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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
被相続人が亡くなってから、遺産分割協議がまとまらないうちに相続人が亡くなってしまい、新たな相続が発生してしまうことがあります。このような相続を数次相続といいます。 数次相続は、相続手続きが複雑になるため、なるべく避けたい事態だと言えるでしょう。 この記事では、数次相続と代襲相続との違いや再転相続との違い、相続人調査や相続財産の調査、遺産分割協議、相続登記、相続税の申告の手続き等について解説します。
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数次相続とは、被相続人が亡くなった後で、遺産分割協議を行わないうちに相続人が死亡し、次の相続が開始された状況のことです。 最初に発生した相続を「一次相続」、次に発生した相続を「二次相続」と呼びます。 例えば、平成28年に父親が亡くなり、母親と長男、長女が相続人になったケースについて考えます。遺産分割協議を行わないままでいたところ、平成30年に長男が亡くなってしまい、長男の妻と長男の息子、長男の娘が長男の相続人になると、数次相続となって、父親の相続に全員が関係することになります。
代襲相続とは、被相続人の子や兄弟姉妹などが被相続人よりも先に亡くなっていた場合に、子や兄弟姉妹などの子が代わりに相続することです。 数次相続との違いは、相続人になる予定であった者が被相続人よりも後に亡くなっているか、先に亡くなっているかです。 それぞれの相続について、相続人は以下のとおりです。
数次相続 | 被相続人の相続人 |
---|---|
代襲相続 | 被相続人の相続人の子など(被相続人の孫や甥姪など) |
再転相続とは、相続が発生してから、熟慮期間が経過する前に相続人が亡くなって新たな相続が発生することです。熟慮期間とは、自己のために相続が開始されたことを知ってから3ヶ月の期間であり、相続放棄や限定承認を選択できます。 数次相続では、最初の相続が承認されており、新たな相続において相続放棄は行われません。この点が再転相続との違いです。
数次相続が発生すると、一般的な相続とは異なる手続きが必要となることがあります。2回の相続が発生するため、両方の相続手続きを同時に行うことに注意しましょう。 主な相続手続きは以下のとおりです。
これらの手続きについて、次項より解説します。
遺産分割協議は相続人の全員で行う必要があり、1人でも欠けたまま協議すると無効になります。数次相続において、まずは一次相続と二次相続に関して、それぞれの相続人全員を確定しなければなりません。 相続人を確定させるときには、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本を取得します。 相続人調査について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺産分割協議の事前準備として、被相続人が遺した相続財産をすべて調査します。遺産分割協議で分配した相続財産に漏れがあると、奪い合いになるリスクが生じるので注意しましょう。 調査では、被相続人の預貯金通帳や、固定資産税の納税通知書などを確認します。念のために、借金等がどれだけあるかについても確認しましょう。高額な借金等の負担が重ければ、相続放棄について考えなければなりません。 土地や建物等の財産については、評価額の計算も必要となります。 相続財産調査について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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数次相続における遺産分割協議は、一次相続と二次相続をまとめて行うことができます。また、それぞれを分けて行うことも可能です。 父親が亡くなって一次相続が発生し、母親が亡くなって二次相続が発生した場合のように、相続人が完全に重複していれば、1回にまとめて遺産分割協議を行うのが良いでしょう。 しかし、父親が亡くなって一次相続が発生し、子が亡くなって二次相続が発生した場合等では、相続人が異なるケースも少なくありません。このようなケースでは、それぞれの相続について、分けて遺産分割協議を行った方が良いでしょう。 遺産分割協議について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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数次相続で遺産分割協議を行ったら、一次相続と二次相続の協議書は分けて作成しましょう。両親が次々と亡くなったケース等については、まとめて作成しても問題は生じにくくなります。 協議書を分けて作成するときには、主に以下のような点に注意しましょう。
【相続人情報の記載欄】
【相続人の署名欄】 二次相続の被相続人の肩書は「相続人○○の相続人」と記載する
数次相続の相続登記は、基本的に一次相続、二次相続とそれぞれ行います。一次相続の相続登記を省略すると、相続の流れを正確に反映できないため、無効とされるケースが多いです。 しかし、一次相続の相続人が1人であり、単独相続であった場合には、一次相続の相続登記を省略することが例外的に認められています。このように、複数回発生した所有権の移転を1回で済ませる登記を「中間省略登記」といいます。 中間省略登記には、登録免許税の税額を抑えられる等のメリットがあります。相続登記の申請先は、不動産の所在地を管轄する法務局です。 相続登記について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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数次相続についての相続登記のために必要な書類は、主に以下のようなものです。
【自分で作成する書類】 遺産分割協議書(一次相続のものと二次相続のもの)
【法務局にて取得する書類】
【役所で取得する書類】
数次相続の相続税を申告するときには、主に以下のような点に注意する必要があります。
これらの注意点について、次項より解説します。
相続税を納税する義務のある者が、納税前に亡くなってしまった場合、納税義務者の相続人は納税義務を引き継ぎます。 そのため、二次相続の相続人は、一次相続の相続人の納税義務を果たさなければなりません。
数次相続が発生した場合、一次相続についての相続税の申告期限は、一次相続を起点とするのではなく、二次相続を起点として決まります。そのため、自己のために二次相続が発生したことを知ってから10ヶ月以内に申告して納税します。 ただし、一次相続の相続人が、二次相続の相続人でもあるケースについては、その相続人本人の一次相続に関する相続税の申告期限は一次相続を起点として決まります。 申告期限が延長されるのは死亡した相続人の申告期限のみであり、他の相続人の申告期限は延長されないので注意が必要です。
相続税の基礎控除は、相続が発生したときの法定相続人の数によって計算されます。そのため、数次相続が発生したとしても、基礎控除が増額されることはありません。 これに対して、代襲相続では、相続人になる予定であった者が、相続の発生したときには亡くなっており、その相続人の代わりとなる相続人がいます。このため、代襲相続が発生すると、基礎控除が当初の予定よりも増額される可能性はあります。 相続税の計算方法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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数次相続における二次相続では、相次相続控除を受けられる可能性が高いです。 相次相続とは、最初の相続から10年以内に次の相続が発生することで、相次相続控除によって税負担を軽減することができます。 相次相続控除を受けられる要件は、以下のとおりです。
数次相続であっても、一次相続や二次相続について、相続税額を抑える制度の利用が可能です。配偶者の税額控除や小規模宅地等の特例を適用すれば、税負担が軽くなります。 ただし、一次相続の税額を抑えるために、相続財産の大半を配偶者に相続させると、二次相続の相続税が高額になってしまうケース等もあります。税負担の総額が増えないようにするためには、専門知識が欠かせません。 相続税について気になる方は、専門家に相談することをおすすめします。
数次相続は、一般的な相続よりも人間関係や手続きが複雑です。二次相続で関係の薄い者が加わると、話し合いがスムーズに進まなくなるおそれがあります。また、関係者が増えることにより、居場所の分からない相続人がいたり、集めなければならない書類が増えてしまったりする等、手続きの負担が重くなります。 数次相続が発生した場合には、弁護士にご相談ください。弁護士であれば、話し合いや相続人の探し方、手続きの進め方等についてアドバイスできます。 また、相続人に、重い病気を患ってしまった方がいらっしゃる場合等では、数次相続を発生させないためにも、手続きを早く終わらせる必要があります。そのようなケースについても、なるべく早く弁護士にご相談ください。