相続に強い法律事務所へ弁護士相談|弁護士法人ALG

メール相談受付

お電話でのご相談受付全国対応

0120-523-019

0120-523-019

24時間予約受付・年中無休・通話無料

来所法律相談
30無料

※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。

正しい遺言書の書き方|例文やポイントを解説

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

自身の希望によって相続財産を分配したいと考える方は少なくありません。そのようなときに、法的に確実なのは遺言書を作成する方法です。
遺言書は、亡くなった方の遺志を実現することのできる書類ですが、作成するときにはさまざまな決まりがあるため、ちょっとしたミスによって無効となってしまうおそれがあります。

この記事では、遺言書の書き方について、注意するべき点や文例等を挙げながら解説します。

遺言書とは

遺言書とは、相続財産を誰に、どの程度の割合で分配するか等を指定した、法的な書面のことです。作成しておけば、亡くなった方の遺志を実現できるだけでなく、遺族の遺産を巡る争いを生じさせない効果を期待できます。

また、遺言書によって、自身の配偶者や子供だけでなく、親しい人やお世話になった人等にも財産を与えることができます。他にも、遺言の内容を実現するための手続きを行う者(遺言執行者)を指定しておくことにより、相続人の手間を軽減できます。

遺言書の効力

遺言書を作成することによって、次のような効力を発生させられる可能性があります。

  • 相続財産の取り分について、各々が主張して譲らない等の相続トラブルを避けられる
  • 法定相続人でない人に財産を与えることができる
  • 家業を継ぐために必要な資産を相続する者を指定できる
  • 生前贈与を、相続財産の前渡しとして扱わないようにすることができる

一方で、次のような事項を遺言書に書いたとしても、法的な効力はありません。

  • 法的に認められている相続財産の取り分(遺留分)を請求することの禁止
  • 結婚や離婚、養子縁組等の強制

また、自筆証書遺言の財産目録以外の部分を自筆していない等、遺言書に不備があって法的に無効となってしまうケースでは、遺言書に記載した内容のすべてが法的に無効とされてしまうため注意しましょう。

遺言書の効力について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

遺言書を書くための準備

遺言書を書くときには、主に次のような準備が必要です。

  • 相続財産を把握する
  • 法定相続人が誰かを把握する
  • 相続財産を分け与えたい者を考える
  • 遺言の内容(相続財産の分配方法等)を考える
  • 遺言の内容を実現するための手続きを任せる人(遺言執行者)を決める
  • 遺言書の種類や保管方法を決める

遺留分に注意する

遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人について認められる相続財産の最低限の取り分であり、遺言書に従うと遺留分に足りない相続財産しか受け取れない者は、他の相続人に対して遺留分侵害額請求を行うことができます。

遺留分の権利のある相続人が遺留分侵害額請求を行うと、相続人の間で対立が激しくなるおそれがあります。そこで、なるべく遺留分に不足しない財産を残すことによって、相続人が対立する事態を防ぐことができます。

しかし、財産が実家の建物と土地以外にはほとんどない場合等、どうしても遺留分に配慮するのが難しい場合には、あらかじめ相続人全員の同意をもらう等の対応をしておくようにしましょう。

遺言執行者を指定するメリット

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための手続きを行う者のことです。遺言執行者は遺言により指定することができます。

遺言書によって遺言執行者を指定しておけば、不動産の登記や預貯金の払い戻し手続きのために、すべての相続人の同意を得る必要がなくなるため、遺言書の内容に不満を抱いている相続人からの妨害を受けにくくなります。

また、遺言書によって子供を認知したり、相続人の相続権を失わせる手続き(相続人の廃除)をしたりするときには、遺言執行者を必ず選任しなければなりません。

遺言執行者について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

遺言書の種類と書き方

遺言書には次の3種類があります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

これらは、それぞれ書き方や作成者等が異なります。その違いを、下の表にまとめたのでご覧ください。

自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
書き方 遺言者が遺言書の本文全文・日付・氏名を自筆し、押印して作成する 公証役場の証人の前で、公証人に申し述べ、公証人が遺言書を作成する 遺言者が証人と一緒に公証役場に遺言書を持ち込み、遺言書の存在を保証してもらう
作成者 本人 公証人 本人
作成場所 自宅等 公証役場(原則) 自宅等
作成費用 不要 必要 必要(公正証書遺言よりは少額)
証人 不要 必要 必要
保管方法 遺言者自身または法務局で保管 公証役場で保管 遺言者自身で保管
遺言内容を秘密にできるか 秘密にできる 公証人や2人の証人には知られる 秘密にできる
家庭裁判所での検認手続き 必要(法務局で保管してもらったときには不要) 不要 必要

これらのうち、最も無効になりにくいのが公正証書遺言です。そのため、自筆証書遺言は下書きのような位置づけで作成し、なるべく公正証書遺言を作成することをおすすめします。

3種類の遺言書について、さらに詳しく知りたい方は、以下の各遺言書の記事をご覧ください。

遺言書の書き方のポイント

自筆証書遺言を作成する方のために、書き方のポイントを解説します。

  • 消せない万年筆やボールペン等を用いる(改ざんについて争いにならないようにするため)
  • 財産目録を除く全文を自筆する(パソコンなどで本文を作成しないこと)
  • 誰に、どの財産を相続させるかを明確に特定できるように書く
  • 作成した年月日を正確に書く
  • 自筆で署名し、なるべく実印で押印する
  • 遺言書が複数枚あるときには契印をする
  • 訂正がある場合は二重線によって消し、訂正印を押す(できれば書き直すのが望ましい)

なお、遺言書の用紙に制限はなく、書式も自由とされています。ただし、破れやすい紙に書いたり、間違って捨ててしまいそうな紙(チラシ等)を用いたりするのはやめましょう。
生きているうちに他者に見られるのを防ぐために、なるべく封筒に入れて糊付けすると良いでしょう。

遺言書の書き方|ケースごとの例文

自筆証書遺言の例文

上図は、シンプルな遺言書の見本です。
自筆証書遺言であれば、添付する財産目録を除いて、全文を自筆しなければなりません。

日付や名前の部分も自筆しなければならないため、誤ってスタンプ等で済ませないように注意しましょう。また、押印は、なるべく実印を用いるのが望ましいです。

作成日は、明確に何日であるかが分かるように記入しましょう。「吉日」等の表記をしてしまうと遺言書が無効になってしまいます。

他にも、上図では省略していますが、なるべく「その他一切の財産」を相続させる者を指定すると、存在することを忘れていた財産があったときに役に立ちます。

上図の1~4部分について、財産を残す方の様々な希望を実現するための例文に変えて、以下でご紹介します。

全財産を1人に相続させる

全財産を1人に相続させるときには、相続させた者に対して遺留分権利者が遺留分侵害額請求を行うおそれがあります。遺留分権利者に対して、全財産を1人に相続させたい理由等について、事前に説明をしておくのが望ましいでしょう。

また、「全財産を相続させる」とだけ書くと、相続人が財産を調査する負担が増すため、分かっている財産については、なるべく遺言書に書いておくようにしましょう。

妻に全財産を相続させるときの遺言書の例文を、下に掲載します。

1.妻 ALG花子(昭和○○年○月○日生)に次の財産を相続させる。

  • (1)土地
      ※所在等を表記
  • (2)建物
      ※所在等を表記
  • (3)預金
      ※銀行名等を表記
  • (4)株式
      ※会社名等を表記

2.その他遺言者に属する一切の財産は、妻 ALG花子に相続させる。

3.遺言者は、本遺言の執行者として妻 ALG花子を指定する。

不動産を相続させる

不動産を遺言書によって相続させるときには、どの不動産を相続させるのかを明記しましょう。そのときには、登記簿謄本に記録されている所在や地番を記入して、確実に特定できるようにする必要があります。

また、遺言執行者として不動産を相続した者を指名することで、他の相続人に妨害されることなく不動産を相続する手続き(登記など)を行うことができます。

妻に不動産を相続させるときの遺言書の例文を、下に掲載します。

1.妻 ALG花子(昭和○○年○月○日生)に次の財産を相続させる。

(1)土地
  所在:東京都○○区○○町○丁目
  地番:○番○号
  地目:宅地
  地積:○○㎡

(2)建物
  同所所在:家屋番号○番○
  種類:居宅  構造:木造瓦葺2階建
  床面積:1階○○㎡ 2階○○㎡

現預金を相続させる

預貯金を遺言書によって相続させるときには、どの金融機関の預貯金を相続させるのかを明記しましょう。必ず口座番号まで記入する必要があります。また、遺言執行者として預貯金を相続した者を指名すれば、スムーズに払い戻し手続き等を行うことができます。なお、金額は変動するため、記入する必要はありません。

妻に預貯金を相続させるときの遺言書の例文を、下に掲載します。

1.妻 ALG花子(昭和○○年○月○日生)に次の財産を相続させる。
 (1)○○銀行○○支店 定期預金 口座番号○○○○
 (2)○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○

美術品を相続させる

美術品を遺言書によって相続させるときには、相続させる美術品の現在の評価額を明らかにしておくのが望ましいでしょう。それにより、購入した美術品の評価額が低額であったため、相続人が不公平さを訴えてトラブルになるのを防ぐことができます。また、相続が開始してから専門家に鑑定してもらう負担を、相続人にかけずに済みます。

妻に美術品を相続させるときの遺言書の例文を、下に掲載します。

1.妻 ALG花子(昭和○○年○月○日生)に次の財産を相続させる。

(1)作品名:○○○○
   制作者名:○○○○
   種類:日本画
   素材:○○
   類型:人物画
   サイズ:〇号
   制作日:昭和○○年〇月〇日

(2)作品名:○○○○
  ※制作者名等の表記省略

株式を相続させる

遺言書によって株式を相続させるときには、どの金融機関で管理している株式か、どの会社の株式を何株相続させるか等を明記しましょう。
上場会社の株式と非上場会社の株式では、書き方が変わるため注意が必要です。

妻に株式を相続させるときの遺言書の例文を、下に掲載します。

1.妻 ALG花子(昭和○○年○月○日生)に次の財産を相続させる。

(1)上場会社株式
   管理金融機関:〇〇証券株式会社
   取扱支店:○○支店
   口座番号:○○○○
   銘柄:○○ホールデングス
   コード番号:○○○○
   数量:1万株

(2)非上場会社株式
   ALG太郎名義の〇〇株式会社(本店:東京都○○区○○町○丁目)の株式300株

子供がいない

子供がいない夫婦が、配偶者に全財産を相続させるときには、有効な遺言書を作成することが何よりも重要です。子供がおらず、被相続人の両親も死亡しているときは、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となりますが、兄弟姉妹には遺留分が認められないため、配偶者に全財産を相続させることが可能です。

上記のとおり、兄弟姉妹には遺留分は認められませんが、代襲相続は認められるため、あまり縁のない甥や姪に相続させるよりは、配偶者にできるだけ財産を残してあげたいと思うようなケースでは、遺言書は有効でしょう。

望ましい文例は、全財産を1人に相続させるときと同様です。

1.妻 ALG花子(昭和○○年○月○日生)に次の財産を相続させる。
※財産の詳細を表記

2.その他遺言者に属する一切の財産は、妻 ALG花子に相続させる。

3.遺言者は、本遺言の執行者として妻 ALG花子を指定する。

寄付をする

遺言書によって寄付をするときには、寄付を受けた相手方が困らないようにしましょう。例えば、過疎地の土地や未公開株のような換金しづらい財産を寄付することは不適切です。

また、「財産の半分を寄付する」といった文言を用いると、借金等も半分を寄付してしまうことになるため、相手方に迷惑をかけてしまうリスクがあるので注意しましょう。

なお、寄付は、法的には遺贈という形式になります。また、遺言執行者を選任しておくと手続きがスムーズに進みます。

財産を寄付するときの遺言書の例文を、下に掲載します。

1.NPO法人○○(所在地:東京都○○区○○町○丁目)に、次の財産を遺贈する。

(1)現金500万円
(2)○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○

2.妻 ALG花子(昭和○○年○月○日生)に次の財産を相続させる。
※財産の詳細を表記

3.遺言者は、本遺言の執行者として妻 ALG花子を指定する。

法定相続人以外へ相続させる (遺贈)

遺贈とは、遺言書によって法定相続人でない者に財産を贈ることです。遺言書に明記しておくことにより、親しい友人や世話になった人、あるいは特に可愛がっている孫等に財産を分けることができます。

このとき、借金を贈らないことや受け取って困る財産(廃墟や原野等)を贈らないこと、そして法定相続人の遺留分を侵害してトラブルを招かないこと等に注意しましょう。

財産を遺贈するときの遺言書の例文を、下に掲載します。

1.孫 ALG太郎(平成○○年○月○日生)に、○○銀行○○支店 定期預金 口座番号○○○○を遺贈する。

2.妻 ALG花子(昭和○○年○月○日生)に次の財産を相続させる。
※財産の詳細を表記

3.遺言者は、本遺言の執行者として妻 ALG花子を指定する。

遺贈について詳しく知りたい方は、こちらの記事を併せてご覧ください。

遺言執行者を指定する

遺言書によって遺言執行者を指定するときには、遺言書の内容を実現するために動いてくれる、信用できる者を指定するのが望ましいでしょう。遺言執行者を指定しておけば、遺言書の内容を実現するための手続きができるので、取り分の少ない相続人が協力を拒んだために手続きが滞ることを防げます。

しかし、多忙な人や面倒くさがりな人を選んでしまうと、手続きを放置されてしまうリスクがあるため注意しましょう。

遺言執行者を指定するときの遺言書の例文を、下に掲載します。

1.妻 ALG花子(昭和○○年○月○日生)に次の財産を相続させる。
※財産の詳細を表記

2.その他遺言者に属する一切の財産は、妻 ALG花子に相続させる。

3.遺言者は、本遺言の執行者として妻 ALG花子を指定する。

遺言書の変更・撤回の方法

遺言書を作成したとしても、新しい遺言書を作成することによって変更や撤回が可能です。遺言書の書き直しは何回でも可能であり、異なる内容の遺言書がいくつも存在しているときには、日付が最新のものが有効となります。

もしも、遺言書の一部だけを変更したいのであれば、二重線で消して押印し、変更後の内容であることが分かるように記入する方法も用いることができます。しかし、変更する範囲が広いケース等では、トラブルを避けるために全文を書き直すのが望ましいでしょう。

作成した遺言書の効力を失わせることだけが目的であれば、自筆証書遺言は破棄してしまえば良いでしょう。一方で、公正証書遺言の場合には、手元にある遺言書を破棄しても、原本は公証役場にあるため破棄したことになりません。公証役場で撤回するか、新しい遺言書を作成するようにしましょう。

なお、自宅等の建物や土地を遺言書によって相続させようと考えていたものの気が変わったときには、建物や土地を売却すれば、その部分について遺言書を撤回したのと同様の効果を生じさせることができます。

遺言書の書き方についてのQ&A

認知症の疑いがあっても、遺言書を書くことは可能ですか?

認知症の疑いがある方や、認知症だと診断された方であっても、有効な遺言書を作成できる場合もあります。
たとえ認知症であっても、軽度である場合等、遺言能力が失われていないケースが少なくありません。遺言能力が残っていれば、遺言書は有効になります。

しかし、遺言能力が遺言書の作成時に残っていたことを証明するのは簡単ではありません。それを判断するためには、医学的な判断や日常における言動の観察、遺言内容の合理性等が重要視されます。

例えば、生前に「長男に家を継がせたい」と言っていた被相続人が、特段の理由もなく「二男に全財産を相続させる」旨の遺言書を作成していた場合には、遺言内容の合理性が疑われることになるでしょう。

目に障害があり自筆での遺言書が書けません。どのような方法なら遺言書を作成できますか?

目に障害があり遺言書を自筆できない場合には、公正証書遺言を作成すると良いでしょう。公正証書遺言の書面を作成するのは公証人であるため、遺言者が自筆する必要がありません。手など、身体の他の部位に障害があるため、自筆が困難である場合についても同様です。

なお、歩行が困難である等の理由で公証役場に行くのが難しいケースであっても、公証人に出張してもらい公正証書遺言を作成することができます。

遺言書の書き方には多くの決まりごとがあります。遺言書の書き方は弁護士にご相談ください

せっかく遺言書を作成しても、法的に有効なものでなければ、望むような相続が実現できないかもしれません。公正証書遺言を作成すれば無効になるリスクは低くなりますが、費用がかかりますし、相続財産の調査等の手続きを行ってもらえるわけではありません。

そこで、遺言書を作成したい方は弁護士にご相談ください。弁護士であれば、遺言書を作成する方の考えを尊重しながら、犯しがちなミスを防いで、なるべくトラブルにならないような内容にするためのアドバイスができます。

特に、親族関係が良好でない方や、価格を評価するのが難しい財産の多い方等は、弁護士に相談することによって不安を解消できますので、ぜひご検討ください。