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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
エンディングノートという物が存在することを知っていても、詳しく知っている方や、自分で書いている方はあまり多くありません。 近年、人生の終末を見据えて、最後まで自分らしく生きるための準備である「終活」という言葉が浸透してきました。それに伴い、エンディングノートについての認知も広まりましたが、何を書けば良いのかが分からないという方も多いでしょう。 本記事では、エンディングノートの概要や書いた方が良い理由、書くのが望ましい内容、遺言書との違い等、エンディングノートの詳細について解説します。
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エンディングノートとは、自身の終末期や死後についての希望や、伝えたいこと等を記したノートのことで、終活の基本となるものです。 自身の死後における遺産の取扱い等について述べる遺言とは異なり、形式に決まりはなく、記載内容の定めもないので、自由に自身の書きたいことを書けます。そして、パソコンやスマートフォン等でも作成可能です。 なお、書かれた内容に法的効力はありません。
終末期の自身の生き方について希望を伝えるエンディングノートを残すことには、以下のようなメリットがあります。
残された家族が、相続の手続きをするときに、どのような財産があったのかが分からずに困るのはよくあることです。 また、自身が亡くなることによって、様々な契約を解約したり、名義を変更したりする必要が生じますが、どのような契約をどの会社と行っているかが分からなければ必要な手続きが行えません。 そこで、以下の事柄について書いておくと良いでしょう。
ただし、これらの情報を書く場合には、不必要なタイミングで情報が漏れないように注意しなければなりません。 極めて重要な個人情報については、遺言書に記載したり、専門家に預けたりすることも検討しましょう。
自身が延命治療や葬儀、墓等についてどう考えているのかを表明しておけば、家族・遺族が迷う場面が減って精神的な負担を減らせます。 また、法的な拘束力はないものの、お世話になった方へ自身の希望や気持ちを伝えるために、特に以下の事柄について書いておくと良いでしょう。
エンディングノートは、書きやすい部分から少しずつ書いていくと良いでしょう。なぜなら、どのような内容であっても自由に記載できるために、何を書けば良いのかが分からなくなる場合があるからです。 書きにくいと感じるときには、事実に関するところから書いていくようにしましょう。 もっとも、遺族の負担を軽減するとともに自身の率直な気持ちを伝えられるというエンディングノートのメリットを十分に引き出すためには、自身の希望を書いておくことは重要です。 まずは、メモのような形でも良いので、自分が考えていることを整理するようにしましょう。
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エンディングノートは、書いた方が亡くなったときだけでなく、認知症になったとき等にも活用することがあります。 そこで、エンディングノートに書いておいた方が良い事項について、以下にまとめましたのでご覧ください。
エンディングノートを書いた方の名前等、個人情報を書いておけば、誰のノートなのかが分かるだけでなく、介護をする方などの助けとなります。 ノートに書いておくのが望ましい事項として、以下のものが挙げられます。
エンディングノートには、自身が把握しているペットの情報を記載すると良いでしょう。 家族であっても、ペットのことを全て知っているかは分かりませんし、自身の死後には家族以外の人が引き取ることになるかもしれません。エンディングノートに情報がまとめてあれば、大切なペットを安心して任せることができるでしょう。 ノートに書いておくべきペットの情報として、以下のものが挙げられます。
医療や介護に関する情報をエンディングノートに書いておけば、家族の悩みを軽減できる可能性があります。 なぜなら、延命治療をするか否か、あるいは、どのような施設で介護をしてもらうかといったことについて考え、決断することは家族にとって大きな負担になることが多いからです。 また、エンディングノートを書くことにより、自身の気持ちを整理して、死生観を確かなものにしていくことにも役立ちます。 具体的には、以下のことを書くようにしましょう。
自身の財産や借金等についてエンディングノートに記載しておくことで、相続の手続きにおける申告漏れや、予定外の借金の返済による遺族の困窮等を防げる可能性がたかまります。 ただし、自身の財産の詳細を記載する場合には、情報の流出に注意しなければなりません。預貯金の情報や貴金属の保管場所の情報等については、遺言書などに分けて記載するのも良いでしょう。 財産や借金等の情報として、具体的には以下のものを書くようにしましょう。
葬儀やお墓に関する希望をエンディングノートに書いておけば、遺族の迷いをなくして負担を減らせる可能性があります。死亡から火葬までの時間は短い場合が多いので、自身の考えを明確にしておくと良いでしょう。 具体的には、以下のようなことを書いておきましょう。
・遺品の譲渡先についての希望 ※特に資産価値のある財産については、誰にどのように残すか決めておかないと、分配の際に揉めてしまいます。そこで、宝飾品や骨董品等、いわゆる形見とされるものについては、あらかじめ譲渡先を決めておき、エンディングノートに明記しておくと安心です。
自身の交友関係を家族が全て把握しているケースは少ないので、エンディングノートには、死後に連絡してほしい親族や友人等の情報を書いておくと良いでしょう。 書いておくべきなのは、以下の情報です。
・家族・友人・恋人に対する思い ※文字で残すのが苦手な方の場合は、動画やイラスト、写真等を用いると良いでしょう。大切な方へのメッセージを残しておけば、亡くなった後の手続に役立つだけでなく、思い入れの深い遺品のひとつとなります。
エンディングノートと遺言書の違いは、主に以下の3点です。
・法的な効力の有無
エンディングノートには法的な効力がありませんが、遺言書の内容には法的な効力があります。そのため、遺言書の内容で強制力を伴う部分(遺産の分け方等)には従わなければなりません。
・形式の定めの有無
エンディングノートの形式は自由であり、写真や映像等も利用できますが、遺言書の形式は法律で定められており、自筆して署名・捺印するか、公証役場で作成してもらう必要がある等の決まりがあります。
・内容を確認できるタイミング
エンディングノートは、書いた人が亡くなった直後や、場合によっては亡くなる前に内容を確認できますが、自筆による遺言書は家庭裁判所で「検認」という手続きを経なければなりません。
遺言書の詳細に関しては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
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エンディングノートには、マイナンバーといった個人情報や財産についての詳細を書くので、他人に見られないように保管する必要があります。 しかし、凝った場所に隠してしまうと、いざというときに家族に発見してもらえず、故人の意を汲んだ葬儀や埋葬がなされないおそれがあります。 そこで、家族にのみ大切な情報が伝わるように工夫をし、万が一他人に見られても情報を得られないようにするべきでしょう。具体的には、預貯金の口座やクレジットカードの暗証番号等を記載する場合は、「〇〇の誕生日」「結婚記念日」と書くだけに留めたり、暗証番号等を記した他の紙等の保管場所を書くだけにしたりする方法が挙げられます。
エンディングノートに関してよくある質問について、以下で解説します。
エンディングノートの存在を知った時が、エンディングノートを書き始める良いタイミングだといえます。 なぜなら、エンディングノートは、高齢になり人生の終末期を迎えてからのみ役立つものではなく、若年であっても、万が一ご自身の意思が伝えられなくなるようなことが起こったときに思いを伝えることができるので、年齢に関係なく役立つからです。 また、エンディングノートは一度書いて終わるものではなく、定期的に書き直すべきノートなので、誕生日等のタイミングで改めて書き直すと良いでしょう。
ご質問者様方の残される世代が、遺言・エンディングノートに関する正しい知識を身につけ、親御様に「遺言書・エンディングノートを残すことのメリット」や、「残さないことで生じ得るトラブル、生まれるリスク」に関して説明されると良いでしょう。 このとき、何も残されていなかった場合にトラブルが起こり困るのは、家族である自分たちである旨を切実に訴えることが大切です。 また、親御様とご一緒に、相続に関するセミナーや無料相談会に参加する等、相続に関する理解を深めていただくことも有用です。
エンディングノートには特定の形式がなく、自由に作成することができます。 しかし、法的な効力を持たせたい内容については、エンディングノートだけでなく、遺言書として残したいという方もいらっしゃるでしょう。また、重要な個人情報の管理について不安な方もいらっしゃると思います。 そのような方は、ぜひ弁護士にご相談ください。 相続について経験豊富な弁護士であれば、ご相談者様のご希望に応じて、エンディングノートと遺言書に書くべき内容を判断し、それぞれの作成をサポートいたします。 また、エンディングノートや遺言書を作成するのに伴って、相続人調査等、相続に欠かせない手続きがあります。加えて、作成した遺言書の管理等についても併せてご相談ください。 遺言書や相続人調査について、詳細はこちらの記事で解説していますので、ご参照ください。