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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
相続欠格とは、本来相続人である者について、一定の事情がある場合に、自動的に相続権を失わせる制度です。この制度は、違法・不正な手段で相続の利益を得ることを防止することを趣旨としています。 しかし、相続欠格になった人に子供がいる場合には、その子供が代わりに相続できる場合があるため、相続人が誰になるかを検討するときには注意しましょう。 この記事では、相続欠格となる事由や相続人廃除との違い、相続欠格者がいる場合の留意点等について解説します。
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相続欠格とは、不正な方法で相続財産を得ようとした者等の相続権を自動的に失わせるものです。これは、相続制度を悪用しようとした者の権利を失わせて、秩序を維持すること等を目的としています。 相続欠格が適用されると、相続することだけでなく、遺贈を受けることもできなくなります。そのため、遺言書に相続財産の分配に関する記載があったとしても、財産を受け取ることはできません。
相続欠格に該当する者の相続権は自動的に失われるため、手続きをする必要はありません。ただし、相続欠格に該当する者が、その事実を認めない場合には手続きが必要となるおそれがあります。 相手方が、自分は相続欠格に該当しないという旨の主張をし続ける場合には、相続人の地位不存在確認請求訴訟を提起して、裁判で争うことになります。
代襲相続とは、本来相続人となるはずであった者が相続しなくなった場合に、その者の子供が代わって相続人になる制度です。この制度は、相続欠格による相続権の喪失についても適用されます。 そのため、相続欠格者が被相続人の子や孫、ひ孫といった立場であるケースや、被相続人の兄弟姉妹であるケースでは、欠格者に子供がいる場合、その子供は欠格者に変わって相続します。 ただし、兄弟姉妹について代襲相続が発生する場合には、被相続人の甥姪を限度として、彼らの子供が代襲相続する、いわゆる再代襲相続は認められていません。 なお、相続放棄をした人については最初から相続人でなかったものとして扱われるため、代襲相続が発生しません。 代襲相続について知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。
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相続欠格の事由として、以下の5つが挙げられます。
被相続人や相続について先順位にある人、または同順位にある人を故意に殺害し、または殺害しようとしたために、刑に処せられた人は相続欠格に該当します。そのため、殺人が既遂に至っている場合のみならず、殺人未遂や殺人の準備行為(殺人予備罪)について刑に処せられた人も相続欠格に該当します。 ただし、ここでいう「刑に処せられた」というのは実刑判決が確定したことや、執行猶予が取り消されたことを指します。執行猶予中や期間が満了したときは相続欠格には該当しません。 さらに、傷害致死や過失致死等については、故意に殺していないため相続欠格には該当しません。
被相続人が殺害されたことを知っていたにもかかわらず、告発や告訴といった対応をしなかった人は相続欠格に該当します。 これは、被相続人が殺害された当時に告発、告訴するのは相続人の義務であることを前提として、このような義務を果たさなかった道義的責任を課すものです。そのため、道義的責任を課すことが相当でないと考えられる人については、例外として、相続欠格に該当しないと考えられています。 具体的には、犯人が自身の配偶者や直系血族である人、幼い子供や、認知症等によって告発や告訴はできなかった人がこれに該当します。
詐欺や脅迫によって、相続に関する遺言の作成や、変更等を妨げた人は相続欠格に該当します。 被相続人が、自分にとって不利となる遺言書を作成しようとしているときや、自分にとって有利な遺言書を書き換えようとしているとき等に、それらを妨げるために詐欺や脅迫をした場合は、相続欠格に該当します。
詐欺や脅迫によって、相続に関する遺言をさせたり、変更をさせたりした人は相続欠格に該当します。 被相続人に、詐欺や脅迫によって、自分にとって有利な遺言書を作成させる等した場合には、相続欠格に該当します。
遺言書の破棄や改ざん等をした人は相続欠格に該当します。 被相続人の筆跡を真似て遺言書を偽造したり、自分にとって不利な遺言書を発見して破り捨てたりすると、相続欠格に該当します。
相続欠格が、欠格事由に該当すると自動的に相続権を失う制度であるのに対して、相続人廃除は被相続人が家庭裁判所に申し立てることによって相続権を失わせる制度です。 相続人廃除が認められる要件として、次のようなものが挙げられます。
なお、相続人廃除の対象は、遺留分を有する推定相続人だけです。兄弟姉妹など、遺留分のない者の相続権を失わせたい場合には、遺言書を作成しましょう。 相続欠格と相続人廃除の違いについて、表にまとめたのでご覧ください。
相続欠格 | 相続廃除 | |
---|---|---|
被相続人の意思表示 | 不要 | 必要 |
家庭裁判所の審判 | 不要 | 必要 |
撤回の有無 | 基本的にできない | できる |
戸籍への記載 | 記載されない | 記載される |
証明方法 | 相続欠格者が争った場合には裁判の判決による | 家庭裁判所の審判による |
相続人廃除について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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相続欠格は、欠格事由に該当した者の相続権を自動的に剥奪するため、意思表示をする必要がありません。 一方で、相続人廃除の場合には、被相続人の意思表示が必要であり、家庭裁判所に申し立てなければなりません。
相続欠格は、被相続人の意思によらず、要件を満たすと自動的に適用されるため、基本的には撤回することができません。 一方で、相続人廃除については、被相続人の意思で取り消すことが可能です。取り消すときにも、家庭裁判所に申し立てる必要があります。
相続欠格が生じると、相続欠格者に子供がいる場合には代襲相続が発生します。 また、既に遺産分割協議が成立していた場合は、他の相続人が「相続回復請求」を行うことによって相続財産を取り戻すことができます。 これらの影響について、次項より解説します。
無事に遺産分割協議が成立して相続を行った後になって初めて相続欠格が発覚した場合には、相続人に対して相続回復請求をすることが可能です。 相続回復請求とは、本来相続権を有さないにもかかわらず、一見相続人に見える人が、相続を原因として相続財産を取得する等の体を成して、真の相続人の権利を侵害している場合に、真の相続人が相続財産を取り戻すための請求です。相続欠格者は一見相続人ではあるものの、相続権を有さないので、相続回復請求の対象となります。 この請求は、相続権が侵害されたことを知ってから5年、または相続が開始してから20年で消滅時効となってしまうため、侵害の事実に気づいたらすぐに請求するようにしましょう。
相続欠格証明書
私、○○は、被相続人○○(●年●月●日死亡)の相続に関し、民法891条第○号に規定する欠格者に該当する。
以上のとおり、相違ないことを証明します。
●年●月●日
東京都●区●丁目●番●号
○○ 印
相続欠格者がいる場合には、相続欠格証明書を作成して相続手続きを行います。 相続欠格者であることは戸籍に記載されないので、役所等から発行される書類だけでは確認することができません。そのため、相続欠格者であることを証明する書類が必要となります。 相続登記など、相続人の全員の戸籍が必要となる手続きでは、相続欠格者であることを証明できる書類も添付します。
【事件番号 平29(ワ)15240号、東京地方裁判所 平成31年3月7日判決】 被相続人Aが亡くなる6日前に遺言書を作成して、再婚した配偶者Yに対して不動産を相続させる旨の遺言をしたことについて、亡Aの2人の子供(X1・X2)が偽造である旨を指摘して、Yは相続欠格に該当するため相続人に該当しないこと等を主張した事例です。 裁判所は、原告X1・X2は被相続人と疎遠になっていたため、亡Aが不動産を被告Yに相続させる意思を持っていた可能性が考えられることを指摘しました。 しかし、亡Aが死亡する6日前には身体能力が非常に低下していたため、遺言書を自筆して鮮明に押印することはほぼ不可能だったとして、遺言書は偽造であり無効であると判断しました。 そして、遺言書の偽造は相続欠格事由に該当するため、被告Yは相続人に該当しないと認めました。
ある人物の言動が相続欠格に該当するかについては、判断が難しい場合もあります。相続欠格に該当するかが分からなければ、誰が相続人になるのかを判断することが難しくなります。 また、相続欠格者の子供に財産を承継させたくないと考えるのであれば、代襲相続する相続欠格者の子の取り分を減らすために遺言書を作成する等の対策をしておく必要があります。 そこで、相続欠格に関して悩んでいる方は、弁護士にご相談ください。自分の財産を、なるべく希望に沿って分配するために、可能な限りのアドバイスを致します。