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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
被相続人の生前に、相続人が被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合、つまり「寄与行為」をした場合に、他の相続人よりも相続財産を多くもらえる「寄与分」という制度があります。 しかし、寄与分をもらうには、被相続人に対して寄与行為を行った事実を主張する必要があります。 では、具体的にどのように主張すれば良いのでしょうか?今回は、寄与分をもらうための方法について、主張の仕方や流れ、実際に主張する前に準備すべき事項などについて解説します。ぜひ参考までご覧ください。
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被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人は、貢献した程度に応じて、「寄与分」として余分に相続財産をもらうことができます。 しかし、そのためには目に見える証拠をもって“貢献した事実”、つまり「寄与行為」をしたことを証明しなければなりません。 具体的には、次のいずれかの方法で寄与行為をした事実を認めてもらい、寄与分の金額や割合を決定します。
寄与分は、他の相続人に主張し、相続人全員の合意を得られなければ受け取ることはできません。しかし、ただ「自分には寄与分があるから認めてほしい」と主張するだけでは、相続人全員の合意を得ることは難しいでしょう。 なぜなら、認められた寄与分に相当する金額だけ全体の相続財産が減ってしまい、各相続人が受け取ることのできる相続財産も減ってしまうことになるからです。 相続人全員の合意を得るためには、被相続人の財産の維持・増加に特別に貢献していた事実を証明する証拠を揃え、相続人全員が納得するような丁寧な説明をすることが重要です。 また、相続人同士で揉め事になってしまうことを防ぐためにも、弁護士に依頼するのもひとつの手です。弁護士に適切な主張と立証を行ってもらい、相続人全員の合意が得られるようにするのも良いでしょう。
寄与分を主張する際には、以下の3つのポイントを事前に確認しておきましょう。
①寄与分が認められる要件を満たしているか
②金額は正当か
③寄与行為を証明する証拠の準備ができているか
それぞれについて、次項以下で詳しく解説していきます。
寄与分が認められるためには、前提として、下記の要件を満たしている必要があります。
それぞれの要件の詳しい解説は、下記の記事でご覧いただけます。
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寄与分を主張する際には、その金額や割合が貢献の程度に見合っているかどうかをきちんと確認しましょう。 寄与分の正当な金額は、相続財産の維持・増加について、いつ、どのように、どの程度の貢献をしたかによって異なってきます。自分の貢献した内容をよく振り返って、適正な金額がどれくらいなのかをしっかりと把握しておきましょう。 寄与分の適正な金額を計算する詳しい方法は、下記の記事をご覧ください。
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寄与分を認めてもらうためには、ただ単に自身に寄与分があることを主張するだけではなく、寄与分が認められるべき要件を満たしていることを適切に立証しなければなりません。 したがって、寄与分を証明できる証拠になり得るものをきちんと保管しておくことが、とても重要になります。 次項より、寄与行為の種類ごとに証拠になり得るものについて説明していきます。
家事従事型の寄与分を証明する証拠になり得る資料としては、次のようなものが挙げられます。
家事従事型とは、相続人が無給または一般的な給料よりかなり少ない給料で、被相続人が経営する事業を一定期間手伝った場合を指します。 家事従事型の寄与分を認めてもらうための要件や金額の決め方についてなど、詳しい解説は下記の記事をご覧ください。
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金銭出資型の寄与分は、相続人から被相続人へお金が動いたことがわかる資料で証明できます。したがって、次のようなものが証拠となり得ます。
金銭出資型とは、相続人が被相続人にお金や財産を渡したり、不動産などの購入費用を出したりした場合を指します。 他の種類の寄与分との違いや認められるための要件、主張する際のポイントなどは、下記の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
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療養看護型の寄与分を証明する際には、被相続人の症状や要介護度、相続人が被相続人の介護をしていた期間、1日のうち介護にあてていた時間、実際にしていた介護の内容などがわかる資料が証拠となる可能性が高いです。 例えば、次のようなものが証拠となるでしょう。
療養看護型とは、相続人が、被相続人との関係性からみて通常期待される程度を超えて、被相続人の療養看護を行った場合を指します。 療養看護型を根拠に寄与分を主張する場合には、下記の記事でご紹介する要件を満たす必要があります。また、効果的な主張方法などもまとめているので、ぜひご覧ください。
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扶養型の寄与分は、次のように、相続人が被相続人の生活費を負担していたことがわかる資料などが証拠となり得ます。
扶養型とは、相続人が、被相続人との関係性からみて通常期待される程度以上に、被相続人の面倒をみた場合を指します。 具体例や寄与分が認められるための要件は、下記の記事でご確認いただけますので、ぜひ併せてお読みください。
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財産管理型の寄与分は、例えば次のような資料が証拠となる可能性があります。
財産管理型とは、相続人が無給または一般的な給料よりかなり少ない給料で、被相続人の所有する財産を一定期間管理した場合を指します。 財産管理型の具体例や、寄与分が認められるために満たすべき要件、効果的な主張方法などは、下記の記事で説明しています。理解を深めていただくためにも、ぜひご覧ください。
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一般的に、寄与分は、まずは相続人同士で相続財産の分け方について話し合う「遺産分割協議」で主張し、相続人全員に納得してもらう必要があります。 遺産分割協議で合意が得られない場合は、家庭裁判所の調停委員を介した「遺産分割調停」または「寄与分を定める処分調停」で話し合うことになります。 調停でも合意を得られる見込みがなく、不成立となった場合は、家庭裁判所が寄与分の有無や金額・割合について判断する「寄与分を定める処分審判」が行われます。 次項から、それぞれの段階について詳しく解説していきます。
被相続人が亡くなって相続が開始すると、一般的に「遺産分割協議」が行われ、相続人間で相続財産の分配方法が話し合われることになります。 寄与分を請求したい場合は、まずはこの遺産分割協議で寄与分を主張していきます。 遺産分割協議で寄与分が認められるためには、相続人全員の合意が必要です。この点、比較的関係性の近い相続人同士で話し合う遺産分割協議では、寄与分を含めた遺産の分配方法について柔軟に決められる可能性が高いです。そのため、最も寄与分が認められやすい手続きだといえるでしょう。 とはいえ、相続人の財産の維持・増加のために特別に貢献していた事実を証明する証拠を揃え、相続人全員が納得するように寄与分について丁寧に説明しなければならない点は変わらないので、準備を怠らないことが大切です。 なお、遺産分割協議の流れや話し合いの中心となる事項など、詳しくは下記の記事をご覧ください。
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遺産分割協議で相続人全員の合意が得られなければ、家庭裁判所に「遺産分割調停」や「寄与分を定める処分調停」を申し立て、遺産の分割方法に関する話し合いの一環として、寄与分を主張していきます。 「遺産分割調停」とは、家庭裁判所の調停委員会のサポートを受けながら、寄与分を含めた、相続人間の遺産の分配方法について話し合う手続きです。 また、「寄与分を定める処分調停」とは、寄与分に関する事項についてのみ話し合う調停手続です。 どちらの調停も、裁判所から指定された期日に裁判所に行き、対立する相続人が交互に調停室に入って調停委員に意見を述べ、調停委員会が話し合いをまとめるという流れで進められます。 遺産分割調停を利用する際の流れについてより詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。
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遺産分割調停で話し合いがまとまらず、不成立となった場合には、自動的に「遺産分割審判」に移行することになります。そのため、遺産の分配方法について判断してもらうだけなら、新たに申立てをする必要はありません。 ただし、寄与分について判断してもらうためには、別途「寄与分を定める処分審判」を申し立てる必要があります。 また、寄与分を定める処分調停しか申し立てていなかった場合は、遺産分割審判の申立てが必要なのでご注意ください。 なお、ここでいう審判とは、裁判所の判断で遺産の分配方法や寄与分を決定する手続きですから、相続人同士で話し合うことはありません。 審判では、各相続人が指定された期日に家庭裁判所に行き、それぞれの主張と立証を書面で提出し、これらを踏まえて最終的に裁判所が遺産の分配方法や寄与分について決定します。 こうした審判は最終的な解決方法ですが、不服があるときは、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内であれば即時抗告という不服申立てを行うことができます。 遺産分割審判の流れや申立方法など、詳しい説明をご覧になりたい方は下記の記事をご参照ください。
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寄与分が認められるのは共同相続人だけなので、たとえ共同相続人以外の人が献身的に被相続人の面倒をみてきたとしても、寄与分は認められません。 ただし、民法の改正によって、2019年7月1日に「特別寄与料」という制度が新設されたことで、寄与行為を行った共同相続人以外の被相続人の親族も金銭を請求できるようになりました。
特別寄与料とは、共同相続人ではない被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護などをした場合に、寄与度に応じた金銭を相続人に対して請求できる制度です。 例えば、共同相続人の内のひとりの嫁が、義父である被相続人の介護を無償で献身的に行っていた場合、特別寄与料を請求できる可能性が高いでしょう。 特別寄与料が認められるための具体的な要件は、次のとおりです。
【特別寄与料が認められる要件】
被相続人の財産の維持・増加に貢献する行為、つまり寄与行為には複数の種類があります。もし、ひとりの共同相続人が複数の種類の寄与行為をしていた場合には、それぞれの寄与行為に対する寄与分を主張することができます。したがって、どれかひとつの寄与行為に絞って寄与分を主張する必要はありません。ただし、寄与行為の種類によって寄与行為をした事実やその程度などを証明する証拠は異なりますので、寄与分を主張する寄与行為の種類が増えるほど、かかる手間も増えることになります。
遺産分割協議でかかった経費は、相続が開始した後に発生したものなので、寄与分としては主張できません。寄与分は、あくまで相続人が“生前に”被相続人の財産の維持・増加のために特別に貢献した分に対して認められるものだからです。
遺言の内容によっては寄与分を主張できない可能性があります。そもそも寄与分は、被相続人の意思に反しない限りでしか認められない制度です。このことは、“寄与分は、相続財産から遺贈した金額を差し引いた金額の中でしか決められない”と民法で決められていることから明らかです。したがって、遺言で“すべての相続財産の分配方法が指定されている場合”は、寄与分を主張できる可能性は極めて低いでしょう。一方、“分配方法が指定されていない財産がある場合”や“各相続人への分配割合だけが指定されている場合”などは、寄与分を主張できる余地があると考えられます。
ここで、家事従事型の寄与分が認められた裁判例をご紹介します。
【和歌山家庭裁判所 平成26年(家)655号、平成26年(家)656号】
[事案の概要]
被相続人の相続人のひとりである長男が、同じく相続人である母と二男に対して、被相続人の家業である農業に従事した寄与分として相続財産の総額の30%を請求した裁判例です。
[裁判所の判断]
裁判所は、下記のように事実を認定したうえで、被相続人の家業(農業)に長男が従事することによって、被相続人の重要な財産である農地が荒廃することなく収穫を続けられる状態が維持されたとして、長男が被相続人の財産の維持に寄与したことを認め、長男の寄与分として、相続財産の30%に相当する1031万2334円を認めました。
寄与分は、被相続人に特別な貢献をした相続人の方が、貢献の程度に応じて相続分に上乗せしてもらえる画期的な制度です。しかし、寄与分を主張できない他の相続人にとっては、自分たちの相続分を減らす頭の痛い問題でもあります。 そのため、寄与分を主張すると、相続人同士のトラブルの火種となってしまう可能性があります。 また、寄与分をもらうためには、他のすべての相続人の合意を得るか、裁判所に主張を認めてもらわなければなりません。そのためにどういった証拠をどのように集めたら良いのか、実際にどのように立証していけば良いのか、不安に思われる方も多いでしょう。 そこで、専門知識を有する弁護士に依頼し、ご依頼者様の状況に応じた適切な寄与分の主張・立証を代わりに行ってもらうことをおすすめします。相続問題に詳しく、豊富な経験を積んでいる弁護士に依頼すれば、ご依頼者様にとって納得のいく結果を得られる可能性が高まるでしょう。 寄与分の主張を検討されている方は、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。