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遺産相続コラム
どうしてこのようなことになってしまうのか腹が立って仕方がありません。 父が長い闘病生活の末に亡くなりました。私たち兄弟は豊かではなかったけれど、働き者の父と父を支える優しい母とに愛情いっぱいに育てられ、それぞれに独立していました。 兄弟のどちらも家業を継がなかったことは申し訳ない気持ちはあったのですが、父も母も自分たちが散々苦労してきた仕事だから、無理に私たち兄弟に継ぐことを勧めず好きな道に進ませてくれたのです。 優しかった父が病に倒れ、母が3年もの間家業を続けながらずっと父の看病を続けました。もちろん私たち兄弟も出来る限り母を助け、母が一人で背負わなければならない役割を少しでも軽くしたいとみんなで力を合わせてきました。でも、父が力尽きて命を全うしたとき、悲しみと同時に母への深い感謝と母をねぎらう気持ちが私たち兄弟に溢れていました。 父の残したわずかばかりの財産と家業のための不動産はずっと苦労してきた母に全て残そうと、私たち兄弟は相続放棄することにしたんです。 ところがそんな私たちの母への思いが思わぬ形になってしまったことに驚きと同時に怒りがこみ上げてきました。ずっと父を支え続けてきた母に遺産全てが渡るはずだと思っていたのに、あろう事か私たち兄弟が相続を放棄したことで家に寄り付くこともなかった父の弟、つまり私たちの叔父に遺産を渡さなければならなくなったというのです。 父の見舞いはもちろん自分の親である私たちの祖父母の世話さえ一切かかわろうとしなかったような人間に、何故大切な父の財産を分けなければならないのでしょうか。こんなことなら相続放棄などせず、私たちが相続するべきだったのかと今更ながら悔やまれて仕方がありません。
この場合、なぜ父の兄弟が相続人になるのかが問題です。父の兄弟には本当に相続権があるのでしょうか? これは、遺産相続の法定相続人の問題と関連します。遺産相続の場面では、法定相続人が相続をすることとなっています。被相続人に配偶者がいる場合には、配偶者は常に法定相続人です。その他の相続人には順位があり、第1順位の相続人は子供(直径卑属)、第2順位の相続人は親(直径尊属)、第3順位の相続人は兄弟姉妹となっています。 この事案では、被相続人に妻と子供がいたので当初は妻と子供が相続をするはずでした。しかし、子供たちが相続放棄をしてしまったので問題が起こっています。 相続放棄をすると、その人はもともと相続人ではなかったことになってしまいますので、次の順位の人に相続権が移ります。そうなると、子供たちが相続放棄をしたことによって、被相続人の親(祖父母)に相続権が移るはずですが、親もいないことから兄弟姉妹である叔父に相続権が移ってしまったのです。 このように、やみくもに相続放棄をすると問題が起こることがあるので、相続放棄をするときには次順位の相続人が誰になっているかまでしっかり確認してから行う必要があります。
兄弟姉妹が法定相続人になるケース今回のケースでは、子供たちが相続放棄してしまったため次順位以降の人に相続権が移りました。具体的には、父の親(祖父母)に移るはずでしたが、祖父母が既に亡くなっていたので兄弟姉妹である叔父に移っています。 ここでもし父の両親が生きていたら、事情は違いました。その場合、父の両親が第2順位の法定相続人になるので、ご両親(相談者様から見たら祖父母)が相続することができたはずだからです。祖父母が生きていたら遺産を母親と祖父母が相続することになっていました。その場合の相続割合は、妻(母)が3分の2、親(祖父母)が3分の1となります。叔父の相続権はありません。 遺産相続の場面では、知識のないまま自己判断で行動すると思わぬ不利益を受けるおそれがあります。正しい対処を行うためには、弁護士に相談するのが良いでしょう。