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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
相続が発生すると、法定相続分に従って分割することが基本となります。しかし、同居していた相続人であれば、亡くなった方の身の回りの世話や介護等をしてきたケースが少なくありません。 そこで、同居していた相続人は、寄与分を主張できる可能性があります。 この記事では、同居によって寄与分は認められるのか、同居で寄与分を主張できるケースとできないケース、特別寄与料などについて解説します。
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寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加について「特別の寄与」をした相続人の相続分を増やして、その貢献に報いるための制度です。 ここで、「特別の寄与」とは、被相続人との身分関係(夫婦、親子、兄弟姉妹等)から通常期待される程度を超えるような貢献のことです。そのため、単に「被相続人と同居していた」という事実があっても、寄与分が認められることはほとんど考えられません。 また、“食事の用意をしていた”といった程度の身の回りの世話についても、同様でしょう。
寄与行為は、大きく5つの類型に分けることができます。被相続人と同居していた相続人に寄与分が認められるケースを、類型に沿ってご説明します。
相続人が被相続人と同居して、自身の扶養義務の範囲を超えて扶養していたことで、被相続人が生活費等の支出を免れた場合、扶養型の寄与分が認められます。 支出する内容としては、飲食の費用や衣服の費用、医療費、税金等が考えられます。それらのすべてが寄与分になるわけではなく、扶養義務の範囲内とされる部分については差し引かれます。 扶養型の寄与分について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続人が被相続人と同居しながら看護(または介護)に専念した場合、療養看護型の寄与分が認められる可能性が高いです。 ただし、以下のような場合は寄与分が認められる可能性は低かったり、主張すること自体ができません。
療養看護型の寄与分について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続人が同居する被相続人の営む事業に労務を提供したことで、被相続人の財産の維持・増加につながった場合、家事従事型の寄与分が認められます。事業の典型例として、農業や商業が挙げられます。 家事従事型の寄与分について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続人が同居する被相続人名義の家のローンをすべて立て替えた場合等、相続人が被相続人に対し、財産上の利益を給付した場合、金銭出資型の寄与分が認められます。その他に事業資金や不動産等の購入資金を援助したり、借金の弁済をしたりした場合も金銭出資型に該当します。 金銭出資型の寄与分について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続人が同居する被相続人に代わって、被相続人名義の土地の売却交渉を行ったことで、被相続人が不動産仲介業者への仲介手数料相当額の支出を免れた等、被相続人の財産の維持形成に貢献した場合、財産管理型の寄与分が認められます。 そのほか、被相続人の賃貸不動産を管理したり、賃借人の立ち退き交渉をしたりした場合も財産管理型に該当します。 財産管理型の寄与分について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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被相続人と同居して、同人の療養看護を相当程度担っていたとしても、その療養看護に対価が伴っている場合や専従性がない場合等は、療養看護型の寄与分として認められないと考えられます。 例えば、以下のような行為は寄与分が認められにくいでしょう。
特別寄与料とは、被相続人の財産の維持や増加について特別の貢献をした相続人以外の親族が、その貢献に応じて請求できる金銭です。 例えば、被相続人の長男の妻が被相続人の介護を担っていた場合、長男の妻は相続人ではないため、寄与分を受け取ることは基本的にできません。妻の貢献を長男の寄与分に反映できる可能性はありますが、自分自身では療養看護を行っていない長男に寄与分を認める違和感があったり、長男が被相続人よりも先に亡くなってしまう場合、長男の妻に寄与分を認めることができないことになります。 このようなケースで、長男の妻の貢献を適正に考慮するために特別寄与料の制度が存在します。 ただし、特別寄与料を請求できるのは、療養看護などの労務の提供を行った者に限定されます。そのため、財産上の給付等だけを行っていただけでは、特別寄与料を請求することはできません。 特別寄与料について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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寄与分の算定方法は、法律で明確に決められているわけではなく、寄与行為の類型によって変わってくるためとても複雑です。 代表例として、療養看護型の計算式は次のようなものです。
寄与分の金額=療養看護の報酬の相当額×介護日数×裁量的割合
ただし、寄与分に明確な相場はないため、相続人の話し合いによって決められることも多いです。 話し合いのときに、相続人が被相続人と同居していた場合には、主に次のような問題が生じるおそれがあります。
●被相続人と家計が一緒で、どれだけ扶養していたかわからない
被相続人と相続人が同居しており、家計が一緒になってしまうと、扶養するために支出した具体的な金額がわからないケースが多いです。
●自分だけが被相続人を扶養していたが、他の相続人も同居していた
自分以外に、他の相続人も被相続人と同居していた場合、自分だけが「特別の寄与」をしたと立証することが難しくなるおそれがあります。
寄与分の算定方法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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寄与分を主張するには、自身の貢献が、扶養義務の範囲を超えていたという証拠が必要です。 同居の場合は扶養型や療養看護型が特に多いと思われますが、それらの類型では、主に以下のような資料が証拠となります。
寄与分の主張について、さらに知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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【事件番号 平17(家)1193号・平17(家)1194号・平17(家)1195号、大阪家庭裁判所 平成19年2月26日審判】
本件は、被相続人の子である申立人が、歩行や移動に常に介助を要する状態の被相続人に対し、深夜も含む排泄介助や失禁の後始末、入浴介助、転倒時の助け起こし等の介護の大半を行っていた事案です。 申立人は、家事労働をこなしながら、これらの介護を行っており、その作業量、肉体的負担、所要時間から、申立人の生活の中心を被相続人への介護作業が占めたといっても過言ではないため、裁判所は申立人の被相続人に対する在宅介護について、専従性を認めました。 寄与分については、相続財産の総額の3.2%強に相当する750万円を認めました。 一方で、被相続人の資産を相続人が運用したことによって生じた利益については、株価の上昇自体は偶然であり、そのタイミングで保有株式を売却し、被相続人の財産を増加させたとしても、特別の寄与と評価するには値しない等の理由で、裁判所は寄与分の主張を否定しました。
被相続人が亡くなる直前は同居していなかったけれど、過去に同居して扶養していた期間があるという場合も、扶養型の要件を満たしていれば寄与分が認められる可能性はあります。 なお、単に同居期間が長かったとしても、それだけで寄与分が増額されるわけではなく、寄与の程度に応じて、寄与分の額は決められます。すなわち、共同相続人のうち、同居期間が短い者の方が、長い者よりも財産の維持又は増加との因果関係が強い場合には、前者の方が後者よりも寄与分の額が大きくなることもあります。
相続人が、被相続人のために行った家事が、扶養型や療養看護型の寄与分として認められるほどの「特別の寄与」といえるようであれば、その分を上乗せして寄与分を算定できる可能性はあります。 ただし、親族は扶養義務を負っているため、家事をその義務の範囲を超えるほどの特別な行為であると認めてもらうのは、難しいと考えられています。
寄与分は、単に「被相続人と同居していた」という事実だけでは認められにくいため、「特別の寄与」によって被相続人の財産の維持または増加に貢献したことを立証することが重要です。 しかし、寄与分を主張すると、他の相続人がそれを認めず相続争いに発展してしまう傾向があります。そのような場合であっても、弁護士であれば被相続人や共同相続人の経済状況や家族関係を分析したうえで、依頼者様の寄与行為を立証できる証拠を集め、効果的な主張をすることができます。ご自身のこれまでの貢献や努力を評価してもらうためにも、ぜひ一度弁護士にご相談ください。