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【遺産分割4つの方法】メリット・デメリットや手続きの流れを解説

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

遺産分割と一口にいっても、遺産の分け方には複数の方法があり、相続人の関係性や遺産の内容によって最適な方法は異なります。スムーズに手続きを進めるためには、分割方法の種類を理解するだけでなく、手続きの流れを把握しておくことが大切です。 この記事では、代表的な4つの遺産分割方法と、それぞれの特徴や手続きの流れをわかりやすく解説します。

【動画で解説】遺産分割4つの方法 | それぞれのメリット・デメリット

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遺産分割とは

相続人が複数いる場合、亡くなった方が残した遺産はいったん相続人の共有財産となります。 この共有状態を解消し、それぞれの相続人に具体的に遺産を分けることを「遺産分割」といいます。 遺言書がある場合は、基本的にその内容に従って遺産分割を行います。 一方で、遺言書がない場合等には、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を取得するかを決定しなければなりません。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の調停や審判によって最終的な分割方法が決められます。

遺産分割には4つの方法がある

遺産分割の方法には、主に以下の4種類があります。

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割
  • 共有分割

現物分割

現物分割

現物分割とは、「自宅の土地建物は妻に、株式は息子に、預金は娘に」というように、遺産を現物のまま分配する方法です。 預貯金や現金は基本的にそのまま分けられるため、常に現物分割の対象となります。 また、土地を分筆してそれぞれの相続人に割り当てる場合や、株式を複数の相続人で分ける場合も、現金化せずに分配するため、現物分割に該当します。 現物分割は、形ある財産をそのまま引き継ぎたい場合に適しています。 ただし、建物のように物理的に分けることが難しい遺産については、現物分割が適さないため、別の方法で分配しなければなりません。

メリット・デメリット

現物分割のメリット・デメリットは以下のとおりです。

【メリット】

  • 手続きがシンプル
    遺産の売却が不要で、名義変更のみで済む。
  • 評価額トラブル回避
    不動産や株式などの厳密な評価が不要なため、揉め事を防ぎやすい。
  • 共有リスク回避
    共有名義による管理や売却の合意問題を避けられる。

【デメリット】

  • 不公平感が出やすい
    分配された遺産の価値に差がある場合、相続人間で不満が出やすい。
  • 土地分筆が困難な場合あり
    隣家との境界線が確認できない場合や面積制限などで、土地を分割できないケースがある。
  • 土地の価値下落の可能性
    分割後の土地が狭くなったり、道路に面しなくなることで評価額が下がることがある。

代償分割

代償分割

代償分割とは、特定の相続人が不動産などの遺産をそのままの形で取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払う方法です。 たとえば、評価額6000万円の土地を3人兄弟で3分の1ずつ相続し、長男が不動産を取得した場合は、残りの2人の兄弟にそれぞれ2000万円ずつ代償金を支払う形になります。 この方法は、被相続人の自宅に同居していた相続人が引き続き住みたい場合や、事業を引き継ぐ相続人が事業用不動産を相続する場合などに有効です。 土地は現物分割も可能ですが、使い勝手が悪くなるのを避けるため、代償分割が選択されるケースもあります。 代償分割について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

メリット・デメリット

代償分割のメリット・デメリットは以下のとおりです。

【メリット】

  • 円滑な遺産分割が可能
    不動産をそのまま取得でき、事業継続や同居家族の住まい確保がしやすい。
  • 公平な相続が可能
    代償金で不公平感を解消できる。
  • 相続税の節税につながる
    故人の自宅や事業用宅地などを相続して要件を満たすと、小規模宅地等の特例で評価額が最大80%減額される場合がある。

【デメリット】

  • 資金負担
    代償金を自己資金や借入で用意する必要がある。
  • 算定トラブル
    代償金は評価方法(相続税評価額や時価など)により金額が変わるため、算定を巡って意見が対立しやすい。
  • 税務リスク
    遺産分割協議書に代償分割の記載がない場合や代償金が過大だと贈与税、現金以外で支払うと譲渡所得税が課される可能性がある。

換価分割

換価分割

換価分割とは、不動産や株式などの遺産を売却して現金化し、相続人に分配する方法です。 物理的に分けにくい不動産や株式、美術品などを公平に分けるために選ばれることが多く、現物分割や代償分割が難しい場合に有効です。 相続税の納税資金を確保したいときや、今後利用予定のない不動産を処分したい場合にも適しています。ただし、売却には時間や手間がかかり、譲渡所得税などの税金が発生する可能性がある点には注意が必要です。

メリット・デメリット

換価分割のメリット・デメリットは以下のとおりです。

【メリット】

  • 公平な分配が可能
    遺産を現金化するため、1円単位で分配できる。
  • 納税資金を確保できる
    現金化することで、相続税の納税資金を準備しやすい。
  • 節税効果
    相続発生後の売却により、相続税評価額を下げられるケースがある。

【デメリット】

  • 財産が残らない
    不動産を売却するため、将来的な利用や賃貸収入の可能性を失う。
  • 売却価格が下がる可能性
    納税期限などで売却を急ぐと、相場より安くなることがある。
  • 経費や税金の発生
    不動産の売却の際に仲介手数料や測量費などの費用が発生し、売却益が出た場合は譲渡所得税が課税される。

共有分割

共有分割

共有分割とは、分割しにくい不動産等の遺産を、複数の相続人で、各相続人の相続分に応じて共同で所有する方法です。 共有分割は、相続人間の話し合いがまとまらず、これまで説明してきた他の方法で遺産分割を行えない場合に、暫定的な方法として選ばれるケースが多いです。しかし、後に共有者間で争いが生じるおそれがあるため、共有分割はなるべく避けた方が良いでしょう。 共有分割を行った場合には、できる限り早期に共有状態を解消することをおすすめします。

メリット・デメリット

共有分割のメリット・デメリットは次のとおりです。

【メリット】

  • 不動産を売却せずに相続でき、形を保ったまま公平に相続できる。
  • 賃貸収益を相続人で分けることで、所得税の負担を抑えられる。
  • 将来売却時に譲渡所得税の3000万円特別控除を人数分適用できるため、節税につながる。

【デメリット】

  • 不動産の売却や建て替えに全員の同意が必要。
  • 世代交代で共有者が増え、権利関係が複雑化する。
  • 共有者の要件によっては、小規模宅地等の特例などの税優遇が受けられない可能性がある。

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遺産分割の手続きの流れ

遺産分割を行うために決まった順番はありませんが、大まかな手続きの流れは以下のとおりです。

  1. ①遺言書の有無を確認する
  2. ②相続人や相続財産を確定する
  3. ③遺産分割協議を行う
  4. ④遺産分割協議書を作成する
  5. ⑤合意できない場合は調停・審判

①遺言書の有無を確認する

まず遺言書の有無を確認しましょう。 自宅や貸金庫などを探し、自筆証書や秘密証書遺言を見つけたら、家庭裁判所で検認を行います。 公正証書遺言は公証役場の「遺言検索システム」で確認でき、法務局の保管制度を利用していれば法務局で照会可能です。公正証書遺言や法務局保管の遺言は検認不要で、すぐに内容を確認できます。 遺言書があれば、基本的に遺言で指定されたとおりに遺産分割を行います。 一方で、遺言書がない場合や、遺言書の記載が不十分な場合、相続人全員の合意のもと遺言とは異なる分割を行うような場合は、遺産分割協議が必要です。 遺言書がある場合の相続手続きについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

②相続人や相続財産を確定する

次に、相続人と相続財産を確定します。 遺言書がない場合、相続人は民法で定められた法定相続人となります。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、婚姻や養子縁組、認知などの履歴を確認し、相続人を確定することが必要です。これを怠ると、後から隠れた相続人が判明し、遺産分割協議が無効になるリスクがあります。 また、相続財産の調査も重要です。対象は不動産、預貯金、有価証券、保険などの資産だけでなく、借入金や未払い税金といった負債も含まれます。相続財産を正確に把握するため、資産と負債を一覧にした財産目録を作成し、評価額や所在などを明記しておきましょう。 相続人や相続財産の調査方法について知りたい方は、こちらのリンクをご覧ください。

③遺産分割協議を行う

遺言書がない場合には、遺産分割協議を行い、相続人間で話し合って遺産をどのように分配していくかを決め、遺産分割を行います。 遺産分割協議についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。

④遺産分割協議書を作成する

相続人全員で遺産分割の内容に合意したら、その内容を遺産分割協議書として書面に残しておくことが望ましいです。法律上は必須ではありませんが、協議書を作成することで、後々のトラブルを防ぎ、相続手続きをスムーズに進められます。 特に不動産の相続登記や、金融機関での預貯金解約・名義変更などでは、遺産分割協議書の提出が求められるため、実務上ほぼ必須です。協議書には、被相続人や相続人の情報、遺産の分割内容を正確に記載し、相続人全員が署名・実印で押印し、印鑑証明書を添付します。 遺産分割協議書の作成方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

⑤合意できない場合は調停・審判

遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。 調停では、審判官と調停委員が中立の立場で相続人の間に入り、個別に意見を聞きながら話し合いによる解決を目指します。 合意が成立すると「調停調書」が作成されます。調停調書は確定判決と同じ法的拘束力を持ち、代償金の不払いなど遺産分割に違反する相続人がいる場合は、これを根拠に強制執行を行うことが可能です。 調停で合意できなかった場合は、自動的に審判に移行し、裁判官が相続人の主張や証拠を踏まえて、最終的な分割方法を決定します。不服がある場合は即時抗告が可能です。 遺産分割調停、遺産分割審判について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

遺産分割についての様々なご相談は経験豊富な弁護士へお任せください。

遺産分割には4つの方法があり、遺産の内容や相続人の関係性に応じて選択し、必要に応じて組み合わせる必要があります。ただし、遺産分割は金額に関係なく争いが起きやすく、長期化すると親族関係の悪化や精神的負担など多くの問題を招きます。 こうしたトラブルを防ぐためには、弁護士への相談が大変有効です。 弁護士であれば適切な分割方法を提案し、協議・調停・審判に代理人として対応することができます。法律知識に基づく第三者の意見は、他の相続人の理解を得やすく、話し合いを円滑に進める大きな助けとなるはずです。 弁護士法人ALGには相続問題に豊富な経験を持つ弁護士が多数在籍しています。遺産分割でお悩みの方は、ぜひご相談ください。