メニュー
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
「財産を相続させたくない子供がいる」「親に借金があるので相続したくない」などと考える方は少なくありませんが、法律上、生前に相続放棄することはできません。 相続放棄は、被相続人が亡くなり相続が開始してから、家庭裁判所に申述して初めて成立します。生前に「相続しない」と約束しても法的効力はありません。ただし、遺言書の作成など、代わりにできる対策がいくつかあります。 この記事では、相続放棄の代わりに生前にできる具体的な対策について解説します。
来所法律相談30分無料・通話無料・24時間予約受付・年中無休
0078-6009-3009
メールお問い合わせ
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。 ※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
被相続人が生きている間に相続放棄をすることはできません。 相続は被相続人の死亡によって開始するため、生前は相続権そのものが存在せず、放棄の対象がないからです。 相続放棄は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で申述することでのみ有効となります。生前に「相続しません」と書いた契約書や念書を作成しても、法的効力はありません。たとえば、父が亡くなる前に兄から「相続放棄の書面にサインしなさい」と迫られて署名したとしても、その書面は無効です。相続放棄を希望する場合は、相続開始後に正式な手続きを行う必要があります。
被相続人の生前には相続放棄をすることはできませんが、主に以下のような対策を行えます。
これらの対策を行うことによって、特定の人に財産を遺さないという希望を叶えることや、自分の借金等によって相続人に迷惑をかけるのを防ぐことができます。
被相続人は、遺言書の作成によって、「誰に」「どのような割合で」「どの資産を分配するか」を決めることができます。 遺言書によって全財産の分配を決めてしまえば、特定の人物に自分の財産が分配されてしまうのを防げる可能性があります。 ただし、遺留分を有する者に財産を分配しないと、遺留分侵害額請求によって、遺言書により相続財産を分配された者に対する金銭請求が行われるおそれがある点に注意しましょう。
遺言書を作成する場合には、次の3種類のうち、いずれかを作成します。この3種類のうち、形式的なミス等によって無効となりにくいのは公正証書遺言です。公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、原本が破棄・改ざんされるリスク等が最も低くなっています。 公正証書遺言について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
相続放棄したいと考えている相続人が生前にできることとして、遺留分放棄があります。 遺留分とは、配偶者や子供など特定の相続人に法律で保障された最低限の相続分です。たとえ遺言で「財産をすべて特定の人に渡す」と書かれていても、遺留分を持つ人はその分を請求できます。しかし、遺留分を放棄すれば、他の相続人に財産を多く渡せます。 遺留分の放棄を生前に行うには、相続人本人が家庭裁判所に申し立て、過去に十分な贈与を受けているなど合理的な理由を示し、許可を得る必要があります。 ただし、遺留分放棄はあくまで最低限の取り分を放棄するだけで、相続権そのものを失うわけではありません。被相続人に借金がある場合、その負債も相続することになります。借金を避けたい場合は、被相続人の死亡後に正式な相続放棄の手続きを行う必要があります。 遺留分の放棄について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
特定の相続人に相続させたくない場合は、生前贈与を活用するのが有効です。 生前贈与とは、生きているうちに特定の者に財産を贈与する方法で、希望する人に多くの財産を渡すことができます。 ただし、贈与税がかかる可能性があります。基礎控除は年間110万円までなので、毎年110万円以下で贈与する「暦年贈与」が一般的です。最初から決まっていた金額を分割払いしたとみなされると課税対象になる場合があるため注意が必要です。 相続開始前1年以内の贈与や、10年以内に相続人に行った贈与は遺留分の計算に含まれ、完全な相続対策になるわけではありません。多額の借金がある場合の贈与は、債権者に取り消されるリスクがあるため、専門家に相談しながら進めることが重要です。
生命保険に加入し、保険金の受取人を「財産を渡したくない人以外」に指定すれば、実質的にその人に財産を遺すことができます。さらに、生命保険金の受取人であれば、相続放棄をした人であっても受け取れます。生命保険金は受取人固有の財産とされており、相続財産ではないため、基本的に遺留分侵害額請求の対象にもなりません。 ただし、相続財産がほとんどなく、生命保険金が極端に多い場合には、著しい不公平と判断され、遺留分侵害額請求の対象になるケースがあります。また、生命保険金には相続税がかかります。非課税枠(500万円×法定相続人の数)はありますが、相続放棄をした場合、この非課税枠は適用されないため、税額が高くなる点に注意が必要です。 生命保険と相続の関係等については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
生前に借金等を返済できる見込みが乏しいときには、債務整理を行って相続人に迷惑をかけないようにすることを検討する必要があります。 債務整理によって借金等を削減できれば、相続人の負担を減らせます。ただし、自己破産を行えば、家屋等の不動産や預貯金等の財産も基本的には失うことになるため、慎重に検討しましょう。 債務整理には、大きく分けると3つの方法があります。それぞれの方法について、表でご確認ください。
| 任意整理 | 個別の債権者との直接交渉によって、借金の減額や返済の猶予等を行ってもらう手続き |
|---|---|
| 個人再生 | 裁判所を通じた手続きによって、借金を大幅に減額してもらい、残金を3年程度で返済する手続き |
| 自己破産 | 一定の金額以上の財産をすべて処分して、それを債権者に分配し、残った借金等の支払いを免除してもらう手続き |
被相続人が多額の借金等を抱えたまま亡くなってしまった場合、相続放棄について以下の記事で解説していますのでご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
相続人廃除とは、被相続人が生前に、財産を相続させたくない者の相続権を失わせる制度です。 対象は遺留分を持つ相続人に限られます。兄弟姉妹など遺留分を持たない相続人に財産を渡したくない場合には、遺言によって相続させないようにします。 廃除には家庭裁判所の許可が必要で、虐待や重大な侮辱などの著しい非行があった場合に認められる可能性があります。ただし、相続権を完全に奪う強力な制度のため、簡単には認められません。 手続きは、生前に家庭裁判所に申立てを行うか、遺言で廃除の意思を示し、相続開始後に遺言執行者が申し立てる方法があります。廃除が認められると、相続人はすべての相続権を失いますが、その子供には代襲相続権が残る点に注意が必要です。 相続人廃除について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
相続欠格とは、民法で定められた欠格事由に該当した場合に、自動的に相続権を失う制度です。 家庭裁判所への申立てや被相続人の意思表示は必要なく、欠格事由に当たった時点で相続権を失います。相続欠格になると、遺産相続だけでなく遺留分の請求もできません。そのため、相続させたくない人が欠格事由に該当していないかを確認することは重要です。 相続欠格事由として、以下の4つがあげられます。
相続の発生後、相続放棄は主に次のような流れで行います。
相続放棄の手続きについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を併せてご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
相続放棄は、「相続の開始を知ったとき」から3ヶ月以内に行わなければなりません。 「相続の開始を知ったとき」とは、被相続人が亡くなり、自分が相続人になったことを知った日のことです。多くの場合では被相続人が亡くなった日になりますが、先順位の相続人の相続放棄によって相続人となった場合には、先順位の相続人の相続放棄によって自分が相続人になったことを知った日となります。 なお、被相続人と疎遠で財産を調べるのに時間がかかる、あるいは、被相続人の財産が多すぎて調べきれない等の事情がある場合には、相続放棄の申立ての期限を延長してもらえる可能性もあります。 相続放棄の期限について詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
相続放棄や生前の相続への対策について、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
【相続放棄】
【生前の相続への対策】
自分の親などと絶縁状態である場合、相続で関わらないためには、相続が始まってから相続放棄することが最も確実です。しかし、相続が始まる前であっても、遺留分放棄を行うことが考えられます。 自分の親などに遺留分放棄を行う旨を伝えて、他の相続人に相続させる内容の遺言書を作成してもらうことによって、相続に関わらずに済む可能性が高まります。 ただし、遺留分放棄は、遺留分に相当する代償を被相続人から支払ってもらわなければならないため、簡単には認められない点に注意しましょう。 親族の相続問題に関わりたくないときの対処法について、以下の記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
被相続人の生前に、被相続人の口座から預貯金を引き出していた場合、預金の扱いによっては単純承認したとみなされて相続放棄ができなくなるリスクがあります。 単純承認とは、被相続人の相続財産をすべて無条件に相続することです。単純承認してしまうと、被相続人のプラスの財産である預貯金や不動産等だけでなく、借金等のマイナスの財産もすべて相続するため、巨額の負債を抱えてしまうおそれがあります。 被相続人の了承を得て、または、被相続人のために生前に預金を引き出していた場合でも、死亡後の支出は慎重を期す必要があります。できれば、被相続人の入院費などが必要な場合には、「財産管理委託契約書」を作成する等の方法で、被相続人の財産を預かる方が望ましいでしょう。 単純承認について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
被相続人の生前に相続放棄はできません。しかし、相続放棄したい理由がどのようなものであれ、代わりにできる対策はあります。 相続人にとっても、生前に相続放棄を行わせることはできませんが、代わりの対策によって希望を叶えた状態に近づけられる可能性があります。 相続放棄したい・させたいような状況に置かれている方は、弁護士にご相談ください。弁護士であれば、個別の事情に応じて、最適だと考えられる対策が可能です。 生前の対策には書類の作成や収集、裁判所での手続き等が必要なものもあります。弁護士にご依頼いただければ手続きの代理もできますので、ご相談をお待ちしております。