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弁護士と学ぶ相続Q&A
相談者
私には妻の他、血縁上は2人の息子がいます。
ただ、47歳になる次男とは、同人が高校在学中の頃から事実上親子の縁を切っており、死後とはいえ、私の財産を分け与えるなどとんでもないことだと考えています。
次男を相続人から除外する方法はないのでしょうか。
弁護士
被相続人の生前の意思に基づいて相続人資格をはく奪する方法として、『廃除』という制度があります。
相談者
廃除ですか?どのような場合に用いることができるのでしょうか。
弁護士
廃除は、一定の範囲の『相続人となるべき者』すなわち『推定相続人』が、
①被相続人に対して虐待をした場合
②被相続人に対して重大な侮辱を加えた場合
③相続人となるべき者にその他著しい非行があった場合
のいずれかの場合に行うことができるとされています。
次男の方にいずれかの事由は認められそうでしょうか。
相談者
①の『虐待』というのは暴力で、②の『重大な侮辱』というのは私を馬鹿にしたということですよね?
なにせ次男とは高校以来接触がないもので、①や②に当てはまりそうな出来事は思い当たらないのですが・・・。
弁護士
裁判例上、ここでいう『虐待』や『重大な侮辱』というのは、『被相続人に対して精神的苦痛を与え、又はその名誉を毀損する行為であって、これにより被相続人と当該相続人との家族的共同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものを含む』とされており、必ずしも直接的な暴力や暴言は必要ないものと考えられます。
例えば、小学校以降の在学中に非行を繰り返してきた被相続人の次女が、家族の反対を押し切って暴力団の一員であった男性と婚姻したうえ、父母に反対されていることを知りながら披露宴の招待状に招待者として父の名を印刷して父母の知人等に送付した行為が『重大な侮辱』にあたるとした裁判例があります。
相談者
そうですか!それなら、次男を推定相続人から廃除することができそうです!
ちなみに、③の『著しい非行』とはどんな行為をいうのですか?
弁護士
裁判例によれば、推定相続人が酒に溺れた場合、多額の借金を負った場合、また、家族の扶養あるいは介護を行わない等の事情により、被相続人に多大な迷惑をかけた事案において、『著しい非行』に基づく廃除請求を認めています。
相談者
なるほど。次男についてはこちらにも当てはまりそうな気がします。
ところで、廃除を行うためには具体的にはどのような手続きを取ればいいのでしょうか。
弁護士
まずは、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に推定相続人の廃除を求める調停又は審判を申立てます。調停の場合には廃除したい相手方本人と話し合って合意を形成し、廃除する旨記載のある調停調書を作成してもらいます。
審判の場合には裁判官に廃除事由が存在することを認めてもらい、こちらの言い分が認められた証である審判書を獲得します。
その後、家庭裁判所の手続で得られた調停調書又は審判書の謄本を添えて、『推定相続人廃除届』を所在地である市区町村長に届け出ることで、推定相続人を排除することができます。
なお、審判に基づく場合には、審判確定後、10日以内に届け出を行うこととされていますが、判例上、これは確認的な行為に過ぎず、審判が確定すれば廃除の効力が生じることとされています。
相談者
なんか大変そうですね…。まだまだ元気なつもりですが、いつ何が起きても不思議ではない年齢になっているので、生前に全ての手続を終えることができるか心配です。
弁護士
推定相続人の廃除は、遺言によっても行うことができます。
遺言で廃除を行う場合には、遺言執行者が上記の手続きを行うことになります。審判まで進めば相応の時間がかかる一方、死期が近づいてから初めて廃除を検討される方もいるため、そのような場合でも被相続人の廃除の意向を反映できるようになっているんですね。
相談者
そうなんですね。じゃあ、まずはちょうどつくろうと思っていた遺言書に、次男を相続人から廃除すると記載しておくことにします。
ただ、先生。万が一、次男を廃除した後に、次男がこれまでの親不孝を詫びてきて、これからは親孝行をしたい、なんて言ってきたら、もう取り返しがつかないですよね…?
弁護士
安心してください。廃除は、廃除の届出後であっても、被相続人からの請求によりいつでも取り消すことができます。
この場合も家庭裁判所に申立てを行うか、遺言によっても取り消すことができるとされています。
相談者
そうなんですね。安心しました。なんかすいません、次男を相続人から廃除したいという気持ちは間違いないのに、親心ってのは本当どうしようもないですね。
弁護士
いえいえ。そのような心変わりがあるからこそ、民法も廃除後の取り消しを認めているのではないでしょうか。
なお、先に述べたとおり、廃除を請求するための要件である『虐待』『重大な侮辱』あるいは『著しい非行』があるといえるかについては、多分に法的な評価が必要になる行為だと考えます。
その他の手続についても自分で行えば大変だと思いますので、専門家である我々弁護士にご相談ください。
相続Q&Aは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。
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