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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
内縁関係とは、法律上の夫婦関係ではないものの、実態として夫婦同然の生活をする関係のことです。 様々な理由によって内縁関係を選択する夫婦が存在しますが、法律上の配偶者とは異なり、内縁の夫や妻には相続権が認められません。そのため、内縁の配偶者に相続財産を受け取ってもらいたい場合には、生前の対策が重要となります。 この記事では、内縁関係である夫婦の相続における扱いや、内縁の配偶者に相続財産を受け取ってもらうための方法、内縁の配偶者の相続に関する注意点等について解説します。
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内縁の妻や夫に相続権はありません。これは、法律上の配偶者でなければ、法定相続人にはなれないからです。 法定相続人とは、民法によって相続権が認められている人のことをいいます。法定相続人とは認められていない人が、被相続人が遺した財産を受け取るためには、被相続人に生前の対策を行ってもらうか、特別縁故者として認められる必要があります。
内縁とは、婚姻届を出していないことから、法律上の夫婦関係とは認められないものの、当事者の認識や生活の実態からみて夫婦同然の生活をしている関係のことです。 内縁のことを「事実婚」と呼ぶこともありますが、実態としては事実婚も内縁も違いはとくにありません。 ただし、自分と相手方が内縁関係だと思っていても、客観的にみて内縁だと認められるとは限りません。認められるために、なるべく以下の要件を満たすようにしましょう。
内縁関係の夫婦の子供は、認知されていれば父親の相続権が認められます。 法律上の婚姻関係が成立していない女性から生まれた子供は非嫡出子となり、血縁上の父親とは法律上の親子関係が認められません。そのような子供が父親の財産を相続するには、父親に認知手続きをしてもらい、法律上の親子関係を成立させる必要があります。 また、内縁の配偶者に連れ子がいる場合には、養子縁組をすることによって法定相続人と認められるようになります。 なお、非嫡出子と嫡出子の法定相続分は、以前は違いが設けられていたものの、現在は同じとされています。
嫡出子 | 法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子供 |
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非摘出子 | 法律上の婚姻関係が成立していない男女の間に生まれた子供 |
連れ子の相続について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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内縁の配偶者には相続権がないものの、以下の方法で財産を遺すことができます。
これらの方法について、次項より解説します。
生前贈与とは、個人が生きているうちに財産を他者へ贈与する契約です。あくまでも契約であるため、一方的に生前贈与をすることは基本的に認められず、双方の合意によって契約が成立します。 内縁の配偶者の名義で預貯金の口座を作成して財産を遺そうとした場合、口座を管理している者が贈与をした者であると、実質的には贈与者の財産、すなわち相続財産として扱われるおそれがあります。そこで、配偶者名義の口座は名義人本人が管理するとともに、贈与についての双方の合意を証明するために、贈与契約書を作成することが望ましいです。 生前贈与には贈与税がかかり、相続税よりも税額が高くなりがちです。しかし、毎年110万円までの非課税枠があるため、この範囲内で生前贈与を行うことによって贈与税がかからなくなります。 ただし、毎年同じ金額を同じ時期に贈与する等の方法を用いると、事前に決めた金額の分割払いとみなされて、一括払いしたときの金額に贈与税がかけられてしまうおそれがあるので注意しましょう。 なお、内縁の配偶者への生前贈与が、贈与者が亡くなる前の1年以内に行われたものであると、被相続人の法定相続人から遺留分侵害額請求を受けるおそれがあるので注意しましょう。
被相続人が生前に遺言書を作成し、「内縁の配偶者に財産を譲渡する」旨を記載していれば、内縁の配偶者であっても相続財産を受け取ることができます。 遺言書は法定相続よりも優先されるため、被相続人に法定相続人がいたとしても遺言書の効力は失われません。 遺言書によって、法定相続人以外の第三者が相続財産を贈られることを「遺贈」といいます。遺言書に形式的なミス等があって無効になると、遺贈も無効となってしまうため注意しましょう。 また、特定の不動産のみを対象とした遺贈では、相続ではかからない不動産取得税がかかるおそれがあり、所有権移転登記のためにかかる登録免許税が高額になることも気に留めておくようにしましょう。 遺贈について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を併せてご覧ください。
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被相続人が、「内縁の配偶者に全財産を遺贈する」旨の遺言書を作成していたとしても、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分があります。 遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障されている、相続財産の最低限の取り分です。遺留分を侵害する遺言書を作成してしまうと、遺留分侵害額請求によって侵害した遺留分に相当する金銭を請求されるおそれがあります。 請求された金銭を支払えなければ、不動産等を処分する必要が生じるなど、想定外の事態に陥るリスクがあります。そのため、遺留分に配慮した遺言書を作成するために、事前に弁護士に相談することをおすすめします。 遺留分侵害額請求について詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。
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特別縁故者とは、被相続人に法定相続人がいない場合において、家庭裁判所から特別に認められて相続財産を受け取ることのできる人をいいます。 内縁の配偶者のように、法定相続人ではない人が特別縁故者と認められるためには、「被相続人と生計を同じくしていた」等の要件を満たす必要があります。また、家庭裁判所に申し立てて、特別縁故者として認定される必要があります。 なお、特別縁故者と認められるためには、被相続人に法定相続人がいないか、法定相続人の全員が相続放棄を行っている必要があります。 また、分与される相続財産の価額は裁判所が決定するため、全額を受け取れるとは限りません。 さらに、内縁の配偶者が特別縁故者だと認められたとしても、法律上の配偶者に認められている相続税の配偶者控除を受けることはできません。むしろ、相続税の2割加算の対象となるため、税の負担は重くなります。 特別縁故者として認められるための要件等について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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生命保険金の受取人を内縁の配偶者にすることによって、保険金を遺すことができます。生命保険金は受取人固有の財産とされているため、基本的には相続財産として扱われず、相続人と分け合う必要がありません。 ただし、相続財産がほとんどなく、生命保険金が高額である場合等では、例外的に生命保険金も相続財産として扱われるケースがあります。 生命保険金の受取人は、一般的には法律上の配偶者か2親等以内の血縁者に限定されているため、内縁の配偶者を指定できない場合があります。 そのため、内縁の配偶者を受取人に指定するときには、保険会社の審査を受けることになります。 また、生命保険金は相続税の課税対象として扱われます。内縁の配偶者は、生命保険金の非課税枠である「500万円×法定相続人の数」について法定相続人とカウントされません。 加えて、内縁の配偶者は、相続税の2割加算の対象となるため、法律上の配偶者よりも税負担が重くなるおそれがあります。
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内縁の配偶者に相続権はありませんが、法律上の配偶者と同様の権利が認められることがあります。 内縁の配偶者であっても認められる権利について、次項より解説します。
内縁の配偶者には、被相続人と同居していた不動産が居住用建物の借家であり、相続人がいない場合、賃借人の地位の承継が認められるケースがあります。 また、相続人がいても、相続人が相続した賃借権を援用することにより引き続き居住できる可能性があります。 なお、借地権の相続について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺族年金とは遺族厚生年金のことで、被保険者が亡くなった際に遺族に対して支給される年金です。遺族には内縁の配偶者も含まれることがあります。 年金受給には、内縁関係にあった事実と、被相続人によって生計を維持されていたことを証明する必要があります。
内縁の配偶者が相続財産を受け取ろうとすると、法律上の配偶者が相続するときとは異なる点に注意しなければなりません。 内縁の配偶者の注意点について、次項より解説します。
内縁の配偶者であっても、死亡届を提出して火葬許可証を発行してもらうことができますが、被相続人と内縁の配偶者との関係が戸籍で確認出来ないと、互いの関係を証明するために多くの時間を要するおそれがあります。 手続きをスムーズに進めるためには、住民票によって同居していることを証明できるようにしておくことが望ましいでしょう。届出を行うと、住民票の「世帯主との続柄」を記載する欄には「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されます。
一定の金額以上の相続財産がある場合、その相続財産を受け取ると相続税が課されます。そして、内縁の配偶者が相続財産を受け取ると相続税の金額が2割加算されます。 相続税が2割加算されるのは、相続人ではない人が相続財産を受け取ることについて、偶然性が高く税負担を重くしても問題が生じにくいからです。法律上の配偶者であれば、相続した分の価値が1億6000万円までであるか、もしくは法定相続分相当額であれば、相続税が加算されません。
相続税には様々な控除が設けられていますが、内縁の配偶者には適用されない控除等が数多くあります。 内縁の配偶者が受けられない控除等として、主に以下のようなものが挙げられます。
●相続税の基礎控除
相続税の基礎控除は誰でも受けられる控除ですが、最低額の3000万円に、法定相続人1人につき600万円が上乗せされます。しかし、内縁の配偶者は法定相続人ではないため、600万円の基礎控除を上乗せすることができません。
●相続税の配偶者控除
相続税の配偶者控除とは、配偶者が受け取った相続財産が1億6000万円以下であるか、法定相続分の範囲内であれば、相続税が非課税となる控除です。配偶者控除が受けられるのは法律上の配偶者のみであり、内縁の配偶者は受けることができません。
●障害者控除
障害者控除とは、法定相続人が障害者であった場合に受けられる控除です。しかし、内縁の配偶者は法定相続人ではないため、控除を受けることができません。
●小規模宅地等の特例
小規模宅地の特例とは、自宅用の土地等について、税価格を最大で80%まで減額できる制度です。しかし、この特例は親族が土地を相続した場合のみ適用されるため、親族でない内縁の配偶者には適用されません。
相続税の税額控除について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を併せてご覧ください。
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被相続人が亡くなった後に内縁の妻の子供が生まれた場合、その子は死後認知によって相続権を得ることが可能です。 死後認知とは、父親の死亡後に、非嫡出子との間に法律上の親子関係を成立させるための手続きです。そのためには、「認知の訴え」を提起する必要があります。訴えは、検察官を被告人として提起します。 ただし、死後認知によって父親との親子関係が認められたとしても、その時点で遺産分割協議が成立していた場合には、他の相続人に対して相続財産をそのままの形で請求する方法は取れず、金銭の請求のみ行うことができます。
内縁の配偶者は、寄与分や特別寄与料を受け取ることができません。 なぜなら、内縁の配偶者は相続人や被相続人の親族でないため、寄与分や特別寄与料を請求することが認められていないためです。
・寄与分とは
被相続人の介護等の労務を提供するか、自身の財産を提供することによって、相続財産の維持や増加に貢献した相続人について相続分を上乗せする制度
・特別寄与料とは
被相続人の介護等の労務を提供して相続財産の維持や増加に貢献した親族について、相続人に対して金銭を請求する権利を与える制度
内縁の配偶者は、寄与分や特別寄与料を請求できる「相続人」や「親族」に該当しないため、どちらも請求することができません。 寄与分や特別寄与料について詳しく知りたい方は、以下の各記事をご覧ください。
内縁の夫名義の家に住んでいた場合、夫が死亡すると、基本的に内縁の妻は退去しなければなりません。 2020年に施行された改正民法よって、被相続人名義の不動産について、配偶者が亡くなるまで居住できる「配偶者居住権」が設けられました。しかし、これは法律上の配偶者のみに与えられる権利であり、内縁の配偶者には与えられません。 そのため、遺言書の作成等の対策が必要となります。
内縁の配偶者には相続権がないため、自身の死後に大切なパートナーが困らないようにするために、生前にしっかりと対策しておく必要があります。 財産を確実に引き継ぐためには、生前贈与を行うことや、遺言書を作成することがおすすめです。ただし、贈与税や相続税の負担について対策することや、遺留分を請求されないように配慮することが必要となります。 弁護士であれば、内縁関係の夫婦の双方について、自分が亡くなったときにパートナーが困らないような対策を考えることができます。また、無効とならず遺留分にも配慮した遺言書を作成するためのアドバイスをすること等も可能です。 トラブルを回避するためにも、ぜひ相続問題に精通した私たち弁護士にご相談ください。