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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
亡くなった親族の遺品整理をしていると、遺言書が出てくることがあります。 しかし、内容が気になったとしても、遺言書の種類によっては、その場ですぐに開封してはいけません。まずは検認の手続きをする必要があります。 自宅で見つかった遺言書を隠したり、検認なしで開封したりするとペナルティが発生することがあるので注意しましょう。 この記事では、検認を受けるべき遺言書の種類や、検認を受けなかったときの影響、手続きの流れ等について解説します。
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遺言書の検認とは、遺言書に関する争いをできるだけ防ぐために、その存在や現状を確認する手続きです。 手続きは家庭裁判所で行われ、遺言書の状態(形状、加除訂正の状態、作成日、署名、押印等)が確認されます。 主な検認の目的は以下のとおりです。 ●相続人全員に対して遺言書の存在と内容を知らせる ●検認以降、遺言書が偽造・変造されるのを防止する ただし、遺言書の種類によっては検認が不要な場合もあります。また、検認は効力を証明する手続きではないため、検認を受けた遺言書が有効であることは保証されません。
遺言書は「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の3種類に分けられます。 検認が必要となるのは、法務局以外の場所で保管されていた自筆証書遺言と秘密証書遺言です。 公正証書遺言は、法的な有効性が公証人によって確認されているため検認の必要がありません。 また、2020年7月には自筆証書遺言書保管制度が開始されており、この制度を利用して法務局に保管された自筆証書遺言については検認が必要なくなります。 これらのことを表にまとめたのでご覧ください。
遺言書の種類 | 検認 | |
---|---|---|
自筆証書遺言 | 法務局で保管 | 不要 |
法務局以外の場所で保管 | 必要 | |
秘密証書遺言 | 必要 | |
公正証書遺言 | 不要 |
遺言書について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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遺言書の検認をしないと、無用なトラブルを招くリスクや、過料の制裁を受けるリスクが生じます。 主なリスクとして、具体的には以下のようなものが挙げられます。
また、もしも検認を受けなかったために遺言書の隠匿や偽造、改ざんを疑われると、最終的に相続権を失ってしまうリスクも否定できません。
遺言書の検認を行わなければ、相続手続きを進められなくなります。これは、相続手続きでは「検認済証明書」が必要となるからです。 検認を終えると検認済証明書が発行されます。そして、主に以下の手続きにおいて、検認済証明書を添付した遺言書の提出を求められるため、欠かせない書類だといえます。
遺言書の検認手続きは、以下のような流れで進められます。
上記の検認手続きについて、以下で解説します。
検認の申立人になれる人と申立先は以下のとおりです。
【申立人になれる人】
●遺言書を保管していた者
●遺言書を発見した相続人
【申立先】
遺言者が最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所
遺言者の最後の住所地は、住民票の除籍や戸籍の附票といった書類で確認することができます。 遺言者の最後の住所地が判明したら、裁判所のWebサイトから管轄する家庭裁判所を調べましょう。
管轄裁判所を調べたい方はこちら(裁判所HP)検認を申し立てる際には、まず相続人を特定して必要書類を集めます。申立ての際に申立人が用意しなければならない書類は、以下のとおりです。
相続人に遺言者の父母または兄弟姉妹がいる場合や、相続人が配偶者のみの場合等は、追加で用意しなければならない書類があります。 他にも、戸籍謄本などを代理人が取得する場合には委任状が必要です。 なお、遺言書の検認の申立書の書き方についても参考例があるので、詳しくは裁判所のWebサイトをご確認ください。
遺言書の検認(裁判所)また、相続人が誰であるかを確認したい方は、以下の記事を併せてご覧ください。
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検認を申し立てる際には、主に以下の費用がかかります。
提出した書類に不備がなければ、申立てから1週間~1ヶ月程度で、家庭裁判所から「検認期日通知書」という書面が相続人全員に郵送されます。 案内には出欠確認の回答書が同封されているので、期日までに家庭裁判所に届くように返送しましょう。 検認の期日には、検認を申し立てた者以外の相続人は出席する義務がありません。
検認期日には、申立人は遺言書と自身の印鑑を持参します。 遺言書は、申立人や相続人の立会いのもと裁判官によって開封され、状態を確認されます。 検認では、裁判官が申立人や相続人に対して、遺言書の筆跡は遺言者本人のものか、押されている印影は遺言者本人の印鑑によるものか等を質問します。 検認自体は5~15分で終了し、調査された内容は検認調書にまとめられ、記録として残ります。 検認に立ち会わなかった相続人には、家庭裁判所から検認が実施されたことが通知されます。
検認が終わったら、検認済証明書の申請を行います。 申請後は、遺言書に検認済証明書がついた状態で申立人へ返却されます。検認済証明書がついていないと、不動産の登記や預貯金口座の名義変更といった遺言を執行することができません。 遺言書は、検認の後で申立人へ直接返還されます。このとき、他の出席者には遺言書のコピーは渡されません。また、出席者にも欠席者にも、コピーが郵送されることはないので、必要があれば当日に出席し、コピーを取らせてもらいましょう。 なお、検認済証明書の申請には、遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。
検認を受けることについて、法的な期限はありません。ただし、相続手続きには期限が設けられているものが多いことから、実質的な期限はあると考えられます。 相続放棄等の手続きは相続の開始を知った時から3ヶ月以内に、相続税の申告は10ヶ月以内に行わなければならないため、できる限り早めに検認の手続きを行うべきでしょう。 しかし、検認を申し立ててから家庭裁判所で検認が行われるまで、1ヶ月~2ヶ月程度かかることが多いです。 そのため、検認の手続きは、遺言書の保管者が遺言者の死亡を知った後、または相続人が遺言書を発見した後に、なるべく遅れないように進めなければなりません。
検認が終わるまでは、遺言を執行することはできません。 検認手続きを待っている期間中には、たとえ遺言書に従って遺産を分けたとしても、検認済証明書がないため財産を移すための手続きを進められません。 なお、遺言書がある場合には、相続人全員が合意しない限り遺産分割協議(相続人間の話合い)によって遺産の分け方を決めることはできないため、基本的には遺言書の内容に従う必要があります。
遺言書の検認には、いくつかの注意するべき点があります。 主な注意点について、次項より解説します。
検認は、その遺言書が法的に有効か無効かを判断するものではありません。 また、検認をしたことで無効な遺言書が有効になるわけでもありません。 遺言書が偽造されたと疑っている場合等、遺言書の無効を主張したいのであれば「遺言無効確認訴訟」などによって遺言の効力を争う必要があります。 遺言無効確認訴訟について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺言書が複数ある場合には、すべての遺言書について検認を受けなければなりません。そして、作成されたのが早い方から順に整理して、基本的には最も新しい遺言書の内容が有効となります。 なお、内容が矛盾しない部分については、古い遺言書が有効となるケースもあります。例えば、特定の不動産や自動車など、前に作成された遺言書でのみ言及されている相続財産がある場合等です。
遺言書の検認を申し立てた人だけは、必ず手続きに立ち会う必要があります。 他の相続人については、検認に立ち会うことは義務ではないため欠席できます。立ち会わなかったことを理由に刑罰を受けることはありませんし、相続で不利になることもありません。 検認を欠席した相続人には、家庭裁判所から検認が実施されたことが通知されます。このとき、遺言書の内容を知るには、家庭裁判所に検認調書の謄本を交付申請する必要があります。 なお、代理人に依頼して、検認に立ち会ってもらうことは可能です。行政書士や司法書士は検認に立ち会う代理人にはなれないため、弁護士に依頼するようにしましょう。
検認手続きを弁護士に依頼すると、主に以下のようなメリットがあります。
検認の申立費用や書類を収集するためにかかる実費の他に、弁護士への依頼料は15万円程度かかります。しかし、手続きの負担がかからないようにして、なるべく早く他の相続人を説得するためにも、検認手続きから弁護士に依頼するのはメリットが大きいといえるでしょう。
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誤って遺言書を開封してしまったとしても、検認は必要になります。 その場合も家庭裁判所に事情を説明し、開封したままの状態で提出しましょう。焦って封印しなおしたり、封筒を破棄したりといったことは絶対に避けてください。 なぜなら、これらの行為が明らかになると、遺言書そのものには手を加えていなくても、不正行為とみなされて相続権を失うリスクがあるからです。
封印されていない自筆証書遺言は、その状態で家庭裁判所に提出し、検認を受ける必要があります。 自宅等で保管されていた自筆証書遺言のなかには、封筒に入っていないものや、入っていても封印がされていないものが時々あります。そのような遺言書であっても、法律で定められた形式には反していないので有効です。
遺産分割協議で相続財産を分配する場合であっても、遺言書の検認は必要です。なぜなら、検認しないと5万円以下の過料に処せられるおそれがあるからです。 遺言書があっても遺産分割協議で相続分を決めようと考えている場合、うっかり検認を忘れてしまうこともあり得るため注意しましょう。
検認の申立てに必要な書類を揃えるのは煩雑で手間がかかるので、弁護士に相談することをおすすめします。 検認は、相続手続きにおいて大変重要な意味を持ちます。しかし、検認のためには戸籍謄本の収集等が必要です。弁護士は、必要書類を準備して手続きを行うだけでなく、検認に同席することもできます。 また、検認が終わっても、相続が順調に進むとは限りません。遺言書の内容を実現するための手続きを行う者として弁護士を指定していただければ、相続手続きを確実に行うことが可能です。 このように、弁護士は相続に関して一貫したサポートを行うことができるため、お困りのことがあればぜひご相談ください。