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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
再婚相手の連れ子に財産を遺したい、孫の将来のために財産を遺したい、子供がいないので養子を取って財産を引き継ぎたい等、相続のために養子をとることを考えている方もいらっしゃるでしょう。 また、既に養子縁組をした子供がいる場合には、自分の財産を実子に遺すのと同じように扱われるのかについて気になっているかもしれません。 そこで、この記事では、養子の相続権や、相続で養子をとる場合に注意するべき点等について解説します。
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相続において、養子と実子との間に取扱いの差はありません。そのため、養子にも、実子と同じ「第1順位の相続人」としての相続権が発生します。 養子と実子は、法定相続分も同じとされています。そのため、自身の財産を相続させたい者がいるときには養子縁組制度が有効です。. 養子の法定相続分について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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養子縁組には、以下の2種類があります。
どちらの方法で養子になったかによって、誰の財産を相続できるかが異なります。 それぞれの養子縁組による相続について、次項より解説します。
普通養子縁組とは一般にいう養子縁組であり、子と実親の親子関係が消えないまま養親の養子となります。普通養子縁組による養子であれば、実親と養親双方の相続人になる資格があり、養親に実子がいる場合でも、実子と同じく第1順位の相続人になります。
特別養子縁組は、養子が、実親との戸籍上の親子関係を断ち切り、養親の実子と同様に扱われる制度です。貧困や虐待等により、実親による養育が困難である場合において、養親が実の親として養子を養育します。ただし、基本的に15歳未満しか対象にならない等、普通養子縁組と比べて要件が厳しくなっています。 養親との関係では、普通養子と同様、実子と変わらない扱いを受けます。しかし、戸籍上実親との親子関係が終了するため、実親の相続人になることはできません。
養子縁組をすると、相続のときにどのようなメリットがあるのか、以下で解説します。
養子縁組をすれば、本来は遺産を相続する立場でなかった者(法定相続人でなかった人)に対して、確実に財産を譲ることができます。 遺産を相続する立場にない者に財産を遺す方法として、遺言書を作成する方法もあります。しかし、遺言書は形式のミス等により無効となるリスクがあるため、養子縁組による相続の方が確実に財産を遺せます。
基礎控除の金額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
そのため、法定相続人の人数が増えるほど非課税となる基礎控除の金額も大きくなるため節税になります。 ただし、普通養子縁組の場合、法定相続人として数えられる人数に表のような制限が設けられています。
実子がいる場合 | 1人まで |
---|---|
実子がいない場合 | 2人まで |
なお、次の場合には養子を実子として扱うため、表の人数の制限には含めません。
相続税の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
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死亡保険金や、定年前の会社員が亡くなった場合に会社から支給される死亡退職金についても、相続税が掛からない非課税枠があります。 それぞれの非課税枠は、次の式によって金額を計算します。
非課税になる金額=500万円×法定相続人の数
この枠は併用できるため、死亡保険金と死亡退職金が両方支給される場合には、どちらについても非課税枠を適用することが可能です。 ただし、この非課税枠についても、相続税の基礎控除と同様に、法定相続人として数えられる養子の人数に制限があります。制限は表のとおりです。
実子がいる場合 | 1人まで |
---|---|
実子がいない場合 | 2人まで |
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養子縁組を行う主なケースについて、以下で解説します。
孫のためにまとまった財産を遺したいけれども、生前贈与では年間110万円を超えると贈与税がかかってしまいます。そのようなとき、養子縁組をすることによって確実にまとまった財産を渡すことができます。 ただし、養子縁組をした孫に相続させると、相続税が2割加算されてしまいます。そのため、想定よりも税負担が重くなるおそれがあるため注意しましょう。
再婚相手に連れ子がいる場合、再婚するだけでは、連れ子との間に親子関係は生じません。つまり、自動的に相続人になるようなことはありません。 連れ子にも財産を譲りたい場合は、遺言により、連れ子を受取人として財産を譲る「遺贈」をするか、養子縁組により養親子関係を結び、法定相続人とするといった方法が考えられます。
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被相続人の子の配偶者は、被相続人が死亡したときに相続人にはなりません。しかし、養子縁組をすれば、子の配偶者にも相続させることが可能です。 例えば、子の配偶者による献身的な介護を受けた場合に、遺産を相続してもらうために養子縁組をすることが考えられます。 なお、被相続人の子の配偶者が長年に渡って介護を行っても、相続人ではないため、遺産を受け取ることはできません。しかし、「特別寄与料」という制度が設けられました。これは、被相続人と一定の親族関係にある者が無償で介護等を行った場合に、その貢献に応じた金額を請求できる制度です。 しかし、特別寄与料を受け取るのは容易ではなく、金額も十分でないことが多いため、遺産を渡したいのであれば養子縁組をしておくことは有益です。
相続関係にない親族や、血縁関係のない知人であっても、養子縁組をすれば法定相続人になるため、財産を譲ることができます。お互いの同意があれば養子縁組できるので、確実に遺産を与えたいのであれば有効です。 養子縁組をしなくても、遺贈をすれば遺産を与えることができます。しかし、遺言書が無効になると遺贈も無効になるので、養子縁組をする方が確実です。また、遺贈では相続税が2割増しでかかりますが、養子縁組をすれば子への相続になるため2割増しは適用されません。
相続対策として養子縁組をする場合には、いくつかのデメリットもあります。 具体的には、以下の点に注意しましょう。
民法上は、養子の数に上限はなく、何人でも養子縁組をすることができます。しかし、相続税法上は、人数に制限があります。 これは、相続人が増えると相続税を減税することができることから、養子縁組制度を利用した、行き過ぎた節税対策がなされるおそれがあるからです。 さらに、相続税を抑えることだけを目的として養子縁組をしたとみなされれば、養子を法定相続人の数に加えない措置を受けるおそれがあります。少なくとも、養子も遺産を相続しているのが望ましいでしょう。
孫と養子縁組をした場合には、基本的に相続税が2割加算されます。これは、通常のケースにおいて、親から子への相続と、子から孫への相続という2回の相続によって相続税を支払うはずだったのに、孫を養子にして相続を1回に減らし、相続税の支払いを減らそうとすることを防止するための規定です。 また、相続人が配偶者または親子などでない場合には、その相続人の相続税は2割加算されます。これは、相続する可能性が低かった者については、相続税を重くしても問題ないと考えられるからです。
養子縁組をするときは、事前に、被相続人と実子関係等にある人の了承を得るのが望ましいです。なぜなら、養子縁組をすると、養子は養親の法定相続人となり、実子と同等の法定相続分を取得する権利を得るからです。 事前に話もなく、相続が開始されたときに養子縁組の事実を知ったとしたら、実子にとっては青天の霹靂です。養子が増えると、一人当たりの相続財産が減ることになるため、取り分が減ることに反発する実子もいるでしょう。 遺産の取り分等を巡ってトラブルになるリスクがあるため、事前に相談して了解を得ておくようにしましょう。
養親と養子双方の合意がある場合には、離縁する、つまり、養親子関係を解消することが可能ですが、どちらか一方の同意が得られない場合には、裁判所での調停、審判という手続きをとることになります。 これらの手続きにおいて離縁が認められるには、離婚と同じように、養子縁組を継続しがたい重大な事由(暴行や虐待を受けた、重大な侮辱を受けた、多額の金銭を浪費された等)が必要なため、容易ではありません。
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代襲相続とは、被相続人よりも先に相続人(=被代襲者)が亡くなり、相続人の子(=代襲相続人)が相続権を受け継ぐことです。 養子の子供が代襲相続人になるかは、生まれたのが養子縁組の前か後かによって、次のように結論が異なります。
・養子の子が養子縁組の後に生まれた場合→養子の子は代襲相続人になる ・養子の子が養子縁組の前に生まれた場合→養子の子は代襲相続人にならない
代襲相続については、以下の記事で詳しく説明しているので併せてご覧ください。
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孫を養子にしたときに、被相続人の子が被相続人よりも先に死亡した場合には、孫は養子と代襲相続人の立場を兼ねることになります。 その結果として、被相続人の養子としての相続と、代襲相続人としての相続をすることによって、2人分相続することになります。
離縁とは、養子縁組の解消をするための手続きであり、死後離縁とは、養親か養子のどちらかが亡くなった後で離縁することです。 養親が死亡した後に離縁をするケースでは、養親側の親族とも親族関係が消滅してしまうため、扶養義務もなくなってしまいます。 しかし、相続権があるかどうかについては、養親が死亡した時点で相続人であったかが基準となります。そのため、養親が亡くなってしまった後に死後離縁をしたとしても、養子だった者の相続権はなくなりません。 なお、死後離縁を行おうとするためには家庭裁判所に申立てをして、許可を受けなければなりません。
相続対策として養子縁組を行うことには以下のようなデメリットもあります。
養子縁組は、相続税対策にもなりますが、法律上の親子関係を新しく作るという身分関係に変動をもたらす重大な行為です。離縁も簡単にはできませんから、安易な養子縁組は、当事者の将来におけるトラブルの種となりかねません。 また、養子縁組によって子供が増えることで、実子の遺産の取り分が減るために、不満を持つ者が現れるおそれがあります。親族関係の悪化を防止するためにも、養子縁組をする際には、あらかじめ専門家である弁護士に相談しておくと良いでしょう。 養子縁組をお考えの方は、相続に関することだけでなく、その他の疑問点につきましても、まずはお気軽にご相談ください。