メニュー
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
被相続人に子供が複数いる場合には、被相続人の配偶者を除く相続人が、互いに兄弟姉妹の関係となることが多いです。 また、被相続人に子供がおらず、両親は亡くなっている場合等では、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。 これらの状況で、兄弟姉妹の全員が相続放棄を行うケースについて、全員が同時に相続放棄するメリットや注意点等を本記事で解説します。
来所法律相談30分無料・24時間予約受付・年中無休・通話無料
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
被相続人に複数人の子供がいるような場合、子供は第一順位の相続人であるため、子である兄弟全員が相続人になります。 また、次の場合には第三順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
相続順位について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を併せてご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
被相続人である両親が同時に亡くなった場合には、子供全員が法定相続人となります。そのため、被相続人の子供の法定相続分は、人数によって相続財産を等分したものです。 また、両親のうち片方が亡くなった場合には、配偶者であるもう一方の親の法定相続分は1/2となり、残る1/2を子供全員で等分します。
兄弟姉妹が亡くなったときに自分が法定相続人となるのは、亡くなった兄弟姉妹に子供がおらず、両親が亡くなっている場合等です。 他にも、子供や両親はいるものの相続放棄した場合等が該当します。 被相続人に配偶者がいないとき、法定相続分は兄弟姉妹の人数によって等分したものとなります。一方で、被相続人に配偶者がいるときには、配偶者の法定相続分は3/4となり、残りの1/4を兄弟姉妹の人数によって等分します。
相続放棄とは、被相続人の相続財産を一切受け継がずに放棄することです。 相続放棄は一人一人が行う手続きなので、1通の申請書で複数人が同時に手続きを行うことはできません。しかし、兄弟姉妹の全員が同時に手続きすることによって、被相続人の戸籍謄本などの共通する提出書類が1通で足りるようになります。
相続放棄することによって、現金や預貯金、不動産等のプラスの財産を受け継ぐことはできなくなりますが、被相続人が多額の借金をしている場合等には、そのようなマイナスの財産も背負わずに済むというメリットがあります。 相続放棄によって借金等を相続せずに済むことについて、以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
兄弟間で相続財産を奪い合うような主張が行われている場合、相続放棄をすると、その争いに巻き込まれないで済むことがメリットです。 相続に関する争いから距離を置くことによって、話し合いがまとまるまでの時間や全員が合意するまでの手間、そしてストレスがかからずに済みます。
相続放棄をすれば、自身の兄弟姉妹の法定相続分が増える場合があります。兄弟姉妹が被相続人と共に事業を行っていた等の事情がある場合には、相続財産を集中させて事業の継続を円滑にすることが可能です。 このとき、相続放棄をすると法定相続人の人数が減ってしまうため、相続税の基礎控除額が減少し、結果的に相続税の負担が重くなってしまうおそれがあります。そのため、本当に相続放棄するべきなのかについて慎重に検討する必要があります。
相続放棄は各自で申し立てることができるので、複数の法定相続人がいる場合であっても、1人だけで手続きが可能です。法定相続人の1人が相続放棄すると、他の法定相続人の相続分が増えることになります。 ここで、相続放棄を行ったとしても、他の法定相続人に対して自動的に通知されることはありません。そのため、相続財産に多額の借金等があると、より多く相続することになってしまう他の相続人から迷惑だと思われるおそれがあります。 相続放棄する場合には、他の相続人等へ事前に知らせておくことが望ましいでしょう。
兄弟姉妹全員で相続放棄を行うと、相続財産に多額の借金等がある場合には、そのようなマイナスの財産を受け継がずに済みます。しかし、兄弟姉妹のうち一部の者だけが相続放棄をすると、他の兄弟姉妹に対する借金の取り立て等が行われるおそれがあるため、相続放棄する場合には、他の相続人にも事前に相談するようにしましょう。 兄弟姉妹の全員で相続放棄を行うと決めたのであれば、1人ずつ別々に相続放棄するのではなく、まとめて相続放棄を行うと、以下のようなメリットがあります。
相続人全員が相続放棄しても不動産などの保存義務は残るため、相続財産清算人が管理を開始するまで、相続放棄した者は「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」相続財産を保存しなければなりません。 ただし、2023年4月から施行された改正民法により、相続財産を管理する義務を負うのは、相続放棄をしたときに「現に占有している」財産(事実上、支配、管理していた財産のこと)に限定されました。そのため、例えば遠方に住んでおり相続財産を占有していなかった者はその財産について管理義務を負いません。 なお、相続財産清算人は、被相続人の債権者等の利害関係人の申し立てによって、家庭裁判所が選任します。 相続財産清算人の選任を申し立てるときには、報酬等に充てるために予納金を支払う場合があり、多いケースでは100万円程度が必要となります。 相続財産清算人によって清算された相続財産は、最終的には国庫に納められます。
相続放棄を行うときの主な注意点について、次項より解説します。
相続放棄をすると、次順位の法定相続人に相続権が移ります。そのため、相続財産に多額の借金等が含まれていることを理由として相続放棄すると、他の相続人に迷惑をかけることになりかねません。 トラブルを防ぐためにも、相続放棄によって相続人になる可能性のある親族等に対して、相続放棄をすることを事前に伝えておくようにしましょう。 また、自分の兄弟姉妹がいるケースでは、相続放棄によって1人あたりの法定相続分が増加します。相続財産が多額の借金等である場合には、相続人全員が同時に相続放棄を申し立てることが望ましいでしょう。
相続放棄をすると、相続財産に含まれる不動産や預貯金等すべての相続財産が相続できなくなります。そのため、相続放棄する際には、本当にすべての相続財産を手放しても良いのかについて熟慮しなければなりません。 また、相続放棄を行った後で、相続財産として高額な不動産や金品等が発見されたとしても、基本的に相続放棄を撤回することはできません。手続きを行う前に、十分に相続財産を調査しましょう。 相続財産に、思い入れのある実家等の財産があるため手放したくない場合には、限定承認を行う方法も考えられます。限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する方法であり、被相続人と疎遠だったために借金の金額が分からない場合等にも利用されます。 限定承認について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
代襲相続とは、本来であれば相続する予定だった者が被相続人よりも先に亡くなってしまった場合に、その者の子供が代わりに相続することです。 子供が先に亡くなっていれば孫が、孫も先に亡くなっていればひ孫が代襲相続します。 一方で、被相続人の兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その子供である甥姪が代襲相続しますが、甥姪も先に亡くなっていた場合には甥姪の子供は代襲相続しません。 なお、被相続人の子供や兄弟姉妹が相続放棄をすると、最初から相続人でなかったと扱われるため、孫や甥姪は代襲相続できなくなるので注意しましょう。
相続放棄の期限は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内です。基本的に被相続人の死亡の事実を知ったときが、「自分のために相続の開始があったことを知った時」となります。 期限が過ぎると単純承認したとみなされるため、借金等も含めてすべての相続財産を相続することになります。被相続人が多額の借り入れをしている場合等には、期限までに相続の方法を選択しましょう。 相続の方法には、単純承認や相続放棄だけでなく限定承認もあります。相続財産に高額な不動産等があるものの、どの程度の借り入れをしているのかが分からないケース等では限定承認についても検討すると良いでしょう。 限定承認等の相続の方法については、以下の記事で解説しているのでご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
相続放棄は、主に次のような流れで行います。
①相続放棄申述書を作成し、被相続人の戸籍謄本等の必要書類を集める
②相続放棄申述書などの必要書類や費用(収入印紙800円分と郵便切手)を家庭裁判所に提出する
③家庭裁判所から「相続放棄照会書」と「相続放棄回答書」が送られてくる
④「相続放棄回答書」に必要事項を記入して返送する
⑤相続放棄が受理されれば「相続放棄申述受理通知書」が届く
兄弟姉妹が全員で同時に相続放棄を行えば、被相続人の戸籍謄本等の必要書類が1通で済みます。ただし、相続放棄申述書は全員分作成しなければならないので注意しましょう。 相続放棄の手続きについて詳細に知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
相続放棄を行うべきかについては、まず相続財産を調査しなければ判断できません。相続財産を調査した結果として、プラスの財産が多いことが分かれば遺産分割協議を行う必要があります。 一方で、借入金等のマイナスの財産が多いと判断したときには、相続放棄するか限定承認するかについて決断する必要があります。 そこで、被相続人の相続財産の状況が不明な場合等には弁護士にご相談ください。弁護士であれば、相続財産調査や遺産分割協議の代理人、相続放棄などの手続き等について依頼を受けることが可能です。 もしも全員で相続放棄するならば、相続財産清算人になることもできます。相続に不安のある方は、ぜひお早めにご相談ください。