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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
養子縁組とは、血縁関係のない2人が法的に親子の関係となる制度です。 養子であっても、血縁関係のある実子と変わらない相続権があります。 養子縁組をして子を増やすことは、相続税の節税につながります。 しかし、養子を増やせば増やすほど節税になるわけではありませんし、場合によっては相続税が増えるおそれがあります。 この記事では、養子の法定相続分はどの程度か、養子が亡くなった場合の相続はどうなるのか、養子が法定相続人になることにデメリットはあるか等について解説します。
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養親と養子の間には法律上の親子関係が成立しているため、養親が亡くなった場合、養子は、実子と同じ第1順位の法定相続人として扱われます。 ただし、養子縁組の種類によっては、養子が亡くなったときに遺産を相続する親の範囲が変わることがあります。
養子縁組には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。 それぞれ、以下のような制度です。
2種類の養子縁組のうち、再婚時に連れ子と行われたり、相続税対策として行われたりするのは、普通養子縁組であるのが一般的です。 普通養子縁組であれば、養子が亡くなったときには養親だけでなく血のつながった親も法定相続人になる可能性がありますが、特別養子縁組であれば、養子が亡くなったときに法定相続人となるのは養親だけです。 なお、相続順位についての詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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普通養子縁組を行った場合、実親(血のつながった親)との親子関係は継続しているため、養子は、養親と実親の双方について相続権があります。 したがって、養子は、養親が亡くなった場合と実親が亡くなった場合のどちらも法定相続人になります。 基本的には、養親となる者と養子となる者が合意して届出をすれば、普通養子縁組は成立します。 このとき、次のような要件を満たす必要があります。
特別養子縁組を行った場合には、実親との法律上の親子関係は終了します。そのため、養子は実親について相続権を有しておらず、養親についてのみ相続権を有しています。 したがって、養子は、養親が亡くなった場合にのみ法定相続人となり、実親が死亡した場合には法定相続人になりません。 特別養子縁組は、家庭裁判所による審判が確定すれば成立します。 また、次のような要件を満たす必要があります。
なお、家庭裁判所が審判をする前に、養親となる者が養子となる者を監護する、6ヶ月間以上の試験的な期間が設けられます。
法定相続分とは、法律によって定められている、基本的な遺産の取り分のことです。 簡単にいえば、亡くなった方と近い関係だった親族について、より高い割合の取り分が与えられる可能性があります。 そのため、亡くなった方の配偶者には常に法定相続分があり、他の相続人には優先順位があります。
法定相続人の優先順位は、次のように定められています。
第1順位とされている被相続人の子には、実子であれ養子であれ、法定相続分があります。そして、法定相続分は養子と実子で違いはなく、同じ割合とされています。 なお、法定相続分についての詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。
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このケースでは、「配偶者・実子・養子」が法定相続人になります。そして、法定相続分は、第1順位の法定相続人の法定相続分(2分の1)を実子と養子で2等分します。 これをまとめると、以下のようになります。
子が生きているとき、その子の子(被相続人の孫)は通常であれば法定相続人になりませんが、被相続人の養子になっているときには、実子と同じく第1順位の法定相続人として扱われます。 したがって、例えば被相続人に配偶者がおり、その配偶者との間に実子が2人(実子A・B)いて、実子Bの子(被相続人の孫)を養子にしていたケースでは、次の者が法定相続人となります。
そして、第1順位の法定相続人の法定相続分(2分の1)を実子A・B・孫(養子)で3等分します。 これをまとめると、次のようになります。
なお、孫が法定相続人になるケースはこちらの記事にまとめてありますので、併せてご覧ください。
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被相続人と配偶者の間に実子が2人(実子C・D)いて、実子Dの唯一の子(被相続人の孫)を養子にしていた場合において、実子Dが被相続人より先に亡くなっているケースについて考えます。 このケースで法定相続人になるのは、次の者です。
ここで、養子となっている孫は、養子として相続するだけでなく、先に亡くなった実子Dの代わりに相続する者(代襲相続人)でもあります。 つまり、第1順位の法定相続人の法定相続分(2分の1)を実子C・D(本来相続するはずであった者)・孫で3等分して、Dの法定相続分も孫のものとすることになるのです。 孫と養子縁組していることは、配偶者の法定相続分(2分の1)には影響しません。 上記の内容をまとめると、次のようになります。
なお、代襲相続についての詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。
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被相続人の子が被相続人より先に亡くなっている等の理由により代襲相続が発生した場合、通常は被相続人の子の子(被相続人の孫)が代襲相続することになります。 しかし、被相続人の子が養子であった場合には通常とは異なる取扱いがなされるため、養子の子が代襲相続できるとは限りません。 養子の子が代襲相続できるかは、養子の子の出生が、被相続人と養子が養子縁組を行う「前」か「後」かによって、次のように結論が異なります。
養子が亡くなった場合には、被相続人である養子に対して、法定相続人は誰になるのでしょうか。 この場合も、行った養子縁組の種類によって法定相続人になる人は異なります。
普通養子縁組を行ったケースで養子が亡くなった場合、養子に配偶者がいれば、その配偶者は常に法定相続人になります。 また、配偶者との間に子がいれば、子は第1順位の法定相続人になり、子がいなければ、養親と実親が、ともに第2順位の法定相続人になります。 そして、養親・実親の全員が亡くなっており、その上の世代(祖父母等)も全員が亡くなっていれば、養親・実親側の兄弟姉妹がともに第3順位の法定相続人になります。 このように、普通養子縁組の場合、実親との親子関係は継続しているため、実親の親族が法定相続人になることもあります。 なお、法定相続分については、養親と実親、養親の親族と実親の親族とで違いはありません。同順位の法定相続人の数で、相続分を均等に分けます。
養子の配偶者 | 常に法定相続人 |
---|---|
養子の子 | 法定相続人(第1順位) |
養子の養親・実親 | 子がいなければ法定相続人(第2順位) |
養子の養親・実親側の兄弟姉妹 | 子も養親・実親もいなければ法定相続人(第3順位) |
特別養子縁組を行ったケースで養子が亡くなった場合、養子に配偶者がいれば、その配偶者は常に法定相続人になります。 また、配偶者との間に子がいれば、子は第1順位の法定相続人になり、子がいなければ、養親だけが第2順位の法定相続人になります。つまり、実親は法定相続人になりません。 そして、養親が亡くなっており、その上の世代(祖父母等)も全員が亡くなっていれば、養親側の兄弟姉妹が第3順位の法定相続人になります。 このように、特別養子縁組の場合、実親との親子関係は解消されているため、実親の親族が法定相続人になることはありません。
養子の配偶者 | 常に法定相続人 |
---|---|
養子の子 | 法定相続人(第1順位) |
養子の養親 | 子がいなければ法定相続人(第2順位) |
養子の養親側の兄弟姉妹 | 子も養親・実親もいなければ法定相続人(第3順位) |
養子縁組をすると、子供の人数が増えるため、法定相続人の人数が増える場合が多いです。 法定相続人の人数が増えれば、相続税の基礎控除額や生命保険金等の非課税枠が増額できるため、節税になる可能性があります。 ただし、実子がいないケースで養子縁組をすると、法定相続人が減ってしまうことがあります。 例えば、法定相続人が2人の兄弟であったときに養子縁組をすると、法定相続人は1人の養子だけとなってしまうため、法定相続人が減ってしまうのです。 「養子がいれば節税になる」と思い込むのではなく、慎重に検討するようにしましょう。
相続税の基礎控除とは、遺産から一定の金額を差し引いてから税金を課す制度です。主に、遺族の生活を保障することを目的として設けられています。 基礎控除により、遺産総額から「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」が差し引かれます。養子縁組によって法定相続人が増えれば、基礎控除の金額も増えるため、相続税が課税される金額が下がり、税金の金額も下がります。 なお、相続税の計算方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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生命保険の死亡保険金や死亡退職金も相続税の課税対象です。 死亡退職金とは、被相続人が生きたまま退職していれば受け取ることができた退職金を、代わりに遺族に対して支払うものです。 死亡保険金や死亡退職金には、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。養子縁組をすることによって法定相続人が増えると非課税枠も増額されるため、相続税が減額されることになります。
相続税法では、法定相続人として数えることのできる養子の人数に上限を設けています。 これは、養子縁組によって無制限に法定相続人を増やせることにすると、常識的に考えられないほどの人数と養子縁組をして、相続税を0円に近づけようとする者が現れるかもしれないからです。 このような方法によって相続税を免れることを防ぐために、制限がかけられています。 法定相続人として数えることのできる養子の人数は次のとおりです。
養子が法定相続人になる場合に生じるデメリットについて、以下で解説します。
被相続人が、実子には養子縁組の事実を知らせないまま亡くなってしまったケースでは、実子が想定していた相続分を減らされてしまうため、納得できずにトラブルに発展してしまうリスクがあります。 養子縁組をする際には、実子にそのことを説明して、十分な理解を得ておくようにしましょう。
養子縁組をしてしまうと、解消するのが難しいことには特に注意が必要です。 なぜなら、節税等が主な目的であったとしても、養子縁組をしてしまえば、養子にも実子と同じ割合で相続権が発生するからです。 そのため、「節税になる」と言われて養子縁組をした相手が欲深い人間であり、遺産を狙っているかもしれません。 養子縁組を解消するためには、基本的に養親と養子の双方が同意しなければなりませんが、遺産を狙っている養子が同意するとは考えられません。 裁判所で離縁の訴えを起こすことは可能ですが、離縁を成立させるためには「養子縁組を継続し難い重大な事由」が必要であり、証明するのは簡単ではないことに留意しましょう。
相続において、「相続税の2割加算」が適用されることがあります。 相続税の2割加算が適用されるのは、「配偶者、両親、子、代襲相続人となった孫以外の者」が相続した場合です。 ここで重要なのは、「代襲相続人となった孫」だけが除外されており、「養子となった孫」は除外されないことです。 これは、孫が相続するまでに、通常であれば相続税を支払う機会が2回あるはずであり、孫を養子にして相続税を支払う機会を1回にするのは公平でないからです。 なお、他の者に相続税の2割加算が適用されるのは、偶然の要素が大きいと考えられる相続であり、税負担を重くしても生活に支障はないはずだからです。
法定相続人としての養子に関してよくある質問について、以下で解説します。
再婚しても、配偶者の連れ子が自動的に法定相続人となるわけではありません。 配偶者の連れ子を法定相続人とするためには、養子縁組を結ぶ必要があります。 養子縁組をしないままでいると、配偶者の連れ子と実の親子のような関係になったとしても、自身が急に死んでしまったときに、配偶者の連れ子には遺産の取り分がないことになるため注意しましょう。
遺留分とは、法定相続人が有する遺産の最低限の取り分です。養子にも遺留分が認められ、その割合は実子と同じです。 実子にも養子にも遺留分が認められるために、生前贈与や遺言書によって誰かに偏った財産の分け方をすると、遺留分の主張で争いに発展するおそれがあります。 そのため、財産を生前贈与や遺言書によって分配するときには、法定相続人の遺留分を侵害しないように配慮して行うのが望ましいでしょう。 遺留分について詳しく知りたい方は、こちらの記事を併せてご覧ください。
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実親が亡くなったときに、親族や第三者の養子になっている子が法定相続人になれるかは、普通養子縁組であるか、特別養子縁組であるかによって結論が異なります。 普通養子縁組の場合には、実親との法的な親子関係に影響を与えない制度であるため、実親との親子関係を続けながら、養親とも新たな親子関係を作ることになります。 一方で、特別養子縁組の場合には、基本的に実親との親子関係を続けるのが適切ではない状況で用いられます。そのため、実親との法的な親子関係を解消して、養親だけが法的な親になります。 以上のことの結果として、実親の相続については次のように結論が異なります。
養子縁組をすると、養子は法定相続人となります。法定相続人の人数が増えると相続税を抑えられること等から、養子縁組の活用を考えている方もいらっしゃるでしょう。 しかし、相続において、養子は実子と対等な権利を有することになります。そのため、血のつながっていない養子と実子の間で、遺産分割についてトラブルが発生するリスクは低くありません。 また、状況によっては、養子がいるために余分な相続税がかかってしまうリスクもあります。 そこで、養子縁組を検討している方や、養子縁組をしている方は、弁護士にご相談ください。 弁護士であれば、養子縁組をすることが節税につながるかを検討して助言することができます。また、トラブルを防止するための遺言書の作成についてアドバイスを行うこともできます。 子の配偶者に世話になったので、遺産を与えようと考えている方もいらっしゃるでしょう。 そのときに、養子にするのが良いのか、遺言書を用いるのが良いのかで迷っている方についても、ぜひお気軽にご相談ください。