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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
亡くなった人のことを、被相続人といい、相続人は被相続人の財産を相続します。しかし、あらゆる財産が相続の対象になるわけではなく、相続の対象にならない財産もあります。
また、相続税が課税される財産と課税されない財産があったり、相続財産ではないものの相続税がかかる財産があったりすることから、きちんと理解しなければ適切な納税ができないおそれがあります。もしも申告漏れを指摘されてしまうと、余計な税負担が生じてしまうかもしれません。
この記事では、被相続人の財産や死亡に伴って支払われる金銭が、相続や相続税の対象になるのか等、判断に迷いやすい相続財産について詳しく解説します。
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相続財産とは、相続や遺贈(遺言書による贈与)によって受け継がれる財産です。基本的には、被相続人の全財産が相続財産になります。そのため、著作権等の目に見えない権利についても相続財産に加えられ、財産的な価値があれば相続税の課税対象になるため注意しましょう。また、被相続人が連帯保証人になっていたケース等では、連帯保証人としての責任についても相続財産に加えられます。
なお、被相続人が残したものであっても、相続の対象にならない財産もあります。代表的なものとして、墓地や墓石等が挙げられます。
相続の対象となる財産は、不動産のように実体のある物だけでなく、債権(貸付金など)のような形のない多くのものも含みます。また、相続の対象となる財産には、現金や預貯金といったプラスの財産だけでなく、借入金やローン等のマイナスの財産も含まれます。
プラスの財産とマイナスの財産について、以下で解説します。
プラスの相続財産として、次のものが挙げられます。
これらの財産には、現金や自動車、家(自宅)のように、簡単に存在を把握できるものがある一方で、通帳のない預金や株券のない株式、遠方で購入した土地、仮想通貨のような発見しづらいものも少なくないため、慎重に調査する必要があります。
マイナスの相続財産として、次のものが挙げられます。
これらの財産には、借用書や請求書のような書面が伴うこともありますが、被相続人の手元に書面がないケースも少なくありません。そのため、考えられることについて調査する必要があるのはもちろんですが、できれば被相続人が亡くなる前に聞き出しておくのが望ましいでしょう。
なお、マイナスの財産が高額になるものの、家業を継ぐために必要な財産がプラスの財産として存在している等の事情があるときには、相続するプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する「限定承認」をする方法があります。
限定承認について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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また、相続に関わりたくない場合や、マイナスの財産が高額でプラスの財産がほとんどないようなケースでは、すべての財産を受け継ぐことを拒否する「相続放棄」をする方法があります。
相続放棄について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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相続の対象にならない財産として、「被相続人だけに属していた権利義務」などが挙げられます。
例えば、弁護士であった被相続人が依頼を受けていた場合には、相続人は依頼を遂行する義務を相続しません。
このような、相続の対象にならない財産について、以下で解説します。
被相続人の一身に専属する権利義務とは、性質上、被相続人でない者に帰属させるべきではないと考えられる権利や義務のことです。
本人のみに帰属する権利や義務であるため、相続することができず、他者に譲渡することもできません。
被相続人の一身に専属する権利義務として、次のものが挙げられます。
祭祀に関する権利は相続の対象にならず、祭祀主催者に承継されます。
祭祀主催者とは、先祖の供養などを行う者のことです。祭祀主催者には、祭祀に関する権利である、祭祀のために必要な系譜(家系図)、祭具(仏壇・位牌など)、墳墓(墓地・墓石)といった財産が、相続とは関係なく引き継がれます。
祭祀に関する権利が相続とは異なる扱いを受けるのは、亡くなった方を供養し、先祖を祀るといった行為が、人間として大切な行いだからだと考えられます。
被相続人が亡くなった後で発生した家賃収入や株式の配当、預貯金の利息等は、相続財産には該当しません。そのため、厳密には、相続財産の分配とは別に「相続財産から生まれた収益の分配」についても協議する必要があると考えられます。
しかし、遺産分割協議とは別に、新たな協議を行うのは負担が大きいため、遺産分割協議と同時に、相続開始後の収益の分配についても協議するのが一般的です。
生命保険金や死亡退職金などの受取人として、特定の相続人を指定していた場合には、その相続人の固有財産となるため相続財産になりません。
また、厚生年金や国民年金などの公的年金を受給していた者が亡くなったときに、遺族に対して支給される遺族給付金についても、遺族の生活保障を目的として遺族に支払われるため、相続財産にはなりません。
ただし、生命保険金や死亡退職金、公的年金以外の制度から受ける遺族給付金については、原則として相続税の課税対象にはなります。これについて、次項で解説します。
基本的に相続税の課税対象となる財産は以下になります。
相続や遺贈によって取得された資産価値のある財産
ただし、みなし相続財産や相続開始前3年以内の生前贈与といった財産は、相続財産でなくても課税対象になります。
また、相続財産に含まれる債務は、相続税のかかる財産の金額から控除ができます。
みなし相続財産とは、相続財産ではないものの、相続税をかけるときには相続財産に加える財産のことです。主なみなし相続財産として、「生命保険金」や「死亡退職金」が挙げられます。
みなし相続財産に相続税がかけられるのは、公平な税制を実現するためです。高額な預貯金には、金額に比例して相続税がかかるのに、高額な生命保険金等には相続税がかからないのは不公平だと考えられるため、生命保険金等にも相続税がかけられるのです。
しかし、生命保険金には遺族の生活を保障する目的もあるため、全額を課税対象にしてしまうのは適切ではありません。そのため、「500万円×法定相続人数」の相続税控除が設けられています。
みなし相続財産について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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被相続人が死亡する前の3年間に行われた生前贈与は、贈与税ではなく相続税の課税対象になります。これは、病気等により被相続人の余命が明らかになったときに、駆け込みのように贈与を行って、相続税の課税を逃れようとする行為を抑止することを目的として設けられた制度です。
しかし、人は予想よりも長生きすることがあります。また、突発的な事故等によって被相続人が亡くなっても、この制度は適用されます。そのため、贈与を受けたときに、既に贈与税を支払っているケースが少なくありません。
贈与税を支払っていたケースでは、支払った贈与税額は、相続税額から控除されます。これを「贈与税額控除」といいます。
相続時精算課税制度とは、子や孫へ2500万円までの贈与をしたときに、贈与税の支払いを求められない代わりに、相続の発生時には、制度を利用して行われた贈与についても相続財産に加えて相続税が計算される制度です。
3年以上前に行われた贈与であっても、相続時精算課税制度を利用していれば、相続財産に加える必要があります。
なお、贈与額が2500万円を超えると贈与税を支払わなければならなくなります。支払った贈与税に関しては、相続税額から控除されます。
相続財産には、相続税の課税対象とならない財産があります。
課税対象でない相続財産について、以下で解説します。
祭祀財産とは、墓地や墓石、仏壇、仏具、神棚、十字架等の、祖先を祀るために必要となる財産です。祭祀財産は相続税が非課税になります。
ただし、商品として販売するための墓石や仏壇等には相続税がかかります。また、純金製の仏具等、投資の対象になる物を購入するような方法で相続税を逃れようとすると、税務調査により追徴課税を受けるおそれがあります。
弔慰金は、世間一般における「常識的な金額」については、基本的に相続税が非課税となります。
ここでいう「常識的な金額」は、具体的には次の表の金額とされます。
業務上の死亡の場合 | 普通給与の3年分 |
---|---|
業務上の死亡でない場合 | 普通給与の半年分 |
普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。
この表の金額を上回る弔慰金を受け取った場合には、普通給与の3年分または半年分を上回る金額については退職金に含めて課税する取扱いになっています。
相続財産を国や地方公共団体、認定NPO法人、特定の公益法人に寄付することによって、その寄付をした財産には相続税が課税されなくなる特例があります。
寄付した金額について相続税の控除が受けられる特定の公益法人の範囲はかなり限定されており、寄付の時点で設立されている必要があります。そのため、新たに設立した法人に寄付しても認められません。
心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金は、心身に障害を持っている方を扶養するために支給される給付金であるため、非課税となります。
また、個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産については、土地等が非課税となります。ただし、相続が開始された時点の少なくとも5年前から継続して運営されていること等の条件があります。
他にも、交通事故など、不慮の事故によって被相続人が死亡した場合には、被相続人の遺族に対して支払われた損害賠償金は非課税となります。一方で、生前に受け取る予定だった損害賠償金を受け取らずに被相続人が死亡したケースでは、損害賠償金に相続税がかけられます。
相続税の課税対象となる財産について、見落としがちなものがあります。
相続税を申告するときに、本来ならば課税対象となる財産を見落としてしまうと、本来よりも高額な相続税を支払ってしまうリスクや、追徴課税を受けるリスクが生じてしまいます。
見落としがちな相続財産について、以下で解説します。
葬儀費用として認められる支出は、相続財産から控除することができます。ただし、被相続人を弔うための支出であっても、葬儀費用として認められないことがあります。
葬儀費用として認められる費用と認められない費用として、それぞれ次のものが挙げられます。
名義預金とは、実際にお金を預金している人と口座の名義人が違う預金のことをいいます。名義が他のものであっても、その預金については被相続人の財産であったものとされるため相続税が課税されます。
名義預金でよくあるパターンとして、被相続人が生前に配偶者や子、あるいは孫のために口座を作り、そこに入金していたケースが挙げられます。
また、子や孫がお金を浪費することがないように、被相続人が口座を管理していたような場合にも名義預金とされます。
相続が発生すると預貯金を口座から引き出せなくなるため、財産を保有している方の死期が近くなると、生活費や葬儀費用等に使うために預貯金を引き出して、親族の手元に置いておく場合があります。この場合において、引き出したお金を被相続人が亡くなるまでに使わなかったケースでは、引き出したお金は相続税の課税対象になります。
これは、被相続人が死亡する3年前に行われた贈与は相続財産に加算されるのと同じ扱いをされるためです。
借地権とは、他人の土地を借りて使う権利のことであり、借家権とは、他人の家を借りて使う権利のことです。
例えば、被相続人が他人の土地に家を建てて暮らしている場合には、基本的には家だけを相続することになります。しかし、その土地に家を建てるための借地権を設定していた場合には、借地権についても相続します。
被相続人の著作権は相続財産になります。そのため、被相続人の著作物に経済的な価値があると、相続税の課税対象になります。
課税対象になり得る著作物として、次のものが挙げられます。
相続財産を調べるときには、基本的に家の中など、被相続人の身近な場所を地道に調査します。
預貯金については、通帳やキャッシュカード、郵便物等から口座がある金融機関を探します。また、不動産であれば、登記済証(いわゆる権利証)や固定資産税の納税通知書がないかを確認し、役所にある名寄帳を確認します。
マイナスの財産の調査については、督促状や口座の引き落としを確認し、信用情報機関に照会する等の方法があります。
相続財産調査について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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相続は、滅多に経験しない出来事であり、経験の少ない方は特定の財産が相続の対象か否かで迷いやすいです。そのため、もしも税務調査が入ってしまうと、かなり高い確率で申告漏れを指摘されてしまいます。
相続税の申告漏れがあると、延滞税等の支払いを命じられるおそれがあります。そのような事態を防ぐためにも、弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、どの財産が相続財産に該当するかが分かりますし、申告できる費用を見落としていれば節税できる可能性があります。また、相続税に関すること以外の相続の困りごとについても相談していただくことができます。まずはお電話にてご相談ください。