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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
相続が発生した際には、被相続人(亡くなった方)が生命保険に加入していた場合には、生命保険金を請求する手続きが必要となります。保険金の支払いを請求することで、諸々の費用に充てることができます。 本記事では、生命保険金の請求手続きの流れや期限の有無、必要書類等について解説します。
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被相続人が生命保険に加入していた場合には、その生命保険の受取人として指定されている人は、受取請求の手続きをすることで保険金を受け取ることができます。 受取請求の手続きの主な流れは次のようになります。
上記の流れについて、以下で解説します。
生命保険金は、被保険者(死亡したときに保険金が支払われる対象となる者)である被相続人が死亡すると支払われる保険金です。つまり、被相続人が死亡すると、生命保険金が支払われることになります。 したがって、生命保険の請求手続きは、被相続人が死亡してから行います。
生命保険会社に電話や書面等で連絡し、被相続人の死亡と生命保険金の支払いを請求する意思を伝えます。生命保険会社には、保険金受取人または保険契約者が連絡する必要があります。 また、次のような事項等を連絡の際に尋ねられるので、連絡をする際には保険証書等の資料を手元に置いて答えられるように準備しておきましょう。
保険会社への連絡が済むと、保険会社から必要書類の案内と保険金支払請求書が送られてきます。書類に同封されている手続案内等に従い、必要書類を揃え、保険金受取人自身が生命保険金の支払請求を行います。 必要書類については、次項で解説します。
生命保険金の請求には、基本的に以下の書類が必要になります。
【生命保険金支払請求書(保険会社所定のもの)】
生命保険金の支払いを請求するための書類です。保険会社ごとに記載事項が若干異なることから、不明点は保険会社の担当者に問い合わせると良いでしょう。
【保険証券】
加入している保険の特定等のために必要になります。普段から保険証券の保管場所を確認し、紛失には注意するべきでしょう。再発行には時間がかかる場合もあります。
【被相続人の戸籍謄本または住民票】
被相続人の死亡を証明するために、被相続人が死亡した事実が記載されている戸籍謄本または住民票を添付します。
【受取人の本人確認書類】
具体的には、戸籍謄本や印鑑証明書の提出が求められます。
【死亡診断書または死体検案書】
医師が作成する、被相続人が死亡したことを証明する書類です。被相続人が死亡したことを証明するために必要になります。
【その他】
その他にも、交通事故による死亡の場合には事故証明書や受傷状況報告書、保険会社による医療照会が必要な場合には医療照会同意書等の提出が必要となるケースもあります。
生命保険金の支払いに際して、審査が行われます。主な審査事項は次のようなものです。
【請求された保険契約内容の確認】
そもそも請求された保険への加入がなされているのか、また、保険の責任開始時期、保険料の支払状況等について確認がなされます。
【免責事由の該当の有無】
約款には免責事由が定められており、この免責事由に該当すると、生命保険金は支払われないことになります。
免責事由の例:
保険の責任開始日等から一定期間内(1年~3年)の自殺
保険金受取人等が故意に被相続人を死亡させた
【告知義務違反の有無】
告知義務違反とは、生命保険加入時に、健康状態、過去の傷病歴、職業等について事実を告げなかったり、嘘をついたりして保険に加入したことをいいます。
告知義務違反があった場合、契約が解除され、生命保険金を受け取ることができなくなることがあります。
保険会社による審査を通過した場合、指定された口座に生命保険金が振り込まれます。保険金の受け取り内容や金額の明細は、保険会社から送付される明細書で確認することができます。 未返済の自動振替貸付金や契約者貸付金がある場合には、その元利金が保険金から差し引かれて支払われます。
生命保険の請求には3年の期限があります。そして、保険金は、請求しないともらうことができないため、3年以内に請求しなければなりません。 しかし、例外的に、次のようなケースでは3年を過ぎても請求できることがあります。
したがって、3年が経過していたとしても諦めずに、生命保険会社や弁護士に相談してみる価値はあります。 しかし、あくまでも期限は3年ですから、日頃から生命保険への加入状況や保険契約の約款の確認をしておくことが、万が一の時の備えになります。
生命保険金は、保険契約で定められた受取人が全額を受け取ります。そのため、生命保険金については、遺産分割協議をする必要はなく、遺産分割協議書への記載も不要です。 遺産分割協議書とは、遺産分割について協議し、合意した内容を記載した書面であり、相続人全員によって作成されるものです。 遺産分割協議書について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続放棄をした者であっても、受取人として指定された者は生命保険金を受け取ることができます。相続放棄は、相続財産を一切受け取らない手続きのことです。 生命保険金は、受取人固有の財産とされており、基本的に相続財産ではありません。そのため、相続放棄をしても生命保険金には影響しません。 ただし、生命保険金にかかる相続税については、控除を受けられなくなることがあるため注意しましょう。 なお、相続放棄について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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生命保険金は、多くの場合において、受取人として指定されている人だけが受け取れます。なぜなら、基本的に、保険金は遺産ではなく受取人固有の財産だからです。 生命保険金は、被相続人の死亡(相続の開始)とともに発生するために遺産と混同される傾向にあります。しかし、生命保険金は、被相続人が生前締結した保険契約という、相続とは無関係な原因に基づいて発生するものであることから、相続手続きとは切り離して考え、保険金を受け取る受取人固有の財産として扱われることになります。 そのため、生命保険金は相続人であれば誰でも請求できるわけではありません。生命保険会社に保険金の請求ができるのは、生命保険金の受取人として指定されている人(保険金受取人)だけです。
未成年者であっても、生命保険金の受取人にすることが可能であり、その場合には受取人の親権者が保険金を請求します。唯一の親権者が死亡して未成年者が受取人になった場合には、未成年後見人が選任されるため、未成年後見人が請求することになります。
遺産の相続人が兄弟姉妹の関係であり、そのうちの1人が生命保険金の受取人となっていた場合には、その受取人だけが多額の生命保険金を受け取って、さらに他の兄弟姉妹と同額の遺産を受け取ってしまう可能性があります。これにより、兄弟姉妹間でとても不公平な結果になることが考えられます。 兄弟姉妹への生命保険金の分配は、基本的に行う義務がありません。しかし、不公平を是正する必要があるときには、生命保険金も遺産の一部と同様に扱われるケースもあります。 分配の必要性の有無は、専門家でなければ判断が難しいでしょう。トラブルを防止したいときには、弁護士に相談するようにしてください。
被相続人が被保険者であり、保険金の受取人を指定しなかった場合には、保険約款及び保険法等にしたがって判断することになります。約款に「相続人に支払う」旨の条項がある場合には、生命保険金は相続財産にはならず、相続人固有の財産として、相続分の割合に応じて権利を有することになります。 一方で、被相続人が被保険者であり受取人であった場合には、保険金の種類によって、相続財産になる場合とならない場合があると考えられます。
被相続人が生命保険金の受取人になっている場合には、保険会社に連絡して受取人変更手続きをしておくのが望ましいでしょう。そのままにしておくと、被相続人が死亡したことによって支払われる生命保険金については、相続人を受取人に指定する黙示の意思表示があったと解されるため、相続人の固有財産となります。 これにより、受取人が複数になってしまうと、全員分の書類や押印が必要になる等、手続きが複雑になってしまうリスクがあります。そのため、受取人は、なるべく被相続人ではない個人にしておくと良いでしょう。 また、相続人が生命保険金を受け取る事態を防ぐために、遺言書で受取人を変更することも可能です。
生命保険金は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となり得ます。「みなし相続財産」とは、相続税法により相続財産の一部とみなされて課税対象となる財産のことです。 ただし、生命保険金の全額が「みなし相続財産」となるわけではなく、「500万円×法定相続人の数」が非課税額として扱われます。ここでいう「法定相続人」には、相続放棄をした者も含めて数えますが、養子については全員を「法定相続人」として数えるとは限りません。 なお、生命保険金の受取人となっている相続人が相続放棄をしても、生命保険金を受け取ることはできますが、非課税枠の適用を受けることはできなくなります。
保険金によって遺産の配分が著しく不公平になった場合には、生命保険金も含めて遺産分割を行う必要が出てくる場合があることに注意しなければなりません。 相続人のうちの誰かが受取人となっている場合であっても、基本的に保険金は遺産ではなく、受取人の固有の財産とされます。しかし、それでは他の相続人がとても納得できないような、大きな偏りが生じるときだけは、遺産に含めるような扱いがされるということです。
著しく不公平といえるか否かは、次のことを検討して判断します。
生命保険金の受取人になっていれば、基本的には他の相続人に生命保険金を分配する必要がなく、全額を受け取ることができます。 しかし、生命保険金と遺産とのバランスが悪く、他の相続人と比べてあまりにも不公平になってしまうと、特別受益とみなされて相続財産に持ち戻されてしまう可能性があります。 遺産に対して、どの程度の割合であれば受取人固有の財産として生命保険金を受け取ることができるのかについては、専門家である弁護士に相談していただければ信頼性の高い回答が可能です。 相続に関する手続きは複雑なので、相続に関する知識が豊富な弁護士を選んで相談することをおすすめします。 相続手続きでお困りでしたら、私たちにご相談ください。相続の専門チームが対応いたします。