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弁護士と学ぶ相続Q&A
相談者
先日、私の父が亡くなりました。母はすでに亡くなっていて、相続人は、私と妹と弟の3人です。資産形成に活動的だった父は、たくさんの財産があったと思うのですが、私たちがどのような財産を相続することになるのかよくわからず困っています…。
弁護士
何が相続の対象となるかについて、民法が定める原則は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」(民法896条本文)というものです。
お父様の土地、建物、自動車などの所有権をはじめとする物権はもちろん相続財産の対象となりますし、預貯金や貸付金などの金銭債権も相続財産の対象となります。権利だけでなく、お父様の借金などの債務も相続の対象となるのでご注意ください。
相談者
では、相続の対象とならない財産は全くないのですか?
弁護士
実はそうとも限りません。
まず、系譜、祭具及び墳墓などの祭祀財産の所有権は、相続の対象となりません(民法897条1項)
また、民法は、「被相続人の一身に専属したもの」については、相続の対象とならないとしています(民法896条但し書)。
相談者
「いっしんにせんぞくしたもの」ですか…?
弁護士
わかりにくい言葉ですよね。要は、被相続人以外の者がその権利や義務を有しているのは適当でない権利や義務のことをいいます。たとえば、著名な音楽演奏家が予定されていたコンサートの前に亡くなってしまったとしましょう。そのとき、コンサートで演奏をする債務は、その著名な音楽演奏家でなければ、債務の履行をすることができませんから「被相続人の一身に専属したもの」として、相続の対象にはなりません。
その他の例として、使用貸借契約における借主の地位、雇用契約における使用者・労働者の地位、委任契約における委任者・受任者の地位などが挙げられます。
相談者
使用貸借契約の借主の地位は、相続されないのですか…。
今私たちが住んでいるマンションは父が賃借しているものなのですが、これはどうなるのでしょうか。出ていかなければならないなんてことにならければよいのですが…。
弁護士
無償で財産の貸し借りをしている使用貸借契約の場合と異なり、賃貸借契約上の賃借人の地位(賃借権)は、相続の対象となりますから、ご安心ください。
相談者
よかったです。父は、会社を設立して自ら代表取締役として仕事をしていたのですが、代表取締役の地位や会社の財産はどうなるのですか。
弁護士
会社と取締役との間の契約は、委任契約の一種です(会社法330条)。そして、委任契約における委任者・受任者の地位は、先ほど申し上げましたとおり、一身専属権として、死亡によって終了します(民法653条1号)から、取締役の地位は、相続の対象にはなりません。
また、会社名義の財産は、会社の所有物であってお父様の所有物ではありませんから、相続の対象とはなりません。
もっとも、もし仮に、お父様が、個人事業主として事業をされていたのであれば、その事業にかかわる権利義務はお父様に帰属しているでしょうから、原則として、相続の対象となるでしょう。
相談者
父は、会社の株主でもあったのですが…。
弁護士
株式会社の株主の地位は、相続の対象となりますよ。
相談者
そういえば、父は、父の会社が部品の仕入れ先に対して負う債務について継続的に保証する「根保証」というのをしたと言っていたのですが…。
弁護士
保証契約については、通常の保証債務が相続されることに争いはありません。しかし、「限度額」および「期間の定めのない」根保証契約は、特段の事情のない限り、保証人の死後生じた債務について、相続人は保証債務を負担するものではないとされています。
もっとも、「限度額」または「期間に制限」があれば、相続されると考えられるので注意が必要です。
相談者
そうですか…この根保証を相続するとなると極めて負担が大きいので、限度額または期間の制限があるかどうか、調べておきたいと思います。
それから、父は、弟を受取人として、生命保険をかけていたのですが、この保険金は相続の対象となるのでしょうか?
弁護士
生命保険金請求権は、保険契約から生じる受取人固有の権利であって、被相続人の財産に属するものではありませんから、相続の対象にもなりません。
もっとも、相続人間の公平の観点から、少なくとも貯蓄型の生命保険について、一定の部分は、被相続人からの遺贈があったものとして、特別受益や遺留分において考慮するべきであるとする考え方も有力となっています。
相談者
何が相続財産の対象となるのかの判断は難しいのですね。
弁護士
そうですね。相続の対象となる財産を確定させることは、相続放棄をするかどうかの判断や遺産分割協議などの手続においても重要な前提となります。弁護士にご相談頂ければ、的確かつ迅速なアドバイスをさせて頂きますので、お気軽にご相談ください。
また、相続人が複数いる場合、このように相続財産の範囲が問題になるケースがあります。お悩みの方は、ぜひともご相談いただき、ご安心いただければと思います。
相続Q&Aは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。
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