公正証書遺言にした方がいいケース
以下の例のように、特定の人物に確実に財産を残したい場合や、相続においてトラブルが生じるおそれがある場合には、公正証書遺言を作成することをおすすめします。
- ・子がおらず、配偶者に財産の全てを残したい
- ・介護をしてくれた相続権の無い長男の嫁に財産を残したい
- ・内縁の妻に財産を残したい
- ・病気や高齢等で自筆できないが、遺言を残したい
- ・遺言を自宅で管理した場合、紛失のおそれがある
- ・第三者による遺言の偽造・変造のおそれがある
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証役場にて公証人に作成してもらう遺言のことです。裁判官や検察官等の法律実務経験を持つ、法律の専門家である公証人が内容をチェックしていることから、自筆証書遺言に比べて方式不備等で遺言が無効になる心配がなく、法的に有効な遺言を残すことができる方法といえます。それゆえ、相続人間で遺言内容についてトラブルが生じにくいともいえます。
公正証書遺言にはどんな効力があるか
公証人が厳格な方式に則って作成した公正証書遺言は、法的に有効な遺言であるという証明力が高く、原則として、記載された内容に沿って遺言を執行することができます。自筆証書遺言に比べて証拠力も高く※、相続人間でトラブルが生じて遺産分割調停や審判になったとしても、遺言者の意思に則った遺言の執行ができる可能性が高いことに加え、早期の紛争解決も期待できます。 ただし、遺言内容のうち遺留分を侵害している部分については無効となるおそれがあります。遺留分権利者は、遺留分侵害額請求をすることで遺留分を取得することができるからです。したがって、あらかじめ遺留分を考慮した配分で遺言書を作成する必要があります。 ※2020年7月10日より自筆証書遺言も法務局で保管することが可能になるため、これによって自筆証書遺言の有用性も向上することが考えられます。 遺言書の具体的な効力については、以下のページにて詳しく解説していますので、こちらも併せてご覧ください。
遺言書の効力について公正証書遺言が無効になるケース
遺言作成時に、遺言者が認知症や精神障害であり遺言能力がなかった、遺言者の真意ではない遺言内容だった等と判断された場合には、公正証書遺言は無効になります。また、手続上の要件不備が判明した場合にも、当然に無効になります。
遺留分に配慮した遺言の作成は弁護士が行います。トラブルが起こる前にぜひご相談ください
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成することから強い法的効力を持つ遺言ではありますが、厳格な要件に従って作成しなければならないうえに、相続人の遺留分も考慮した遺言内容にしなければなりません。遺留分は、遺留分権利者に最低限保障されている財産ですから、それを侵害している場合には相続人間でトラブルが生じかねず、法的に有効な遺言であっても、内容に沿った遺言の執行ができないおそれがあります。 弁護士に依頼することで、それらを踏まえた遺言の作成ができます。遺言の作成についてお悩みの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
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公正証書遺言作成に必要な書類
公正証書遺言の作成にあたり、以下のような必要書類を準備しなければなりません。公証役場により必要書類の種類が異なることもあるため、事前に確認しておくことで、より円滑に手続を進めることができます。
遺言者本人の確認書類
- ・遺言者本人の印鑑登録証明書(または運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード等の写真付証明書)
- ・遺言者本人の実印
相続人・受遺者の確認書類
- ・遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本
- ・受遺者の住民票(法人の場合は法人の登記簿謄本)
遺産に不動産が含まれる場合
- ・不動産の登記簿謄本
- ・固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書
遺産に預貯金や有価証券等が含まれる場合
- ・預貯金通帳や有価証券等のコピー
証人の確認書類
- ・住民票(氏名・住所・生年月日)
- ・職業がわかる資料
他
必要書類をすべて準備するのは大変!弁護士が面倒な書類準備をサポートします
上記のように、公正証書遺言を作成するためには、多種の書類を準備しなければなりません。しかし、書類の収集には手間や時間がかかるうえに、それぞれの書類をどこでどのように取得すれば良いのか、わからない方も多いかと思います。 弁護士に依頼することで、必要書類の準備に関するサポートが受けられるため、安心して手続を進めることができます。
公正証書遺言作成には証人(立会人)が必須です。証人の資格、費用、必要書類について
公正証書遺言の作成には、2人以上の証人の立ち会いが必要となります。証人とは、適正な手続を経て作成された遺言であることを証明する人のことです。遺言者の遺言能力の有無や、遺言者本人が自由な意思による遺言を公証人に口授し、公証人がその遺言内容を正確に文書に起こしているかどうかを確認する役割を担います。 証人になるには要件があり、遺言により利害関係が生じる者は証人になることができません。具体的には以下のような欠格事由にあたる場合をいいます。
欠格事由
- 未成年者
- 相続人および受遺者、その配偶者や直系血族
- 公証人の配偶者および四親等内の親族
- 公証人の書記および雇い人
また、証人の氏名・住所・生年月日・職業がわかる資料の準備や、公証人1人につき日当1万円程度の支払いが必要であることにも留意しておきましょう。
公正証書遺言作成の証人(立会人)に適任者がいない場合
証人には秘密保持義務があるとはいえ、遺言内容を知られることになります。そのため、証人の選任は、遺言により利害関係が生じない人であることに加え、信頼できる人であることが望ましいといえます。 どうしても適任者が見つからない場合には、弁護士に相談することで、証人となる人を紹介してもらうこともできます。
証人(立会人)のほか、遺言執行者をあらかじめ指定しておくのがおすすめです
遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後に遺言内容を実行する人のことです。遺言執行者が遺言で指定されていない場合、家庭裁判所に選任された人が就任しますが、時間や手間がかかります。円滑に相続手続を進めるためにも、遺言執行者を遺言であらかじめ指定しておくことをおすすめします。 証人の場合と異なり、相続人や受遺者等の利害関係人も遺言執行者になることができます。しかし、その場合、遺言内容によってはトラブルが生じかねません。 遺言執行者には、弁護士を選任することも可能です。利害関係がなく、法律の専門家である弁護士であれば、安心して相続手続を任せることができます。
公正証書遺言~作り方の流れ
- ① 遺言内容を整理して原案を作成し、証人を2人以上選任する
- ② 必要書類を準備する
- ③ 原案をもとに公証人と遺言内容の打ち合わせをする
- ④ 遺言者、公証人、証人で公証役場へ行く日程を調整する
- ⑤ 当日、遺言者、証人で公証役場へ出向く
- ⑥ 遺言者が、公証人に遺言内容を口授する
- ⑦ 公証人が、遺言者の口述内容を筆記する
- ⑧ 筆記した遺言内容に間違いがないかどうか、公証人の読み聞かせや書面の閲覧等にて確認する
- ⑨ 間違いがなければ、遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名・押印する→公正証書遺言の完成
- ⑩ 公証人費用を支払う
公正証書遺言はどこに保管されるか
公正証書遺言の原本は、公正証書として公証役場で保管され、正本、謄本は、遺言者に交付されます。
公正証書遺言の作成が得意な弁護士が、「揉めない相続」へ導きます。ぜひ、ご依頼ください
重要なポイントをきちんと押さえて遺言を作成しておくことで、不要なトラブルを防ぐことができます。「揉めない相続」のために、公正証書遺言に詳しい弁護士が尽力させていただきますので、ぜひ、ご依頼ください。
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公正証書遺言作成にかかる弁護士費用について
弁護士法人ALGでは、公正証書遺言の作成にあたり、以下の表のとおり弁護士費用をご負担いただくこととなっております。また、別途、公証人手数料、諸経費等(謄本発行手数料、証人の日当等)が発生いたしますので、ご留意ください。
遺言関連諸費用
遺言書作成(公正証書) | |
---|---|
手数料 | 20万円~ |
※別途公証役場の費用、実費及び出張日当が必要
遺言執行費用 | ||
---|---|---|
着手金 | 20万円~(弊所で遺言を作成している場合は発生しない) | |
成功報酬 | 相続財産 300万円以下 | 30万円 |
相続財産 300万円以上 | 24万円+相続財産の2% | |
追加手数料 | 不動産登記 | 1件あたり10万円(別途登録免許税等の実費が必要) |
公正証書遺言のメリット、デメリット
公正証書遺言のメリット
-
・紛失、偽造、変造のおそれがない
原本が公証役場にて管理されているため、紛失、偽造、変造のおそれがありません。
-
・検認手続が不要
作成においては、公証人が要件を押さえて筆記し、証人も立ち会うことから、遺言の効力については信頼性が高いとされ、家庭裁判所による検認手続を不要としています。
-
・自筆できない方でも作成できる
遺言内容を筆記するのは公証人であるため、病気や高齢等により自筆できない方でも遺言を残すことができます。また、公証役場に出向くことができない場合は、公証人に出張を依頼することも可能です。
公正証書遺言のデメリット
-
・作成手続に時間と手間がかかる
必要書類の収集、公証人との事前打ち合わせ、日程調整、公証役場へ出向く等、作成手続には時間と手間がかかります。
-
・費用が発生する
公証人手数料や証人への日当等さまざまな費用が発生します。特に公証人手数料は、相続や遺贈を受ける人ごとに、分配される遺産の価額に応じて発生するため、相続人や受遺者が多い場合にはその分費用が高額になります。
-
・証人が必要
適任者を2人以上探さなければなりません。また、証人には遺言内容を知られることになるため、秘密性において完全とはいえません。
公正証書遺言を作成した後に閲覧はできる?
公正証書遺言の作成後、遺言者が亡くなるまでの間は、遺言者本人およびその代理人のみが閲覧することができます。ただし、相続人等利害関係者が、遺言者本人から任意で遺言や遺言内容の存在を知らされている場合はその限りではありません。 公正証書遺言が公証役場で保管される期間は、原則として20年間とされていますが、遺言者の存命中に20年が経過することも十分考えられるため、その場合には、少なくとも遺言者が亡くなるまでは継続して保管されることになっています。
相続人等利害関係人が検索、閲覧する方法は?
利害関係人が公証役場に対して遺言の検索、閲覧を請求できるのは、遺言者が亡くなった後になります。 1989年1月1日以降、公正証書遺言は原本のほかに原本をデータ化したものも公証役場で保管しており、どの公証役場からでも「遺言検索システム」を利用した検索ができるようになっています。ただし、検索できるのは遺言の有無に係る情報に限られており、遺言内容まで閲覧することはできません。遺言内容を閲覧するためには、原本が保管されている公証役場へ出向く必要があります。
検索、閲覧の手続に必要な書類
- 遺言者の死亡が確認できる戸籍謄本または除籍謄本
- 検索、閲覧を請求する利害関係人の戸籍謄本
- 上記利害関係人の印鑑証明書等の身分証明書と印鑑※代理人が請求する場合
- 委任状
- 代理人の印鑑証明書等の身分証明書
公正証書遺言に関するQ&A
公正証書遺言に記載した預貯金、財産は使ってもいいか?
公正証書遺言の作成後でも、遺言者は、遺言に記載した預貯金を使うことも、その他の財産を自由に処分することもできます。 例えば、遺言に記載した不動産を売却したとします。この場合、遺言のうち不動産に関する部分のみ撤回したものとみなされ、不動産の売却による利益が充当されることはありません。 なお、不動産以外の財産に関する部分は有効なままであるため、部分的な撤回により遺留分を侵害する場合や、不動産に替わり別の財産を相続させる等内容を変更する場合を除き、改めて遺言を書き直す必要はありません。
喋れない者や、耳が聞こえない者はどうやって遺言書を作りますか?(手話通訳方式、筆談方式)
公正証書遺言の作成手続において、言語障害や聴覚障害等により、遺言内容の「口授」、「口述」、公証人による筆記した遺言内容の「読み聞かせ」に対応できない方であっても、以下の方法により公正証書遺言を作成することが可能です。
- ・遺言内容を「口授」、「口述」する代わりに、「通訳人の通訳(手話通訳方式)」、または「自書(筆談方式)」により公証人に申述する
- ・遺言内容の「読み聞かせ」の代わりに、「通訳人の通訳(手話通訳方式)」により遺言内容を確認する
一度作成した公正証書遺言は、書き換えることができないのですか?
公正証書遺言は、いつでも、何度でも、撤回や修正 をすることが可能です。 遺言が「遺言者の最期の意思表示」であることからすれば、遺言の作成後に遺言者の意思が変わった場合には、書き換える必要があるでしょう。 ただし、撤回や修正には作成手続時と同様に決まった方式がありますので注意が必要です。
交付された公正証書遺言の正本を紛失した場合は、どうすればいいのですか?
公正証書遺言の「正本」を紛失した場合には、公証役場に再発行の請求をすることで「謄本」を取得することが可能です。
証人と立会人の違いと責任について
「証人」と「立会人」とでは、公正証書遺言の作成手続に立ち会う人、ということについては同じではありますが、その役割が異なります。 「証人」は、遺言者の遺言内容を把握して、遺言内容が遺言者の意思によるものである、つまり遺言内容が真実であることを証明する役割があります。一方で「立会人」は、適正な手続を経て作成され遺言が成立したという事実について証明する役割のみを担っています。したがって、遺言内容が真実であることを証明する義務を負わず、遺言内容を把握していないという点で「証人」と異なります。
公正証書遺言の作成を弁護士に依頼するメリット
公正証書遺言の作成を専門家に依頼することで、相続人や相続財産の調査、必要書類の収集、公証人との打ち合わせ等、煩雑な作成手続を代行してもらえるうえに、遺言内容を知ることとなる証人の確保の依頼ができ、遺言執行者になってもらうこともできる等、さまざまなメリットがあります。 司法書士、行政書士等は書類作成のプロであるため、法的に有効な遺言の作成に尽力してくれます。しかし、弁護士は法律のプロであるため、遺言の作成のみならず、相続全般のトラブルに対応できるので、最も安心して任せられるといえるでしょう。
任意後見契約の検討もおすすめします~遺言と併せて任意後見契約を結ばれる方が増えています
将来、認知症や精神障害等により判断能力が低下した場合に、本人に代わって財産管理や介護等生活面の支援をしてくれる人(任意後見人)を、本人に判断能力があるうちに選任し、その代理権の範囲について定めておく契約を「任意後見契約」といいます。 任意後見人には、破産者、本人と訴訟をした者およびその配偶者・直系血族、不正な行為、著しい不行跡その他任務に適しない事由がある者を除く成人であれば、親族や友人等、誰でも選任することができます。公正証書による契約の締結のみを有効としていることから、公正証書遺言の作成をする際に、併せて「任意後見契約」を締結される方が増えています。 任意後見人は、家庭裁判所が選任した任意後見監督人のもと職務にあたることになりますが、それでもトラブルが生じるおそれはあります。確実に、安全に、財産管理や生活面の支援を受けるためには、任意後見人に弁護士を選任することをご検討ください。
公正証書遺言の文案作成~各手続は弁護士にすべてお任せください
以上のことから、公正証書遺言の作成には煩雑な手続を経る必要がありますが、その分、遺言者の意思に沿って遺言を執行できる可能性が高いということがおわかりいただけたかと思います。法的に有効であり、起こり得るトラブルを回避できるような遺言の作成をするためには、多くの実務を手がけてきた、相続に詳しい弁護士の助言が必要です。公正証書遺言の作成手続から、相続に係るさまざまなトラブルについてサポートすることが可能ですので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。