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節税目的の養子縁組の効力【最高裁平成29年1月31日第三小法廷判決】

(民集71巻1号48頁、判時2332号13頁、判タ1435号95頁)

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事案の概要

被相続人であるAが、税理士からの助言により節税目的で長男Bの子であるYと養子縁組をしたところ、A死亡後、他の相続人であるX1、X2(以下、「Xら」という)が、当該養子縁組の無効確認を求めた事案である。第1審は、Xらの請求を棄却したのに対し、第2審は節税目的の養子縁組を無効として判断が分かれたが、最高裁は第1審を支持し、当該養子縁組を有効とした。なお、下級審レベルでは、節税目的の養子縁組の効力がしばしが争われていたが、本件は、同養子縁組の効力について初めて判断した最高裁判例である。

事実経過

  • 家族構成

    被相続人Aには、妻Dとの間に3人の子(X1、X2、B)がおり、被相続人Aは、BとBの妻Cとの間の子Yと養子縁組をした。なお、DはAとYとの間の養子縁組前に死別している。

  • 事実経緯

    平成24年4月頃
    被相続人Aは、税理士から、長男Bの子であるY(Aの孫)と養子縁組をすれば、基礎控除額が増えること等による節税効果が得られる旨の助言を受けた。
    平成24年5月頃
    世田谷区長に、Aを養親、Yを養子とする養子縁組届出所を作成・提出。
    平成24年10月頃
    Aとその長男Bとの間が険悪になり、Aは一方的にYとの離縁の届けを提出。Aの一切の財産をXらに相続させる旨の遺言書作成。
    平成25年2月
    Y(法定代理人B・C)は、離縁無効確認訴訟を提起。Aはこれに対抗し、養子縁組無効確認の反訴提起。
    平成25年4月
    A死亡により、上記反訴は終了。離縁無効確認訴訟については、検察官が受継。
    平成26年3月
    離縁の無効を確認する判決が確定。

下級審判決

第1審(東京家裁平成27年9月16日判決、民集〔参〕71巻1号52頁)

-本件縁組は有効-縁組当時、税理士からの助言により、節税目的で本件養子縁組がなされたとしても、Aが縁組意思・届出意思を欠いていたと認めるに足りる証拠はない。節税目的を有していたことは、Aの縁組意思・届出意思と両立する。

第2審(東京高裁平成28年2月3日判決、民集〔参〕71巻1号58頁)

-本件縁組は無効-本件縁組は、専ら税理士の勧めによる節税目的で、相続人の利益のためになされたに過ぎず、Aには、Yとの間に養子関係を真実創設する意思がなかったというべき。→「当事者に縁組をする意思がないとき」(民法802条1号)に該当する。

最高裁判決

破棄自判(全員一致)

判決理由

  • ・相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。
  • ・したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について、民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。
  • ・本件の事実関係の下において、本件養子縁組について、縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく、「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない(当てはめ)

考察

本最高裁判決の意義と射程範囲

  • ・節税目的の養子縁組を有効とした最初の最高裁判例。
  • ・節税目的を有する養子縁組が無効となり得る場合がある余地を残す。
  • ・親子関係を創設することが主たる目的・動機である必要はなく、節税等が主たる動機であっても、親子関係を形成する意思とは両立する。
  • ・射程範囲として、養子縁組以外の身分行為にも波及する可能性あり。
  • ・残された問題として、親子関係を形成する意思がないと認められるような事情とはどのような場合か?
  •  

縁組効果に関する学説

実質的意思説(通説)
縁組意思とは、習俗的標準に照らして親子と認められるような関係を創設する意思をいい、少なくとも親子としての精神的つながりを作る意思が必要。
形式的意思説
縁組意思は、養子縁組の届出意思に関する合致があれば足り、実質的な親子関係を築く意思は扶養である。
法律的定型説・法的意思説(折衷説)
養子縁組を含む身分行為意思は、当事者の民法上の身分関係の定型に向けられた効果意思である。たとえば、婚姻の場合、精神的・経済的・性的共同体の形成が定型(但し、社会の変化により、この定型性は変わりうる)。養子縁組の場合、扶養、相続、氏が定型か?

私見

本件最高裁判例と学説との関係について

形式的意思説は、節税目的等の仮装された縁組の効力を肯定するのに対し、実質的意思説は、そのような仮想的身分行為の効力を否定するのに適した理論構成であると考えられてきたようである。 しかしながら、節税目的と親子関係形成の意思が当然に排他的な意思ではなく、両立しうると考えるならば、実質的意思説によっても、節税目的を有する養子縁組を論理必然的に無効とすることはできない。本件最高裁判決も、実質的意思説に立ちながら、節税目的の縁組を有効としたものと解される。 そもそも、婚姻であれ、養子縁組であれ、身分関係を創設する意思以外に他の目的・動機を伴うことは少なくない。したがって、節税目的という、親子関係を形成する意思と異なる目的を有していたからといって、縁組意思がなくなるということはできないから、この最高裁判決を支持できる。 もっとも、親子関係を形成する意思の欠缺を証明することが一般的に困難であることに加え、夫婦・親子などの身分関係のあり方が多様化している現代社会において、縁組意思がないことを明らかにすることは極めて難しい。そうすると、この最高裁判例は、実質的意思説に依拠しながらも、その機能は限りなく形式的意思説に近い。同様の議論は、法律的定型説にも当てはまる。というのも、今日の多様化した身分関係に照らすと、その定型性を緩やかに解さざるを得ず、その結果、意思の欠缺を認めることが困難となるからである。 ところで、本件最高裁判決が、「専ら相続税の節税のために、養子縁組をする場合であっても…」としたのは勇み足ではなかろうか。専らという概念は、それ以外の意思・目的を有していないと認定する場合に適した表現だからである。むしろ、論旨からすれば、「たとえ、主たる目的が節税目的であったとしても…」としたほうがよかったと思われる。

節税目的の養子縁組が無効となり得る場合について

本件においても、訴訟活動次第では、縁組意思がなかったと最高裁が判断した可能性はあるのか。Xらの訴訟活動の中心は、「目的は相続性の節税にあった。」→「したがって、縁組意思はなかった」という論法である。しかしながら、両者が両立するという見解にたてば、節税目的の存在をいくら立証しても、縁組意思の不存在に直結しない。 両者が両立する以上、親子関係を形成する縁組意思がなかったことを推認させる間接事実を積み上げることに注力するべきであろう。例えば、縁組後においても、AがYと同居してこれを扶養しているとか、YにAを父と呼ばせるなどの実体がなく、Bが父親としてこれを養育している事実が継続されていることは、縁組意思不存在を推認させる一助となり得る。 もっとも、学説にあるように、縁組意思を「精神的なつながり」でも足りるとするならば、いかなる間接事実を積み上げようと、縁組意思の不存在を証明することは不可能に近い。最高裁が、この点をめぐって、縁組意思の実質として、どのような事情を判断要素とするのか注目したい。

射程範囲について

何らかの他の目的が身分行為の形成に仮装されることは、当事者が節税目的を有している場合に限られない。古くは、兵役逃れのための養子縁組(大審院明治39年11月27日)、芸娼妓稼業に従事させるための養子縁組(大正11年9月2日)、実家の家格引き上げのための縁組(昭和15年12月6日)があるが、いずれも縁組意思がないとして無効とされている。 今日では、外国人女性が配偶者ビザの取得目的で、日本人男性と婚姻する偽装結婚や、借り入れのブラックリストから回避する目的で、養子縁組を利用して氏を変更する場合などがある。 この問題を解くには、法的定型説の着眼点が参考になる。いくら婚姻関係が多様化しているとはいえ、ビザ取得のために戸籍が取引され、夫婦としての実体が皆無であれば、婚姻意思がないとすることができる。しかしながら、親子関係の形は婚姻関係以上に緩やかであるから、ブラックリストから逃れる目的であっても、縁組意思がないとするのは困難だと思われる。