メニュー
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
被相続人が若くして亡くなった場合等では、未成年者が相続人となることがあります。未成年者は自分で遺産分割協議を行うことができないため、代理人が必要になります。
人生の様々な場面で、未成年者の代理人は両親になるケースが多いですが、相続については親が代理人になれない状況が少なくありません。
そこで、本記事では、相続人に未成年者がいるときに必要となる代理人について、親が代理人になれないケース等も含めて解説します。
来所法律相談30分無料・24時間予約受付・年中無休・通話無料
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
未成年者とは「18歳未満の者」のことであり、基本的に自分だけで有効な契約ができないため、遺産分割協議に参加することができません。そのため、成人するまで待つか、代理人に参加してもらう必要があります。
なお、相続する権利は胎児にもあります。
代理人には、法定代理人と特別代理人が存在します。それぞれ、以下のような違いがあります。
法定代理人 | 法律によって自動的に代理人になった者 |
---|---|
特別代理人 | 通常の代理人が代理できないときに、代わりに選任される者 |
通常の契約であれば、父母等の親権者が法定代理人になります。また、遺産分割協議についても、本来であれば法定代理人が参加します。
ところが、相続については「親権者も相続人である」というケースが少なくありません。このケースでは、未成年者が相続する遺産が減ると親権者が得をする可能性があるため、親権者が法定代理人として遺産分割協議に参加するのは問題があります。
そこで、特別代理人が選任されて、未成年者の代わりに遺産分割協議に参加することになります。
2022年4月に民法が改正されて、成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。そのため、遺産分割協議に参加できる年齢も、現在では18歳以上になっています。
未成年者は、基本的に遺産分割協議には参加できないので、未成年者の代わりに、法定代理人に参加してもらう必要があります。通常では、未成年者の法定代理人には親権者(未成年者の父母)がなります。
未成年者が遺産分割協議に参加できないのは、十分な判断能力がないと考えられるため、民法によって法律行為(例:携帯電話の契約やアパートを借りる契約)をする能力が制限されているからです。
遺産分割協議は法律行為なので、未成年者が単独で参加することはできませんし、親権者などの同意を得ずに未成年者が参加して成立した遺産分割協議は無効となります。
なお、以前は「結婚した未成年者」が成人したとみなされる規定がありましたが、現在では廃止されています。
未成年後見人とは、未成年者に両親等の法定代理人が存在しない場合に、親権者の代わりの役割を果たすために選任される者です。
両親ともに亡くなっている等、親権者がいないケースでは、未成年者本人や親族などが家庭裁判所に未成年後見人の選任を申し立て、選任された未成年後見人に法定代理人としての役割をしてもらうことになります。
未成年後見人も、未成年者の代理人として遺産分割協議に参加できます。ただし、未成年後見人も相続人の1人であるケースでは、特別代理人を選任しなければなりません。
なお、一般的に未成年後見人には未成年者の親族が選ばれますが、状況によっては弁護士などの専門家が選ばれることもあります。
未成年後見人とは、未成年者に親権者がいなくなった場合に、代わりに選任されます。そのため、親権者と同じように未成年者の世話をしたり、財産を管理したりします。ただし、未成年後見人は、通常の親権者よりも注意深く、未成年者の財産を管理する義務があります。そして、基本的には未成年者が成人するまで未成年後見人であり続けます。
一方で、特別代理人は、特定の手続きを行うために選任されます。そのため、未成年者の世話をする義務はありませんし、遺産分割協議などの手続きが終われば職務が終わり、特別代理人ではなくなります。
特別代理人が遺産分割協議に参加する場合について、以下で解説します。
遺産分割協議における特別代理人とは、未成年者とその法定代理人が共に相続人である等の事情により、未成年者の代理をさせるのが不適切であるときに、代わりに選任される代理人です。
その職務は、法定代理人が代理できない手続きを代理することであり、任された手続きが終われば役目を終えて特別代理人ではなくなります。
なお、特別代理人の選任を申し立てる際、申立書に特別代理人にしたい候補者を記載し、家庭裁判所に提出することができます。一般的に、このときに申立書に記載した候補者が特別代理人に選任されるケースが多いです。
遺産分割によって直接的に利益を受けない成人なら、基本的に誰でも特別代理人になることができます。つまり、相続人や受遺者(遺言書によって遺産を贈られる者)ではない成人であれば特別代理人になることができます。
通常は、未成年者の祖父母等、相続人ではない親族が特別代理人に選任されることが多いです。
しかし、親族を特別代理人にすると、専門的な知識がないために手続きを進めるのに時間がかかってしまうことがあります。また、相続人間の感情的な対立を招くおそれもあります。
こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、相続問題に詳しい弁護士といった専門家に依頼し、特別代理人になってもらうことをおすすめします。
未成年者である相続人が複数いるときは、それぞれの未成年者ごとに異なる特別代理人を選任する必要があります。ひとりの特別代理人が複数の未成年者の法定代理人になると、未成年者同士の利益が相反してしまうからです。
例えば、被相続人の未成年の子である長男A、二男B、三男Cが相続人となるケースでは、相続人でない親族Dが長男Aの特別代理人になると、親族Dは二男Bや三男Cの特別代理人にはなれません。また、二男Bのために弁護士Eを特別代理人として選任したら、弁護士Eは三男Cの特別代理人にはなれず、他の人物を選任しなければなりません。
特別代理人の選任の申立ては、未成年者の親権者や利害関係人が、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
その際には、主に下記のような書類の提出を求められます。
また、申立てには次の費用も必要になります。
なお、家庭裁判所に提出する遺産分割協議書案の作成方法やサンプルについては、下記のリンク先でご確認ください。
遺産分割協議書案のサンプル家庭裁判所が特別代理人の選任について判断するときには、提出された遺産分割協議書案が未成年者にとって不利な内容になっていないかを特に重視します。そのため、未成年者の相続分が、法律で定められている相続分よりも少ない場合等には、基本的に特別代理人の選任は認められないでしょう。
しかし、未成年者にとって不利な遺産分割を行うことに合理的な理由があれば、特別代理人を選任してもらえる可能性があります。例えば、未成年者と同じく相続人である親が、未成年者の養育費や生活費を管理するために、子の相続分も合わせて相続するケース等です。
そこで、特別代理人の選任を申し立てるときに、申立書や遺産分割協議書案に、こうした“合理的な理由”をあらかじめ明記しておくと良いでしょう。
特別代理人が認められないと、有効に遺産分割協議を行うことができません。すると、協議をしないままで遺産を放置することになり、遺産に含まれる不動産等の資産を活用するのが難しくなります。
また、相続人の1人が死亡すると新たな相続が発生し、関係者が増えすぎて収拾が難しくなるおそれもあります。
これらの不都合を防ぐために、特別代理人が認められなかったら、すぐに弁護士等の専門家に相談して、遺産分割協議書の”案”を練り直す等の対応を検討することをおすすめします。
家庭裁判所による審判の結果、特別代理人の申立てが受理されると、申立人と選任された特別代理人に対して「特別代理人選任審判書」が送付されます。申立てをしてから審判の結果が通知されるまでには、1ヶ月程度かかることが多いです。
相続税は、被相続人が亡くなったことを知ってから10ヶ月以内に申告しなければなりません。時間的な余裕はあまりないため、なるべく早く特別代理人の選任を申し立てるのが望ましいでしょう。
特別代理人には、『特別代理人選任審判書』に記載された行為に関する権限だけが認められます。審判書に記載された行為が終了したら、特別代理人の職務も終了となります。
なお、審判の結果について、不服申立てをすることは認められていません。
相続税にも強い弁護士が豊富な経験と実績であなたをフルサポート致します
相続人に未成年者がいる場合には、まず遺産分割協議書の“案”を作成し、特別代理人の選任後に、正式な遺産分割協議書を作成します。
最初に遺産分割協議書の“案”を作成するのは、特別代理人の選任を申し立てるときに、家庭裁判所に「遺産分割協議書案」を提出しなければならないからです。
遺産分割協議書の“案”は、特別代理人の候補者も含めて相続人全員で事前に話し合って作成します。
遺産分割協議書案のサンプルはこちらでご確認いただけます。
遺産分割協議書案ダウンロード(Word形式)※クリックするとダウンロードが始まります
正式な遺産分割協議書は、特別代理人が選任された後に作成することになります。
相続人に未成年者がいる場合、遺産分割協議書には、
●相続人全員の署名・押印(未成年者の分は特別代理人が代わりに行います)
●特別代理人の署名・押印
をする必要があります。
もしも、これらの署名・押印がなければ、遺産分割協議書は無効になってしまうので忘れないようにしましょう。
また、押印は実印により行い、印鑑証明書を添付する必要があります。
未成年者の法定代理人であり、相続人でもある者は、未成年者を代理して相続放棄をすることができません。なぜなら、未成年者が相続放棄をすると、法定代理人の遺産の取り分が増える可能性があり、相続放棄を代理させるべきではないからです。
ただし、法定代理人がすでに相続放棄をしている場合は例外です。
この場合、法定代理人は相続人ではなかったことになりますので、未成年者の利益を損なうおそれはなくなります。よって、法定代理人は未成年者の代理人として、遺産分割協議や相続放棄に関与できるようになります。
相続放棄についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
被相続人の子(孫にとって片方の親)が既に亡くなっている場合、被相続人の孫が、亡くなった片方の親の代わりに相続することになります。これを「代襲相続」といいます。
このようなケースで孫が未成年者である場合、被相続人の子の配偶者、つまり、未成年者から見て生存している方の親が、未成年者の法定代理人となって遺産分割協議に代理で参加することができます。
なぜなら、被相続人と血の繋がりのない被相続人の子の配偶者には相続権が認められないため、相続について未成年者と利益が相反することがないからです。
したがって、このケースでは特別代理人を選任する必要もありません。
なお、どのような場合に代襲相続が発生するのかなど、代襲相続に関する詳しい解説は下記の記事でご覧いただけます。
合わせて読みたい関連記事
相続人に未成年者がいる場合、遺産分割協議を進めるうえで様々なポイントに注意しなければなりません。なかでも特別代理人を選任しなければならない場合には、煩雑な手続きや専門知識が必要になります。
そこで、弁護士に相談し、特別代理人の申立ての代行や、申立てに欠かせない遺産分割協議書案の作成を依頼することをおすすめします。弁護士に依頼すれば、申立手続による負担を軽減できるだけでなく、遺産分割協議書を作成する際に相続人間でトラブルになる事態を防ぐことができる可能性が高まります。
相続人に未成年者がおり、遺産分割協議を行ううえでご不安や疑問を抱かれている方は、ぜひ弁護士にご相談ください。