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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
亡くなった方の相続人から遺留分侵害額請求を受けて、「どう対応すべきかわからない・・」と不安になる方も多いでしょう。 遺留分侵害額請求を受けたら、たとえ心当たりがなくても放置すべきではありません。適切に対応しないまま放置すると、最終的に裁判を起こされる可能性もあるためです。 この記事では、遺留分侵害額請求をされたときの対処法や注意点をわかりやすく解説します。
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遺留分侵害額請求とは、遺留分を受け取れなかった相続人が、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを他の相続人などに請求できる制度です。 遺留分とは、法律で守られた「相続財産の最低限の取り分」のことで、被相続人本人の意思であっても容易に奪うことはできません。 そのため、遺留分権利者は、他の相続人や受遺者に対して“遺留分侵害額請求権”を行使することが可能です。 なお、2019年7月の法改正によって“遺留分減殺請求権”から名称が変更され、現物ではなく金銭を請求する仕組みに改められました。
遺留分侵害額請求を受けた後の一般的な流れは、以下のとおりです。
なお、調停をせずに訴訟を起こすことは原則として認められません。訴訟の前に調停を行わなければならないという考え方を「調停前置主義」といいます。 調停は裁判所で行われますが、あくまでも話し合いであり、強制的に結論が出されるわけではありません。そのため、基本的には調停で結論が出なかった場合にのみ、訴訟による解決が図られます。
遺留分侵害額請求をされたら、まずは以下の4つのポイントを確認しましょう。
請求されても「実際は支払う必要がなかった」と判明するケースもあるため、具体的に確認すべきポイントを次項で押さえておきましょう。
遺留分侵害額請求通知書が届いた場合は、遺留分権利者からの請求であるかどうかを確認しましょう。 たとえば、被相続人の兄弟姉妹は遺留分権利者ではないので、遺留分は請求できません。 また、被相続人の子供が相続人になる場合は、被相続人の両親などの直系尊属も遺留分を請求できません。 他にも、「相続放棄をした人」や「相続欠格または相続廃除によって相続権を失った人」も遺留分は認められないため、まずは誰からの請求なのかをしっかり確認しましょう。 遺留分権利者や、相続廃除・相続欠格になる人について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺留分侵害額請求権は、次のいずれかの期間を経過すると時効になります。
これらの期間を経過した後に遺留分侵害額請求を受けた場合は、消滅時効を援用することで遺留分を支払う必要はなくなります。 時効が過ぎていないか、内容証明郵便の日付などを確認しましょう。
相手の計算が間違っている可能性もあるので、請求された遺留分侵害額が適正かをしっかり確認しましょう。 たとえば、相手が遺留分に相当する財産を受け取っている場合、そもそも遺留分を侵害されていないため支払う必要はありません。 相続人が数人いる場合、遺留分の金額は以下の式で計算します。
各相続人の遺留分の金額=遺留分の全体の金額×法定相続分
遺留分の全体の金額は、遺留分権利者が両親や祖父母などの直系尊属だけであれば相続財産の1/3、それ以外の場合は相続財産の1/2とされています。
遺産全体の金額を評価するには、不動産や株式などの金額を正確に評価しなければなりません。また、遺産の金額に加えるべき「生前贈与」などについても確認する必要があります。 遺留分の金額が正しいかどうか分からない場合は、弁護士などの専門家に相談することもご検討ください。
遺留分侵害額請求をしてきた人に、特別受益がなかったかを確認しましょう。 特別受益とは、財産の遺贈や一定の目的による生前贈与で受けた利益のことです。特別受益が考慮されれば、侵害した遺留分が減り、相手に支払う金銭を減額できる可能性があります。 遺留分は、相続開始時の財産額ではなく、特別受益などの価額を含めたすべての財産額から算出します。
すべての財産額(基礎財産)=積極財産+特別受益などの贈与財産の価額-消極財産
特別受益について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺留分侵害額請求をされた場合、以下のどちらの方針をとるかによって対処法が変わります。
相手方の請求が正当で支払いに応じる場合、主に支払方法について交渉します。 2019年7月1日以降の相続では、遺留分侵害額を金銭で支払うのが基本です。 資金が足りず、すぐに支払えない場合は、減額や分割払い、支払期限の延長など、無理なく支払える方法を相手方と話し合いましょう。 交渉が成立したら、後のトラブル防止のため、合意できた内容を書面に残すことが大切です。 なお、交渉がうまくいかない場合でも、裁判所に“期限の許与”を求めることで、支払期限の延長が認められる場合があります。裁判所が決めた期限内に支払えば、遅延損害金は発生しません。
相手方に請求する権利がない場合や、請求額に納得できない場合は、請求を認めない方針で対応する必要があります。まずは相手方と話し合い、合意に至らなければ相手方の所在地を管轄する家庭裁判所に調停を申し立てましょう。 調停では、調停委員を交えて話し合いを行いますが、合意に至らない場合は「調停不成立」となります。その後、相手方が遺留分侵害額請求訴訟を起こせば、裁判所が最終的な判断を下す流れになります。 遺留分侵害額請求を受けて相手方と交渉する際は、紛争の蒸し返しを防ぐため、以下のような対応を取りましょう。
遺留分侵害額請求を受けたときは、不利な結果を避けるためにも以下の点に注意しましょう。
遺留分侵害額請求を受けた場合、無視したり放置したりせず、適切に対応することが重要です。 対応が遅れると、本来は話し合いで済むはずの問題が調停や訴訟に発展し、紛争が深刻化するおそれがあります。 遺留分侵害額請求は、多くのケースで“遺留分侵害額請求通知書”が内容証明郵便で届きますが、この通知を無視しても請求がなくなるわけではありません。 むしろ、請求を受けた翌日から法定金利(現在3%)に基づく“遅延損害金”が発生する可能性があるため、時間が経つほど支払う金額も増えてしまいます。 円滑な解決を目指すためにも、請求を受けた段階で速やかに対応し、必要に応じて専門家に相談することも検討しましょう。
寄与分は、遺留分侵害額に影響しません。 寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした相続人について、貢献度に応じて相続分を上乗せして評価する制度です。 遺留分を計算するときの基礎財産に、寄与分は含まれません。 そのため、寄与分があるからといって遺留分が減ることも、寄与分が大きくて他の相続人の遺留分侵害額が小さくなることもありません。 寄与分について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺留分侵害額請求を受けて訴訟を起こされた場合は、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。 訴訟で敗訴してしまうと、財産を強制的に差し押さえられてしまうおそれがあるため、的確な反論を行うことが重要です。しかし、有効な証拠を提示して適切な主張を行うことは容易ではありません。 また、訴訟の手続きは平日の昼間に行われるため、出廷する負担も大きいといえます。 弁護士であれば、訴訟対応も可能であり、依頼人の代理として出廷することもできるため、ご自身の負担を大きく軽減できるでしょう。
弁護士に依頼した場合は、一般的に以下のような費用がかかります。
具体的な金額は、相続財産の金額や依頼する弁護士事務所などによって変動します。 費用が気になる方は、弁護士事務所に問い合わせたり、無料相談で費用を確認したりすると良いでしょう。
遺留分侵害額請求をされた場合、「財産を手放さなければならないのか」「本当に請求額が正しいのか」と不安に思われる方も多いでしょう。 正当な請求であれば応じる必要がありますが、請求や金額の妥当性を判断するためには専門的な知識が必要です。独断で請求を拒否してしまうと、相手方が話し合いを諦め、調停や訴訟に発展する可能性もあります。そのため、早い段階から適切な対応を取り、場合によっては調停や訴訟なども視野に入れることが大切です。 慣れない手続きを適切に進め、ご自身の負担を減らすためにも、遺留分侵害額請求については弁護士にご相談ください。弁護士であれば、当事者同士の話し合いだけでなく、調停や訴訟手続きもしっかりサポートできるため、安心して手続きを任せられるでしょう。