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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
遺産分割協議書は、一般的に相続財産の内容をすべて記載します。しかし、不動産のみを記載した協議書を作成することも可能です。 不動産の相続登記を行うためには、不動産の相続だけが分かる協議書であっても問題ありません。ただし、登記の添付書類にするためには、正しい書き方をする必要があります。 この記事では、不動産だけを記載した遺産分割協議書の作成について、テンプレートや書き方、必要書類、注意点、作成後の流れ等について解説します。
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遺産分割協議書は「不動産のみ」で作成することも可能です。 預貯金や株式などの財産情報を他人に知られたくない場合には、「不動産だけ」を記載した遺産分割協議書を作成する方法があります。 本来、遺産分割協議書にはすべての相続財産(不動産、預貯金、有価証券など)を詳しく記載するのが一般的ですが、相続登記を目的とする場合には、不動産のみを記載したものでも有効です。 また、すべての財産を記載した遺産分割協議書を作成したうえで、不動産部分だけを抜き出したものを別途作成し、相続登記にはその抜粋版を使用することもできます。
遺産分割協議書には、決まった書式はありません。自分で作成することも可能ですが、無効になるリスク等を抑えるために、なるべく専門家に作成を依頼することが望ましいでしょう。 相続財産に含まれる不動産の種類や分割方法によって、遺産分割協議書の書き方は異なります。そのため、以下に掲載する書き方の例を参考にしてください。
遺産分割協議書
被相続人の氏名 ●●(●●年●●月●●日死亡)
本籍地 ●●
最後の住所 ●●
生年月日 ●●年●●月●●日
上記被相続人●●の共同相続人である●●及び●●は、被相続人の遺産について協議を行った結果、以下のとおり遺産分割することに合意した。
1.相続人●●は、次の土地を取得する。
所在 ●●市●●町●●丁目
地番 ●●番●●
地目 宅地
地積 ●●・●●平方メートル(㎡)
2.相続人●●は、次の建物を取得する。
所在 ●●○○町○○丁目 ○○番地○○
家屋番号 ●●番●●
種類 居宅
構造 木造スレート葺2階建
床面積 1階 ●●・●●平方メートル(㎡)
2階 ●●・●●平方メートル(㎡)
3.相続人●●は、次のマンションの専有部分及び敷地権を取得する。
一棟の建物の表示
所在 ●●市●●町●●丁目●●番地●●
建物の名称 ●●ヒルズマンション
専有部分の建物の表示
家屋番号 ●●丁目●●番●●の204
建物の名称 204
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造10階建
床面積 2階部分 ●●・●●平方メートル(㎡)
敷地権の表示
所在及び地番 ●●市●●町●●丁目●●番●●
地目 宅地
地積 ●●・●●平方メートル(㎡)
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 ●●万分の●●
4.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人●●がこれを取得する。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を2通作成し、それぞれ署名捺印のうえ、各自1通を保有するものとする。
●●年●●月●●日
住所 ●●●●
相続人 ●●●● (実印)
住所 ●●●●
相続人 ●●●● (実印)
不動産のみを記載する場合、遺産分割協議書には次の内容を記載します。
これらの内容について、次項より解説します。
被相続人を明確にするために、遺産分割協議書には以下の情報を記載しましょう。
登記記録における被相続人の住所と、被相続人の最後の住所が異なる場合には、被相続人の住民票等によって同一人物であることを証明します。このとき、遺産分割協議書に、登記記録における被相続人の住所も記載するのが望ましいです。 遺産分割協議書を作成する前に、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本、住民票の除票等を取得しておき、それらに記載されている文言を正確に書き移すようにしましょう。 なお、遺産分割協議書には前文を記載して、そこに「相続人全員による遺産分割協議が成立した」旨も明記します。
遺産分割協議書には、不動産の情報として、遺産分割協議で決まった相続方法を記載します。 誰がどの不動産を相続するかを明記して、複数名で相続して共有する不動産については各相続人の持ち分も記します。 相続財産である不動産については、必ず特定できるように記載しましょう。地番や家屋番号、面積等について、不動産ごとに記載する必要があります。 マンションについては、相続する部屋(専有部分)を特定して、敷地権についても記載しましょう。 不動産の情報を正確に記載するために、遺産分割協議書を作成する前に、登記事項証明書を取得することをおすすめします。登記事項証明書は最寄りの法務局で取得できるので、遠方の不動産のものについても取得可能です。
遺産分割協議書には、土地や建物の情報として、主に以下のような事項を記載します。
| 土地 | ・所在 ・地番 ・地目(宅地、田、畑、山林等) ・地積(土地の面積) |
|---|---|
| 建物 | ・所在 ・家屋番号 ・種類(居宅、店舗、事務所、倉庫等) ・構造(木造かわらぶき平家建、鉄筋コンクリート造陸屋根三階建等) ・床面積(建物の壁や柱等に囲まれた部分の面積) |
遺産分割協議書には、建物全体と相続する部屋(専有部分)、敷地権について記載します。 それぞれの情報として、主に以下のような事項を記載します。
| 建物全体 | ・所在 ・建物の名称 |
|---|---|
| 部屋(専有部分) | ・家屋番号 ・建物の名称 ・種類 ・構造 ・床面積 |
| 敷地権 | ・土地の符号 ・所在及び地番 ・地目 ・地積 ・敷地権の種類 ・敷地権の割合 |
遺産分割協議書には、これらの事項について、登記事項証明書の記載を正確に書き写すように注意しましょう。
被相続人が他者と共有していた不動産を相続すると、共有持分を有することになります。土地や建物、マンションの共有持分を相続する場合には、遺産分割協議に次の事項を記載します。
| 土地 | ・所在 ・地番 ・地目(宅地、田、畑、山林等) ・地積(土地の面積) ・相続人の持分 ・共有者および共有者の持分 |
|
|---|---|---|
| 建物 | ・所在 ・家屋番号 ・種類(居宅、店舗、事務所、倉庫等) ・構造(木造かわらぶき平家建、鉄筋コンクリート造陸屋根三階建等) ・床面積(建物の壁や柱等に囲まれた部分の面積) ・相続人の持分 ・共有者および共有者の持分 |
|
| マンション | 建物全体 | ・所在 ・建物の名称 |
| 部屋(専有部分) | ・家屋番号 ・建物の名称 ・種類 ・構造 ・床面積 ・相続人の持分 ・共有者および共有者の持分 |
|
| 敷地権 | ・土地の符号 ・所在及び地番 ・地目 ・地積 ・敷地権の種類 ・敷地権の割合 ・相続人の持分 ・共有者および共有者の持分 |
|
共有分割とは、不動産等の相続財産を、相続人が共有取得によって相続する方法です。売却等のときに共有した相続人間で意見の相違が発生し、トラブルになりがちであるため、最後の手段として用いられるケースが多いです。 共有分割をするときに、遺産分割協議書には、誰がどれだけの割合で相続するのかを明記して、共有持分が分かるようにしましょう。 他の記載事項は、一軒家やマンションを単独で相続するときと同様なので、遺産分割協議書には以下のような事項を記載します。
| 土地 | ・所在 ・地番 ・地目(宅地、田、畑、山林等) ・地積(土地の面積) ・相続人の持分 ・共有者および共有者の持分 |
|
|---|---|---|
| 建物 | ・所在 ・家屋番号 ・種類(居宅、店舗、事務所、倉庫等) ・構造(木造かわらぶき平家建、鉄筋コンクリート造陸屋根三階建等) ・床面積(建物の壁や柱等に囲まれた部分の面積) ・相続人の持分 ・共有者および共有者の持分 |
|
| マンション | 建物全体 | ・所在 ・建物の名称 |
| 部屋(専有部分) | ・家屋番号 ・建物の名称 ・種類 ・構造 ・床面積 ・相続人の持分 ・共有者および共有者の持分 |
|
| 敷地権 | ・土地の符号 ・所在及び地番 ・地目 ・地積 ・敷地権の種類 ・敷地権の割合 ・相続人の持分 ・共有者および共有者の持分 |
|
不動産のみについて記載した遺産分割協議書であっても、トラブル防止のために、相続財産として新たに不動産が発見された場合の分割方法について記載しておきましょう。 新たに発見された不動産の分割方法は、主に以下の3つの方法から選ぶことができます。
遺産分割協議書の末文には、遺産分割協議が成立した旨、相続人全員分の遺産分割協議書を作成した旨、および成立した年月日を記載して、相続人全員が署名して実印で押印します。 遺産分割協議書には印鑑証明書を添付するため、押印するのが実印でなければ相続登記の申請等に使えなくなってしまいます。実印でない印鑑を用いないように注意しましょう。
遺産分割協議書を作成するときに必要な書類を表にまとめましたのでご覧ください。
| 書類名 | 対象となる人 | 備考 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本または除籍謄本 | 被相続人 | 出生から死亡までのすべて |
| 住民票の除票 | 被相続人 | ― |
| 戸籍の附票 | 被相続人 | 登記簿上の住所と死亡時の住所が異なるとき |
| 戸籍謄本 | 相続人 | 全員のもの |
| 印鑑証明書 | 相続人 | 全員のもの |
| 登記事項証明書 | ― | 相続財産である不動産のすべてのもの |
不動産を記載した遺産分割協議書を作成するときには、主に以下のような点に注意しなければなりません。
これらの注意点について、次項より解説します。
遺産分割協議書における不動産の表記は、登記事項証明書の記載内容に合わせましょう。不動産がある住所と、登記事項証明書に記載されている地番は異なることが多いため、注意が必要です。 不動産の記載が不正確だと、相続登記に使用できない可能性があります。
不動産の相続にあたって、念のために名寄帳を取得しておくと、同一の市区町村内にある不動産の存在を把握することが可能です。相続や登記の漏れを防ぐために、名寄帳の確認は重要です。 固定資産税の納税通知書だけを見ていると、課税されない低額な不動産の存在を見落とすリスクがあります。名寄帳であれば、そのような不動産も含めて存在を把握できます。
新たな不動産を発見したときのために、遺産分割協議書に取り決めを記載しておく必要があります。例えば、「記載されていない財産が発見された場合には長男○○が相続する」等と記載しておきます。 このような記載をしておかないと、新たな不動産が見つかる度に、その不動産の相続人を決めるための遺産分割協議を行わなければならないおそれがあります。 ただし、あまりにも高額な不動産が発見されると、遺産分割協議のやり直しを他の相続人から要求されるリスクが生じます。そのため、遺産分割協議を行う前に、可能な限り調査しておくことが望ましいでしょう。
遺産分割協議書を作成したら、相続登記の申請をします。相続登記に必要な書類は次のとおりです。
相続登記とはどのようなものかについては、以下の記事でわかりやすく解説していますのでご覧ください。
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遺産分割協議書の不動産に関する記載は、間違えると手続きに使えなくなるおそれがあるため、慎重に作成しなければなりません。しかし、多数の不動産を相続する場合、全てをミスなく記載するのは大変です。 特に、共有している不動産が多い場合には、持分の記載も必要となるため負担は大きくなります。 作成後にミスが発覚すると、協議書を作り直す必要が生じて、他の相続人とのトラブルに発展するリスクが生じます。 相続財産に多数の不動産が含まれている場合には、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば、正確な記載や手続きのサポートを受けられる可能性があります。手続きの負担を少しでも減らすために、ぜひご相談ください。