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代襲相続とは?範囲はどこまで?相続割合などわかりやすく解説

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

相続人となれるのは、被相続人の配偶者と子、両親等、兄弟姉妹に限られており、基本的には孫や甥・姪は相続人になる資格がありません。しかし、被相続人より先に法定相続人が亡くなった等の事情がある場合には、例外的に孫や甥・姪が「代襲相続」することができます。 そもそも「代襲相続」とはどのような制度なのか、代襲相続の範囲はどこまでか、遺留分の扱い、相続放棄した場合などについて解説していきます。代襲相続についてお困りの方にお役立ていただければ幸いです。

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代襲相続とは

代襲相続とは、被相続人よりも先に法定相続人が死亡している場合に、法定相続人の子が代わりに相続人になることです。 代襲相続は、以下のような場合に発生します。

  • 被相続人が亡くなった時やその他相続が始まった時点で、被相続人(亡くなった人)の子や兄弟姉妹が既に亡くなっている
  • 被相続人が亡くなった時点で、被相続人(亡くなった人)の子や兄弟姉妹が相続廃除や相続欠格により相続権を既に失っている

これらのうち、「相続廃除」と「相続欠格」については次項で解説します。

相続廃除

相続廃除とは、被相続人自身の意思で、特定の相続人の相続権を失わせることをいいます。 相続廃除は、家庭裁判所の審判で認められることによって成立しますが、人の権利を奪うものである以上、被相続人本人の望みであっても簡単には認められません。次のような事情があり、相続人を廃除することが相当だと家庭裁判所が認めてようやく相続廃除がなされます。

  • 相続人が、被相続人を虐待していた
  • 相続人が、被相続人に日常的に暴言を吐くなど侮辱していた
  • 相続人が、ひどい非行に走っていた(重大な犯罪を行った、被相続人の財産を奪った、多額の借金の返済を被相続人にさせたなど)

法定相続人が相続廃除されると、代襲相続が発生することがあります。 相続廃除の詳しい手続方法など、より詳細について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

相続欠格

相続欠格とは、相続人が民法で定める欠格事由に該当する行為を行った場合に、その相続人の相続権を失わせる制度です。 相続人が相続欠格に該当する場合には、代襲相続が発生することになります。 相続財産を手に入れるために、以下のような不正行為を行った者は、特別な手続きなく自動的に相続欠格となります。

  • 故意に被相続人や他の相続人を死亡させた、または死亡させようとした
  • 被相続人が殺害されたことを知りながら黙っていた
  • 詐欺や強迫によって遺言を作成させた、撤回させた、または内容を変更させた
  • 遺言書を偽造したり、隠したりした

相続放棄をした場合は代襲相続ができない

相続人が相続放棄をした場合、相続人の子に代襲相続は起こりません。なぜなら、相続廃除や相続欠格とは違い、相続放棄の手続きをすると、初めから相続人ではなかったものとして扱われるからです。 つまり、相続廃除や相続欠格のように、本来相続人となるはずだった人が相続権を失ったケースではないので、相続放棄をしたときは後の世代に相続権は引き継がれません。

代襲相続の範囲と相続割合

代襲相続が起こる相続人の範囲

代襲相続は、被相続人の孫や甥・姪がすることができます。 ただし、被代襲者に相続権が回ってきていない段階では、代襲相続も起こりません。

  • 被相続人よりも先に子が亡くなっている場合には、被相続人の孫が代襲相続します
  • 被相続人に子や孫がおらず、両親や祖父母、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、亡くなった兄弟姉妹の子が代襲相続します

また、代襲相続人は、被代襲者の相続分をそのまま引き継ぎます。つまり、被代襲者の法定相続分(法律で定められている相続割合)が代襲相続人の法定相続分となります。 代襲相続人が複数いるケースでは、被代襲者の相続分を代襲相続人の人数で等分して引き継ぎます。 なお、被相続人の父母が死亡しているケースでは、祖父母や曾祖父母といった上の世代が相続します。ただし、これは代襲相続ではなく、通常の相続とされています。 通常の相続における相続順位についての詳しい解説をご覧になりたい方は、下記の記事をご参照ください。

孫が相続人になるケース

孫が相続人になるケース

上図の例では、被相続人の子が被相続人である親より先に亡くなっているので、以下の様になります。

【法定相続人の範囲】
被相続人の配偶者と孫2人
※上の図における被相続人の子の配偶者は相続人になりません

【法定相続割合】
相続人 法定相続分
配偶者 2分の1
2分の1(既に亡くなっているため、実際には相続しません)
子の配偶者 なし
各4分の1(子の法定相続分である2分の1を、孫2人で2等分します)

甥・姪が相続人になるケース

被相続人より先に、本来相続人となるはずだった兄弟が亡くなっているので、以下の様になります。

【法定相続人の範囲】
被相続人の配偶者と甥、姪
※被相続人の兄弟の配偶者は相続人に含まれません

【法定相続割合】
相続人 法定相続分
配偶者 4分の3
兄弟 4分の1(既に亡くなっているため、実際には相続しません)
兄弟の配偶者 なし
8分の1(兄弟の法定相続分である4分の1を、甥・姪で2等分します)
8分の1(兄弟の法定相続分である4分の1を、甥・姪で2等分します)

再代襲のケース

再代襲は、代襲相続人が被相続人よりも先に亡くなっていた場合、さらにその子が代わりに相続することです。 例えば被相続人よりも先に被相続人の子と、被相続人の子の子(被相続人の孫)が亡くなっていると、被相続人の孫の子(被相続人のひ孫)が相続します。 子の代襲相続は1代限りで終わるわけではないので、孫からひ孫、ひ孫から玄孫へと、何代にもわたって続いていきます。 一方で、被相続人の兄弟姉妹の子である甥・姪の子以下の世代には、再代襲は認められていません。これは、被相続人の甥・姪より下の世代に代襲相続を認めてしまうと、被相続人との関係性がかなり薄い者まで相続できるようになってしまうからです。 そのため、昭和55年に民法が改正されて、被相続人の甥・姪より下の世代の代襲相続が認められないことになりました。

養子の子は代襲相続人になれないケースもある

養子の子は、養子縁組の後で生まれた場合のみ代襲相続します。養子縁組の前に生まれていた養子の子は、代襲相続することができません。 そのため、被相続人の子が養子である場合に代襲相続が発生するかは、子の出生日や養子縁組した日によって変わります。 下記の記事では、養子が法定相続人になる具体的なケースや、養子が亡くなってしまったケースでは誰が法定相続人となるのか等、養子に関連する相続問題について解説しています。ぜひご一読ください。

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代襲相続した場合の遺留分

遺留分とは、特定の相続人に保障されている、最低限の相続財産の取得分です。 遺留分は、被相続人の配偶者と子、直系尊属にしか認められません。しかし、代襲相続人は被代襲者の相続権を引き継ぐので、遺留分を有する子の代襲相続人については遺留分も引き継ぎます。 つまり、被相続人の孫には遺留分が認められます。一方で、遺留分のない兄弟姉妹を代襲した甥・姪には遺留分が認められません。 具体的にどの程度の割合が遺留分として認められるのか等、遺留分に関して疑問がある方は、ぜひ下記の記事をお読みください。

代襲相続における相続税の基礎控除

代襲相続人は「法定相続人」に当たるため、代襲相続があると法定相続人の数が増えるケースがあります。法定相続人が増えると、相続税の基礎控除も増えることになります。 相続税の基礎控除とは、遺産から一定の金額を差し引き、残額に対して課税するための控除です。主に、遺族の生活を保障するために控除が行われます。 基礎控除額は、以下の式によって算出します。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

これにより、代襲相続人が1人増えるごとに、基礎控除額は600万円増えることになります。 つまり、代襲相続人が増えるほど、相続税は基本的に減っていくのです。 相続税の基礎控除等について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

代襲相続で起こりやすいトラブル

代襲相続が発生すると、被相続人の孫や甥・姪のように、被相続人や他の相続人との関係性が薄い者が相続します。そして、代襲相続人も含めた全員で遺産分割協議を行う必要があります。 そのため、柔軟な遺産分割や円滑な手続きが難しいことから、次のようなトラブル発生のリスクが高くなります。

  • 他の相続人と代襲相続人の意見が対立して話し合いが進まない
  • 代襲相続人が相続手続に協力してくれない
  • 自身の取り分を増やそうとして、寄与分を主張したり、特別受益の存在を主張したりする

代襲相続人による相続が予想される場合には、トラブルを避けるために、遺言書を残してもらうことをおすすめします。 遺言書がない場合には、弁護士に依頼すれば、調停や訴訟を念頭に置いた対応をしてもらうことができるため、紛争の最終的な解決を図ることが可能となるメリットがあります。

代襲相続の手続きや必要書類

代襲相続が起こった場合、主に次のような流れで手続きを進めます。

  1. ①他の相続人に混ざって遺産分割協議に参加する
  2. ②協議で決めた内容を、遺産分割協議に参加した全員で遺産分割協議書にまとめる
  3. ③相続する財産によっては、相続登記や名義変更等の手続きを行う

なお、遺産分割協議書には、「代襲相続人」という肩書を記載したうえで、代襲相続人本人が署名押印します。 また、代襲相続が起こった場合の相続手続では、通常の相続で提出が求められる書類に加えて、次の書類が必要になります。

  • 被代襲者が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類
  • 代襲相続人全員の戸籍謄本

なお、このような戸籍謄本類を実際にどのように取得するのかは、下記の記事で説明していますのでご覧ください。

また、遺産分割協議書の書式は以下からダウンロードすることができますので、ぜひご利用ください。

遺産分割協議書ダウンロード(Word形式)

代襲相続に関するQ&A

代襲相続をしたくない場合はどうしたらいいですか?

代襲相続をしたくない場合には、相続放棄をする必要があります。例えば、父親が既に死亡しており、父親の父親(祖父)が亡くなった場合には、祖父の代襲相続人になります。このとき、祖父にプラスの財産がほとんどなく、マイナスの財産である借金等が多額であれば、相続放棄によって祖父の借金等を相続するのを防ぐことができます。このケースで、もう1人の相続人がいて、その相続人が全ての借金等を引き受けることを表明したとしても、祖父にお金を貸した者等に「他の相続人が返済します」と有効に主張することは基本的にできません。そのため、必ず相続放棄するようにしましょう。

「代襲相続をさせない」の遺言は有効ですか?

代襲相続人に、相続財産を渡さない旨の遺言書を作成することは可能です。ただし、代襲相続人が孫であった場合には、被代襲相続人である子の遺留分を引き継いでいるので、他の相続人等に対して遺留分侵害額請求を行う権利を有します。 一方で、代襲相続人が甥姪である場合には、遺留分を有していないため、他の相続人等に対して請求することはできません。

代襲相続についてわからないことがあれば弁護士にご相談ください

代襲相続が発生すると、被相続人と関係性の薄い者が相続することになったり、相続人の数が膨れ上がったりします。それにより、なかなか話し合いがまとまらず、トラブルになるリスクが高まります。 さらに再代襲が起これば、ますます相続人の間の関係性が薄まり、手続きも複雑になって負担が増してしまいます。 そこで、代襲相続についてお困りの際には、弁護士に相談することをご検討ください。早いタイミングで弁護士が介入すれば、トラブルが起きることを防ぎ、スムーズに解決できる可能性が高まります。また、複雑な相続手続を代わりに行うこともできます。 代襲相続の問題による身体的・精神的な負担を軽減するためにも、ぜひ弁護士にご相談ください。