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再婚すると遺産相続はどうなる?トラブルを回避する5つの対策

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

自分や親が、配偶者との離婚や死別の後で再婚した場合、相続がどうなるのか気になる方もいるでしょう。 特に、両親が離婚して、子供の親権者は母親になり、その後に父親が再婚した場合には、前妻の子と再婚した配偶者が法定相続人になるためトラブルになることがあります。 加えて、再婚相手の連れ子と養子縁組したり、再婚相手との間に子供が生まれたりすると、再婚相手の子と前妻の子との間で感情的な対立によって相続トラブルが発生しやすくなります。 この記事では、再婚による相続権や相続割合への影響や、再婚により想定される相続トラブル等について解説します。

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再婚すると相続権や相続割合はどうなる?

再婚した場合、再婚後の配偶者は法定相続人になります。 この記事では、特に断りのない限り、父親が再婚して被相続人になったケースを想定して解説します。 以下の項目について、次項より解説します。

①前妻・再婚相手の相続権
②前妻の子の相続権
③再婚後に生まれた子の相続権
④再婚相手の連れ子の相続権

なお、配偶者以外の法定相続人は、相続順位が以下のように定められています。

  1. 第1順位:子供
  2. 第2順位:父母
  3. 第3順位:兄弟姉妹

先順位の法定相続人がいる場合には、後順位の人は基本的に法定相続人にはなりません。 相続順位と法定相続分について、さらに詳しく知りたい方は以下の各記事を併せてご覧ください。

前妻・再婚相手の相続権

離婚すると、前妻は相続権を失います。そして、再婚すると、その配偶者が法定相続人となります。 子供がいる被相続人が再婚すると、法定相続人は配偶者と(前妻との間の)子供となり、再婚相手の法定相続分は相続財産の1/2となります。

前妻の子の相続権

前妻の子の相続権

離婚しても、前妻との間の子供には相続権があります。これは、親権者が前妻であっても影響ありません。 また、被相続人が再婚して、再婚相手との間に子供が生まれたとしても、前妻の子供の相続権には影響しません。

●前妻の子供の相続順位:第一順位
●子供の法定相続分:相続財産の1/2(子供が複数いる場合には、子供の相続分を人数で等分する)

再婚後に生まれた子の相続権

再婚後に生まれた子の相続権

再婚後に、再婚相手との間に生まれた子供にも相続権があります。これは、前妻との間に子供がいても同様です。 そして、母親が異なる子供同士の、法定相続分は同じになります。

●前妻の子供の相続順位:第1順位
●子供の法定相続分:相続財産の1/2(子供が複数いる場合には、子供の相続分を人数で等分する)

再婚相手の連れ子の相続権

再婚相手の連れ子に関しては、そのままでは相続権がありません。しかし、養子縁組を行うことによって法定相続人になることができます。 再婚相手の連れ子に相続財産を遺す方法として、遺言書を作成して相続財産を贈る(遺贈する)方法もあります。 しかし、連れ子との養子縁組の方には、遺贈と比べて以下のようなメリットが挙げられます。

  • 相続税の基礎控除が増えるため節税になる
    相続税の基礎控除は、法定相続人が1人増えると600万円増加します。そのため、課税対象となる相続財産を減らせるので相続税の節税となります。
  • 相続税の2割加算を防ぐことができる
    被相続人の配偶者や子、両親等でなければ、相続税の金額が2割加算されます。しかし、養子は法律上の子であるため2割加算の対象外です。

ただし、もしも関係が悪化しても、養子にした連れ子の承諾がなければ離縁するのは簡単ではないため注意しましょう。 養子の相続順位と法定相続分は以下のとおりです。

●相続順位:実子と同じく第1順位
●法定相続分:子の全員で相続財産の1/2(実子と養子の全員で等分する)

養子や連れ子の相続権について詳しく知りたい方は、以下の各記事を併せてご覧ください。

再婚すると相続でもめやすい?想定されるトラブルの事例

再婚すると、前妻との間に生まれた子供以外にも法定相続人がいることになります。そして、多くの場合で前妻やその子供と再婚相手とは面識がないので、相続分が減ることを快く思わないことが多いです。そのため、相続トラブルのリスクは高まってしまいます。

再婚相手や養子の取り分に納得できない

法定相続人が前妻の子だけならば、相続財産はすべて前妻の子が相続します。しかし、次のような事情が生じた場合は、相続人の数が増えれば増えるほど前妻の子の法定相続分は減少します。

【被相続人が再婚していた場合】
相続財産の1/2は再婚した配偶者が相続する

【再婚相手の連れ子と養子縁組した場合】
前妻との間に生まれた子と法定相続分が同じになる

【再婚相手との間に子が生まれた場合】
前妻との間に生まれた子と法定相続分が同じになる

結果として、再婚相手である配偶者と前妻や再婚相手の子と前妻の子の間などで感情的な対立が発生し、相続においても様々な主張をぶつけ合う等の事態が生じるおそれがあります。

遺言の内容が偏っている

被相続人が、再婚した配偶者やその子に対して強い愛情を抱いて遺言書を作成すると、「再婚した妻に全て相続させる」「前妻の子には一切相続させない」等の偏った遺言書を作成してしまうケースがあります。 仮にこれらの内容の遺言書を作成しても、前妻の子には遺留分があるため「遺留分侵害額請求」をされるおそれがあります。 相続財産に含まれる現金や預貯金等が少ないと、遺留分侵害額請求を受けた相続人が、相続財産をお金に換える手間がかかる等の負担が生じてしまいます。そのため、前妻の子の遺留分にも配慮した遺言書を作成したほうがトラブルを回避できます。

遺産分割協議がまとまらない

遺言書を作成しないまま被相続人が亡くなってしまうと、遺産分割協議を行わなければなりませんが、再婚相手と前妻の子が揉めてしまうと協議が難航するおそれがあります。 遺産分割協議を成立させるためには相続人全員の同意が必要なので、感情的な対立によって協議が成立しないと、いつまでも相続手続きを進めることができません。 相続税の申告期限は、自己のための相続が開始されたことを知ってから10ヶ月以内であり、申告が遅れてしまうと、「配偶者控除」等の税額控除や「小規模宅地の特例」が受けられなくなってしまうため注意しましょう。 遺産分割協議や相続税の税額控除について詳しく知りたい方は、以下の各記事をご覧ください。

再婚による相続トラブルを回避するための5つの対策

再婚による相続トラブルを回避するためには、被相続人による生前の対策が重要となります。 相続トラブルを防ぐための対策として、以下のようなものが挙げられます。

  • ①遺言書を作成する
  • ②推定相続人を把握しておく
  • ③相続財産を明らかにしておく
  • ④生命保険を活用する
  • ⑤養子縁組しないことを検討する

これらの対策について、次項より解説します。

①遺言書を作成する

遺言書を作成すれば、被相続人の意思によって相続財産を分配することができます。法定相続人以外にも相続財産を遺贈することができるので、再婚相手の連れ子と養子縁組する必要はありません。また、遺留分を上回っていれば、法定相続分を下回っても問題ありません。 そして、遺言書があれば遺産分割協議の必要がなくなるので、法定相続人等が感情的な対立を抱えながら話し合う義務を負わずに済みます。 遺言書について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

遺言書の作成時は「遺留分」に注意!

遺言書によって指定した相続分が遺留分を侵害している場合には、「遺留分侵害額請求」の対象になります。

◇遺留分とは
兄弟姉妹を除く法定相続人に保障されている相続財産の最低限の取り分のこと

◇遺留分侵害額請求とは
遺留分を有する法定相続人に分配された相続財産が遺留分を下回った場合に、下回った部分に相当する金銭を請求すること

遺留分があるため、「相続財産をすべて再婚相手に相続させる」等の遺言があっても、前妻の子は遺留分侵害額請求をする権利を有します。そのため、せっかく遺言書を作成しても、結局は相続争いに発展してしまうリスクがあります。 そこで、遺言書を作成するときには弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、遺留分に配慮した遺言書作成のお手伝いが可能です。 遺留分侵害額請求について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

②推定相続人を把握しておく

推定相続人とは、現状で相続が発生したときに法定相続人となる人のことです。 ある人が結婚しているか、離婚した後であるかによって、推定相続人に配偶者がいるか否かの違いが生じます。 また、再婚した配偶者との間に子供が生まれると、その子供も推定相続人となります。 そのため、離婚や再婚を何度もする人は、そうでない人と比べて推定相続人を把握しづらくなります。まずは推定相続人が誰であるかを正確に調査して、なるべく居場所についても把握することが望ましいでしょう。

③相続財産を明らかにしておく

父親が再婚すると、前妻の子供からは財産の状況が分からなくなることが多いです。そのため、相続が開始したときには、前妻の子供から「被相続人の財産を隠しているのではないか」と疑われて感情的な対立に発展するおそれがあります。 そのため、高額な預貯金を引き出したときには、用途を明らかにするために領収書等を残しておきましょう。また、遺言書を作成して財産目録を添付しておくようにしましょう。 相続財産調査について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

④生命保険を活用する

生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産となるため、基本的に遺産分割協議の対象外となります。そのため、再婚相手の連れ子を死亡保険金の受取人にすれば、遺言書を作成したり養子縁組したりしなくても財産を遺すことが可能です。 ただし、相続財産がほとんどなく、死亡保険金を受け取った人との間に著しい不公平が生じてしまう場合には、例外的に死亡保険金を「特別受益」として扱うことがあります。死亡保険金が特別受益として扱われると、遺留分侵害額請求の対象となってしまいます。 そこで、遺言書等により、死亡保険金を受け取らない法定相続人の取り分を多くする等の対応が必要となります。

⑤養子縁組しないことを検討する

再婚相手の連れ子と養子縁組すれば、養子も実子と同じく第1順位の法定相続人になります。そのため、実子の法定相続分が減少するのでトラブルになるリスクが高まります。 ここで、連れ子は再婚相手の前夫の法定相続人であり、同人の相続に関し、遺留分も請求できます。そのため、養子縁組しなくても、連れ子が困窮するリスクが低いケースもあるでしょう。 自身にとって実子である子供の相続分を減らしたくない場合には、あえて養子縁組しないことも検討しましょう。

再婚と相続に関するQ&A

生前に前妻の子に相続放棄をしてもらうことは可能ですか?

再婚した配偶者とその子供だけに財産を相続してほしい理由があったとしても、被相続人の生前に、前妻の子供に相続放棄してもらうことはできません。そのため、相続しない旨の念書等を作成しても無効となります。 また、被相続人の死後に相続放棄を強制することもできません。 そこで、相続放棄の代替策として、遺言書を作成した上で遺留分を放棄してもらう方法があります。 遺留分の放棄や生前の相続放棄に関する説明、相続人廃除について知りたい方は、以下の各記事をご覧ください。

再婚した場合の相続関係図はどのように記載すれは良いですか?

相続関係説明図とは、被相続人や法定相続人等の関係についてまとめた家系図のような書面です。相続関係説明図には、主に以下の項目を記載します。

【被相続人について】
●氏名
●死亡日
●死亡したときの住所

【相続人について(前妻の子を含む)】
●氏名
●出生日
●住所
●法定相続分

【前妻について】
●名前
●離婚した日付

なお、前妻は法定相続人ではないので、相続関係説明図には住所や生年月日等を記載する必要はありません。

バツイチ子持ちで再婚したのですが、再婚相手に全財産を相続させることはできますか?

前妻との間に生まれた子供がいる男性が再婚した場合、再婚相手に全財産を相続させる旨を記載した遺言書を作成することは可能です。そして、前妻の子が遺留分を主張しなければ、再婚相手が全財産を相続します。 前妻の子の遺留分は法定相続分の半分とされています。そのため、子が他にいなければ、遺留分は相続財産の1/4となります。 そのため、前妻の子が遺留分を主張する場合には、再婚相手は基本的に相続財産の1/4に相当する金銭を支払わなければなりません。

母親の再婚相手が死亡した場合、誰が遺産を相続しますか?

母親の再婚相手が亡くなった場合、母親と、再婚相手との間に生まれた子が法定相続人になり、再婚相手の財産を相続します。 一方、前夫との間に生まれた子は、そのままでは再婚相手の法定相続人にはならず、再婚相手と養子縁組をすれば法定相続人となります。

再婚による相続トラブルを防ぐためにも、弁護士に相談することをおすすめします

再婚すると相続は複雑になり、トラブルが発生しやすくなります。相続トラブルを防ぐためには生前の相続対策が重要であり、なるべく遺言書を作成するのが望ましいといえます。 そこで、再婚相手やその子供が相続トラブルに巻き込まれないようにするために、弁護士にご相談ください。弁護士であれば、発生するリスクのある相続争いについてアドバイスができます。特に、遺留分についての争いが発生しないように、遺言書の内容について配慮すべきことは慎重に検討いたします。 相続税をなるべく抑える方法等についても、併せてご相談ください。