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生前の介護と遺産の割合への不満には寄与分を検討しましょう

弁護士と学ぶ相続Q&A

被相続人に尽くした分多く遺産を貰うことはできる?

相談者

先日、私の母が亡くなりました。父はもう亡くなっていて、相続人は、私と兄と妹だけです。遺言書はありません。

母は10年近く寝たきりで、私が介護してきました。寝たきりになる前も10年以上私が同居して面倒をみていました。兄妹は何もしてくれなくて…。それなのに、遺産は3分の1ずつなんでしょうか、不公平ではないですか。

弁護士

なるほど、ご相談者様だけがお母様をずっと介護されていたのですね。このようなケースでは、寄与分というものを検討する余地があります。

相談者

寄与分ですか?どういう制度なのですか?

弁護士

ある相続人が、被相続人を療養看護したり、被相続人の事業を手伝ってきた場合等に、その相続人と、看護や事業の手伝い等をしていない他の相続人の間の公平を図る制度です。

看護等をした相続人が、被相続人の財産の維持または増加に貢献した場合、その貢献の分だけ、遺産の額を修正し、貢献した相続人の相続分を調整するのです。

相談者

なるほど、私の場合はどうなるのでしょうか?

弁護士

貢献、つまり寄与があったかどうか、あったとしてその寄与をどのように金銭に評価するかは、諸事情を考慮のうえ決まります

たとえば、20年余被相続人である母親と同居し、その内後半の10年ほどは母親が認知症に罹患したため付きっ切りで療養看護にあたった相続人の寄与が認められた事例があります。相続人の看護のおかげで、ヘルパー等を雇わずに済んだので、その費用の分、遺産の減少を防げたという理由です。

相談者

それなら、私の場合も、寄与分が認められるかもしれないですね。私も母に付きっ切りで10年ほど介護をして過ごしてきたのですから…。

弁護士

そうですね、ご相談者様も、10年ほどお母様の介護、つまり療養看護にあたり、四六時中お世話をされていたうえ、介護が始まる前から10年以上同居されています。

事例ごとの判断なので、100%同じ判断になるとは言えませんが、ご紹介の事例に照らして、寄与分が認められる余地は十分あります。

相談者

私の寄与分が認められる余地があるということで少し安心しました。

ところで…寄与分は遺産の修正ということですが、どういった修正をするのですか?

弁護士

少々複雑にはなりますが、本来の遺産、つまり相続財産の額から、寄与分にあたる額を差し引いた額を相続財産とみなします。その額から、法定相続の割合にのっとって算出した額に、寄与分に当たる額を足した額が、ご相談者様の相続分となります。

例えば、①遺産が合計4000万円、②寄与分が1000万円の場合、相続財産は、①-②=3000万円となります。 寄与分の計算方法

そして、ご相談者様の場合、相続人はご相談者様を含めてご兄妹3人だけなので、3000万円÷3=1000万円の法定相続分に、 寄与分の計算方法 ②を足した2000万円がご依頼者様の相続分です。 寄与分の計算方法

寄与分の決め方にはどんな方法があるの?

相談者

なるほど、それでは寄与分はどうやって決まるのですか?

弁護士

基本的には当事者間の話し合いです。もし、まとまらなければ、家庭裁判所に調停か審判を申し立てることになります。

調停は、調停委員という第三者を介した話し合いで、審判は、裁判官が、当事者から提出された書類等色々な資料に基づいて判断し決定する手続です。さきほどご紹介した事例は審判で判断されたものです。

相談者

2種類の手続があるんですね、どちらを選べばいいのですか?

弁護士

建前上はどちらでもかまいません。ただ、相続というのは家庭の事情ですし、裁判官に判断を下してもらう審判ではなく、あくまで話し合いの性質を持つ調停で解決できるならそちらが妥当という考えから、審判を申し立てても、一旦調停に付す処理がされるのが通常です。なので、まずは調停を申し立てることをおすすめします。

調停や審判の申立てにおける注意点は?

相談者

なるほど。それでは、調停や審判の申立てにあたって、何か注意点はありますか?

弁護士

調停は話し合いの手続ですから、お互い納得できなければ調停が不成立になり、審判に移るという流れになります。この審判に移った時が要注意です。

寄与分を調停ではなく審判で定める時は、遺産分割の審判の申立てが必要なのです。もし遺産分割の審判の申立てがなければ、寄与分を定める審判が却下、つまり門前払いされてしまうのです。

相談者

難しいですね。やっぱり兄妹だけの話し合いで解決する方がいい気がしてきました。

弁護士

そうですね、弁護士が話し合いの間に入って、解決に至るケースも多いです。寄与分に関する審判例もたくさんありますし、それらに照らして、交渉を進めていくことになりますので、当事者だけでお話し合いをされるより、説得的な交渉ができるかと思います。もし、交渉決裂で調停等に移った場合でも、手続から全てサポートさせていただくので、お任せください。

相続人が複数いる場合、このように一人の相続人の寄与分が問題になるケースがあります。

お悩みの方は、ぜひともご相談いただき、ご安心いただければと思います。

相続Q&Aは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。
相続に関するお悩みは、弁護士法人ALGまでお気軽にご相談ください。

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