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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
相続が発生したら、一般的には相続人全員による「遺産分割協議」で相続財産の分け方について話し合います。 遺産分割協議を行うためには、話し合う前にすべての“相続人となる人”と“相続の対象となる財産”を調査して把握しておく必要があります。調査に漏れがあると、協議をやり直さなければならないリスクが生じるため、慎重に調査しなければなりません。 この記事では、「相続財産調査」について、調査が必要な理由や期限、対象となる財産、調査方法、かかる時間、自分で行う場合のポイント等について解説します。
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相続財産の調査とは、被相続人が遺した相続財産をすべて調べて、その内容と財産額を確定させることです。 調査では、「どのような財産が」「どこに」「どれだけ」あるのかを調べます。そして、プラスの財産とマイナスの財産を明らかにし、各財産の金額を計算します。 相続財産調査では、以下の2点を行うことになります。
相続が発生したら、相続財産を漏れなく把握するためにも、徹底的に相続財産調査を行う必要があります。なぜなら、次のような3つの理由があるからです。
遺産分割協議とは、相続人全員によって行われる、相続財産の分け方を決めるための話し合いです。遺産分割協議を行うためには、どのような財産が、どれだけあるかを確定しておかなければなりません。 また、相続財産調査を綿密に行えば、相続人による財産の使い込みや隠匿に気づける可能性があります。遺産分割後に新たな財産が見つかると、協議をやり直す必要が生じるおそれがあるため、漏れなく調査する必要があります。
相続放棄とは、相続人としての立場を放棄して、相続財産を一切相続しないようにするための手続きです。 相続をすると、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も引き継がなければならないため、相続財産の内訳によっては、相続することで大きな損失を受ける可能性があります。 相続する場合と相続放棄をする場合を比べてどちらが得になるかは、相続財産の状況によって異なるので、相続するかどうかを判断するためにも相続財産の調査は重要です。 相続放棄について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続財産の金額が基礎控除額を超えている場合には、相続税を納める必要があります。基礎控除額は、以下のような式によって計算します。
基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続財産の全容を把握していなければ、相続税を正確に計算することはできません。 相続税の申告を怠ると「無申告加算税」が、納税しないと「延滞税」がかかってしまいます。また、本来よりも少なく申告すると「過少申告加算税」がかかってしまうリスクがあるため、正確な金額を申告するために相続財産を調査しなければなりません。
相続財産調査には、期限が設けられていません。しかし、調査は、基本的に3ヶ月以内に終わらせる必要があります。 なぜなら、「相続放棄」をする場合には、自己のために相続が開始されたことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申し立てなければならないからです。 相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も相続しません。相続財産調査によって高額な借金等が判明しても、期限までに相続放棄の手続きを行えば、借金等を肩代わりせずに済みます。 相続財産調査が間に合わないケースでは、期限内に熟慮期間の伸長の申立てを行いましょう。 なお、相続の方法について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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被相続人の財産には、相続財産である「プラスの財産」と「マイナスの財産」が含まれます。また、プラスの財産にもマイナスの財産にも含まれない、「相続財産でないもの」もあります。 そこで、プラスの財産とマイナスの財産、相続財産でないものについて、代表的なものを表にまとめたのでご確認ください。 調査に漏れがあると、将来的に大きなトラブルに発展するリスクがあります。相続財産に該当するものは徹底的に調査して、どのような財産がどれだけあるのかをしっかりと把握しましょう。
プラスの財産 | マイナスの財産 | 相続財産でないもの |
---|---|---|
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調査するべき主な財産として、主に以下のようなものが挙げられます。
これらの財産について、次項より種類別に解説します。
相続財産である預貯金の調査は、被相続人の家の中などを探して、キャッシュカードや通帳、金融機関から送られた郵便物、カレンダーやタオルなどのノベルティ等から利用していた金融機関を特定する方法で行います。 インターネットバンキングを利用していた場合等のために、パソコンやスマートフォン等の情報も確認します。 被相続人の預貯金口座がある金融機関がわかったら、被相続人が亡くなった日付で「残高証明書」を発行してもらいます。残高証明書の発行手続きは、金融機関に直接出向いて窓口で請求します。 併せて「取引明細書」を発行してもらうと、預貯金の動きがわかり借金の存在が判明する可能性があるため、取得しておくことをおすすめします。 なお、残高証明書を請求すると、口座が凍結されるため注意しましょう。 銀行預金の相続手続きの流れについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続財産である不動産の調査は、売買契約書や登記済権利証、登記識別情報などを確認する方法で行います。 また、固定資産税納税通知書があれば、不動産を特定することも可能です。納税通知書は毎年4~6月頃に届きます。 ただし、固定資産税のかからない不動産については通知書が届きません。 納税通知書などが見つからない場合などには、市区町村役場で「名寄帳(固定資産課税台帳)」を発行してもらいましょう。 名寄帳とは、特定の人物が所有している不動産をまとめて一覧にしたものです。登記されていない不動産や非課税の不動産、被相続人を含めた複数の人が共有している不動産もすべて記載されるため、被相続人の所有していた不動産を幅広く確認できます。 相続財産に含まれる不動産が確認できたら、市区町村役場で固定資産評価証明書を請求します。 固定資産評価証明書とは、土地や建物等の評価額が記載されている書類で、不動産の価値を評価するときの参考になります。 不動産の相続手続きについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続財産である有価証券の調査は、取引報告書や配当金等の支払通知書といった郵便物などを確認する方法で行います。 被相続人がネット証券会社を利用していた場合には、郵便物が届かないケースもあるため、パソコンやスマートフォンの情報も確認しましょう。 有価証券に関する手がかりが見つからなければ、被相続人がどの証券会社に口座を持っているのかを調べるために、「ほふり(証券保管振替機構)」に対して情報開示請求をします。 ほふりとは、証券会社を仲介に挟んで、全国の株式等の情報を一括で管理している組織です。証券会社に口座を作って有価証券を購入する場合、一般的にほふりが売買の記録等を管理するので、加入者の情報の開示を請求すれば、被相続人が所有していた有価証券の情報を得られる可能性があります。 取引していた金融機関を特定することができれば、取引報告書や残高証明書を発行してもらい、有価証券の内容を把握しましょう。
相続財産である動産の中でも高価である場合が多い貴金属や自動車の調査は、それぞれ以下のような方法で行います。
自動車の相続手続きについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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相続財産に含まれている借金の調査は、契約書や請求書、督促状などから借入先を特定する方法で行います。ローンは預貯金から定期的に引き落としがあるため、通帳などを確認しましょう。 借入先が分からない場合や、他に借金がないか確認したい場合には、信用情報機関に情報開示請求を行います。信用情報機関とは、個人のクレジットやローン等に関する情報を収集している機関であり、次のような組織が存在します。
こうした「信用情報機関」に開示請求をすることで、被相続人の借金の情報を入手できる可能性があります。ただし、個人からの借金など、金融機関以外からの借金は把握できないので注意しましょう。 被相続人が連帯保証人になっているおそれもあります。連帯保証について調べるのは難しいケースが多いため、連帯保証人のリスクがあるケースでは、限定承認を検討しましょう。 限定承認や借金が後から発覚した場合の対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
相続財産調査は、専門家に依頼すれば一般的に1~2ヶ月程度で完了します。しかし、相続財産の種類や数が多かったり、評価額が争われたり、手がかりが全く見つからなかったりする場合には、期間が長引く可能性も十分にあります。 ただし、どんなに長引く場合でも、相続放棄や限定承認の申立ての期限である3ヶ月以内には終わらせる必要があるので気をつけましょう。
相続財産調査を自分で行う場合には、以下のポイントを意識しましょう。
これらのポイントについて、次項より解説します。
相続財産調査に取りかかる順番は、以下の順番をおすすめします。
最初に預貯金の取引履歴を確認すれば、他の財産の情報も発見できる可能性があるため、効率よく調査を進められます。定期的な引き落としがあれば、早期に解約手続きをできる可能性もあります。 借金については、相続放棄をする場合には3ヶ月以内という期限があるため、早期に確認した方が良いでしょう。 そして、不動産の評価額を確認するためには時間がかかるので、早期に取りかかることが望ましいでしょう。不動産に抵当権が設定されていれば、借金などがあることを把握できます。 財産が多いケースや遠方に存在するケース等では、熟慮期間の伸長の申立てについても、なるべく早く準備しましょう。
相続財産の調査が完了したら、「財産目録」を作成しましょう。 財産目録とは、相続財産をわかりやすく一覧にまとめたものです。特に書式は決まっていないので、自由に作成することができますが、一般的に、不動産・預貯金・有価証券・借金などの財産の種類別に項目を設けて表のようにするケースが多いです。 財産目録を作っておくと、分割の対象となる相続財産が一目でわかるので遺産分割協議がスムーズに進みます。また、後々の相続税の申告の際にも必要になるため、相続財産調査が終わった段階で作成しておくと良いでしょう。 下記の記事では、財産目録の作成方法やひな型をご紹介しています。ぜひご覧ください。
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専門家に依頼せず、自分で財産調査を行うことも可能です。 しかし、相続財産調査には専門知識が必要であり、手間や時間もかかるため、相続問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。相続財産調査を依頼できる専門家(弁護士・司法書士・行政書士)のうち、業務の幅が一番広いのは弁護士だからです。 下の表は、相続手続のなかで各専門家が業務としてできる手続きをまとめたものです。〇は専門家が単独で問題なく代行できる手続きを、△は一部のみ代行できる手続きを、×は代行できない手続きを指しています。
弁護士 | 司法書士 | 行政書士 | |
---|---|---|---|
相続財産調査 | 〇 | 〇 | 〇 |
相続人調査(戸籍収集) | 〇 | 〇 | 〇 |
不動産の名義変更 | 〇 | 〇 | × |
相続放棄 | 〇 | △ | △ |
遺留分侵害額請求 | 〇 | △ | △ |
遺産分割協議書作成 | 〇 | △ | △ |
遺産分割によるトラブル対応 | 〇 | × | × |
この表からわかるように、弁護士はすべての相続手続を代行できます。 特に、相続人間で話し合いがまとまらなかったときに、司法書士や行政書士では対応できません。弁護士であれば、トラブルに発展しても対応できます。 相続人が以前から不仲である場合や、お金に困っている相続人が存在する場合などには、財産調査の段階から弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士 | 司法書士 | 行政書士 | |
---|---|---|---|
費用相場 | 10万~30万円程度 | 10万~30万円程度 | 数万円~ |
表をみるとわかりますが、弁護士費用は高額になる傾向にあります。 しかし、弁護士は相続に関する手続全般のサポートができるため、司法書士や行政書士に都度手続きを依頼するよりも安くなる可能性があり、手厚いサポートを受けることができます。 相続財産は自分で調査することも可能であり、実費として数千円~数万円程度がかかるだけで済みますが、地道な作業になるため労力が大きく、見落としも発生しやすいため、なるべく専門家に任せた方が良いでしょう。 弁護士法人ALGにご依頼いただく際には、下記のリンク先でご説明するとおりの費用がかかります。相続問題にお悩みの方は、ぜひ弁護士法人ALGへの依頼をご検討ください。
相続財産調査の費用相続人が被相続人の口座の存在に気づかず、10年(銀行の預金については5年)以上放置してしまうと、預貯金債権(金融機関に預けたお金)が消滅し、預貯金を引き出せなくなる可能性があります。 なぜなら、金融機関に預けたお金は、10年(銀行の預金については5年)経つと時効にかかって消えてしまう場合があるからです。 もっとも、実際に金融機関が預貯金の引き出しの請求を拒否することはあまりないので、5年または10年以上経っても引き出すことができるケースが多いです。 とはいえ、口座を放置した期間が長いと引き出しの手続きに日数がかかることもあるため、相続財産調査で見落とさないよう、徹底的に調べておくことが大切です。
相続財産調査の代理を依頼する場合には、基本的に委任状が必要です。 委任状は、「誰が」「誰に」「どんな行為を」委任するのかを明確にしたうえで、代理を依頼する人が署名・押印をして作成します。 ただし、法務局で登記簿謄本を取得することは誰でもできるので、登記簿謄本の取得を依頼するだけであれば委任状は不要です。
生命保険金は、受取人の設定などの契約状況によっては相続財産に含まれません。しかし、そもそも相続財産に含まれるのかといった確認をするためにも、相続財産調査の対象とするべきでしょう。 生命保険金の有無や金額の調査は、保険証券を探したり、預貯金口座の取引履歴を確認したりするなどして調べるのが一般的です。 どのような場合に生命保険金が相続財産となるのか、また請求するためにはどういった手続きが必要なのかといった詳しい説明は、下記の記事をご覧ください。
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相続財産調査は徹底的に行う必要がありますが、見落としのないようにご自身だけで調査するとなると大変な労力がかかるので、弁護士に依頼して負担を軽減されてみることをおすすめします。 弁護士は相続に関する手続きを熟知していますから、戸籍謄本や住民票の取り寄せ、金融機関への預金残高の照会、証券会社などへの照会といった相続財産の調査をスムーズに行うことができ、調査にかかる時間を短縮することが可能です。 さらに、調査後の財産目録の作成はもちろん、相続放棄や限定承認の手続き、遺産分割協議でのトラブルの対応を任せることもできます。 限られた時間を有効に利用し、円滑・確実に手続きを進めるためにも、弁護士に相続財産調査を依頼することを検討されてみてはいかがでしょうか。まずはお気軽にご相談ください。