出資型の寄与分の主張においては、相続人全員に納得してもらえるように、寄与行為について適切に立証し、説明していくことが重要です。なかでも、金銭出資型の寄与分においては継続性や専従性は必要とはされないため、財産上の給付を行ったという寄与行為の事実を立証することが特に重要です。また、寄与分の主な要件を満たしていることも主張していく必要があります。

証拠となるものは捨てずにとっておきましょう

金銭出資型の寄与分においては、財産上の給付を行ったという寄与行為の事実を立証することが特に重要になるため、立証するための証拠をきちんと保管しておくようにしましょう。有効な証拠としては、下記のようなものがあります。

  • ・(被相続人及び寄与した相続人の)預貯金通帳
  • ・クレジットカードの使用履歴
  • ・振込明細
  • ・不動産売買契約書
  • ・被相続人が受け取った領収書

金銭出資型の寄与分については、ぜひ弁護士にご相談ください

金銭出資型の寄与分が認められるためには、財産上の給付を行ったという寄与行為の事実を立証し、寄与分の主な要件を満たしていることを説明していくことが重要です。しかし、金銭出資型の寄与分が認められたとしても、基本的に、出資した全額ではなく、個別の事案に応じて裁判所が定めた割合で算出した金額が、寄与分として認められることが多いです。 これまで説明してきたとおり、金銭出資型の寄与分が認められるかどうか、認められたとしてもどこまでが範囲とされるかは、個別の状況によって異なります。ご自身の状況に応じて、適切に金銭出資型の寄与分を主張し、認めてもらうためには、弁護士に相談・依頼した方が良いでしょう。弁護士に相談・依頼することで、適切な立証と説明を代わりに行ってもらうことができ、適切な金銭出資型の寄与分を認めてもらえる可能性が高くなります。金銭出資型の寄与分について、不安や疑問を抱かれた際には、まず弁護士に相談することをご検討いただければ幸いです。