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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
相続を受けた際には主に相続税を払いますが、場合によっては所得税の申告が必要となることもあります。そしてこの所得税、申告をしなければペナルティの対象となるおそれがあるので注意が必要です。 また、利用できる控除を使わなければ、払わなくて良いはずの税金を支払うことになってしまいます。余計な費用を発生させないために、相続時の所得税の申告について理解しておくべきでしょう。 この記事では、相続について、どのような場合に所得税を申告する必要があるのか、申告はいつまでに行えば良いのか等について解説します。
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遺産相続で所得税の確定申告が必要となるのは、以下の2つのケースです。
相続人が遺産を相続しても、所得税が必ずかかるわけではないので漏れがちだったりします。該当する場合は、所得税の申告を忘れてしまわないように注意しましょう。
所得税と相続税の違いは以下のとおりです。
なお、相続税について詳しく知りたい方は、以下の記事で解説していますのでご覧ください。
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相続税には基礎控除があり、基礎控除の範囲内に収まる遺産であれば相続税はかかりません。 基礎控除とは、一定額以下の遺産については相続税を支払わずに済むように設定されたものです。少額の相続が発生したときまで税金を支払う制度にしてしまうと、財産が少ない者の遺族が困窮するおそれがあるため、基礎控除が設定されています。 相続税の基礎控除額は、以下の式で計算します。
相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
なお、相続税の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。
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相続の後で、相続人自身の確定申告が必要となる場合として以下のものが挙げられます。
これらの場合について、以下で解説します。
駐車場やアパート等、賃貸収入がある不動産を相続した場合において、1月1日から相続が発生した日までの賃貸収入は被相続人の収入として準確定申告を行い、相続が発生した日以降の賃貸収入については相続人の収入として確定申告を行う必要があります。 例えば、被相続人が4月30日に亡くなった場合には、以下のようになります。
なお、不動産の相続手続きについては、以下の記事で解説していますので併せてご覧ください。
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相続した不動産や株式等の財産を売却した場合において、その売却によって利益が発生すれば、所得税が課税されます。このとき、売却日の翌年の2月16日から3月15日までに確定申告を行わなければなりません。 相続した財産の売却による利益を計算するときに、「取得費加算の特例」が適用できる場合があります。この特例を適用できれば、相続税のうち一定金額を取得費用に加えることができるため、所得税の節税が可能です。 しかし、特例を適用してもらうためには、以下の要件を全て満たさなければなりません。
また、取得費加算の特例を適用してもらうためには、一定の書類を添えて確定申告する必要があります。
相続人が被相続人の死亡保険金を受け取った場合には、所得税が課税されるケースがあります。それは、保険料を支払っている人と保険金の受取人が同一であるケースです。 被保険者が被相続人である生命保険金は、誰が保険料を負担しており、誰が保険金を受け取るかによって、課税される税金が所得税なのか、相続税なのか、贈与税なのかが変わります。
遺産に含まれる不動産等の分けにくい財産を売却して、その代金を相続人が分ける遺産分割の方法を「換価分割」といいます。換価分割をするときに、売却した不動産等の購入費用等よりも売却金額の方が高額であると、利益が発生したとみなされて所得税がかけられます。そのため、換価分割によって発生した利益は、確定申告する必要があります。
換価分割について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続した財産を国や地方自治体等に寄付すると、寄付した財産に対する相続税の課税が免除されて、結果的に節税になる可能性があります。ただし、寄付をすれば必ず節税できるわけではありません。 寄付した相続財産への課税が免除される要件は以下のとおりです。
準確定申告が必要となるのは、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までについて、以下のいずれかに該当するケースです。
被相続人が年金受給者であった場合において、以下の2つの条件を満たすケースでは、準確定申告は不要となります。
準確定申告を行えるのは、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。所得税の納付についても、同じ期限に間に合わせなければなりません。 これに対して、通常の確定申告は、翌年の2月16日から3月15日の間に行うため、混同しないように注意が必要です。 準確定申告は、相続税の申告と比べて期限が短いので、必要な書類等の準備は早めに開始するようにしましょう。
被相続人が1月1日から3月15日までの間に亡くなった場合には、前年の確定申告を終わらせていない懸念もあります。 当てはまる際は、2年分(前年分と1月1日から亡くなった日までの分)の準確定申告が必要です。 ちなみに申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日から4ヶ月以内となります。
期限内に準確定申告を行わなかった場合には、以下のペナルティが課せられます。
準確定申告でも、所得控除が適用されます。所得控除とは、税金を負担しづらい事情(病気や子育て等)がある者について、所得税を計算するときに所得の一定額を差し引くことによって税を軽減する制度です。 主な所得控除として、以下のものが挙げられます。
準確定申告は、亡くなった方の相続人が、必要書類を被相続人の住所地の所轄税務署に提出して行います。 この手続きの際に必要となる書類等について、以下で解説します。
準確定申告を行うときには、以下の書類が必要となります。
【必ず必要となる書類】
・準確定申告書
【状況に応じて必要となる書類】
準確定申告書は、被相続人の住所を管轄している税務署に提出します。その際には、通常の確定申告に用いるのと同じ用紙を使用して、申告書の上部の表題に「準確定」と記載します。また、氏名と住所は被相続人と相続人の両方のものを記載する必要があります。 このとき、被相続人のために発生した医療費であっても、被相続人が亡くなった後に支払った場合には、準確定申告のときに申告することができません。この医療費は、相続税の手続きの際に申告します。 また、被相続人の死亡時に未払いであった公的年金は、相続人の一時所得として申告する必要があります。 相続人が1人の場合と2人以上の場合とでは、申告の際の記載方法が異なります。詳しくは、国税庁のホームページをご覧ください。
相続人が1人の場合(国税庁のサイトへ) 相続人が2人以上の場合(国税庁のサイトへ)相続により所得税の申告が必要となるケースもあるため、申告漏れに注意が必要です。また、余分な税金を払わないようにするために、可能であれば控除を受けたいでしょう。 しかし、被相続人の死亡後に行うべき手続きは数多く存在するため、所得税の申告は忘れがちです。さらに、相続税の申告との混同も起こりがちで、誤った控除の申告をすればペナルティを受けかねません。 そこで、所得税の申告が必要だと考えられる場合や、申告の必要性について判断がつかない場合には、弁護士にご相談ください。弁護士であれば、所得税についての助言や手続きの代行はもちろん、相続に関する手続きの全般についてサポートいたします。 数多くの手続きをしなければならない状況において、被相続人の死亡を知ってから4ヶ月以内に手続きを行うことになる所得税の申告は、時間的な猶予が少ないため厄介です。専門家の力を借りることによって、ご安心いただければ幸いです。